ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

”船友”とスペイン料理屋へ

170921 53年前の航海でいっしょだった”船友”、ここ数年で何人かが旅立ってしまった。残ったメンバーで時折会っているが、今回は長老格のY氏からお誘いがあって、銀座のスペイン料理屋に4人が集った。

食前酒のCAVAで乾杯、また食後にはイタリアのグラッパに当たるオルーホ (Orujo, スペイン北部で、ワインの搾りかすを蒸留して作る)を賞味、製法が似たようなものだから、当然だが、グラッパ同様の芳醇な味わいを楽しんだ。

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これはガリシア州が産地

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見るからに美味しそうに見えるおしゃれなグラス!

食後、サプライズが待っていた。なんとY氏の描いたエッチングが3枚用意されていた。事前にレストラン宛に宅配していたようだ。

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私がいただいたのは、「ラオス号」マルセイユ到着日に当たる1964.3.27から、27/100。

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さっそく自宅の玄関の一隅にかけさせてもらった。ちなみに、Y氏の画名は宇樹夢舟(うき・むしゅう)字面も響もいかにもおしゃれだ。

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兄のグループ展@東京交通会館

170920 兄の所属する美術団体が開催する年2回の美術展に行った。今年はスペースに余裕があるのか、3点も出展。

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1階にあるギャラリー、シルバー・ルームは、小ぢんまりだが、段差がある会場。立体的で面白いが高齢者には、この段差が辛いかも知れない。

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一番奥の壁面に、兄の絵が3点。2点はいつもの飛行機を描いたもの。左端はめずらしく、抽象画。それもジャクソン・ポロック風の、結構おしゃれな色調で、気に入った。

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飛行機が着陸態勢に入って、脚が出始める瞬間を捉えた、面白い図柄だ。こういうメカな画題がお気に入りの様子。

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以前すでに出展している作品だが、飛行機の先端とプロペラの部分にだけ光沢処理を施したと言う。

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いつもは姉も一緒で、この後、いっぱいやるのが恒例だが、今日は珍しく体調不良でお休み。仕方ない、今回に限り男だけで飲むとしよう。会場近くのパブ、ROSE&CROWNで、ハッピータイムのビールとハイボールを飲み、もっぱら飛行機と戦争映画の話に終始。

「あしたは最高のはじまり」

170919 原題:DEMAIN TOUT COMMENCE(明日は何もかもが始まる)仏 117分 脚本・監督:ユーゴ・ジェラン おかしくて、時々ホロリとさせられる作品。

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南仏、カランク(崖)の目立つ地域だから、多分コート・ダジュールよりプロヴァンスと思われるところが舞台。少年時代の主人公、サミュエルが父親から男なら飛んでみろと言われるが、足がすくんで動けない。それを横目に見て去って行く父親。なかなか洒落た伏線の張り方だ。

それから十数年後のサミュエル(オマール・シー)の前に、ある日、見知らぬ女、クリスティン(クレマンス・ポエジー、なんと素敵な名前!)が登場、「これあんたの子供、グロリアよ」と言って、乳幼児を残して立ち去る。慌てて、女を追いかけ、なんとロンドンへ。金もないし、ろくに英語も喋れないし、子供を抱いたまま途方に暮れる。

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そこへ偶然居合わせたゲイのベルキー(アントワーヌ・ベルトラン)⬆︎が、サミュエルに気があったらしく、救いの手を差し伸べ、家も職も提供、男二人で子育て。

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それから8年、すっかりおしゃまな娘に成長。そして、3人の前に突如現れるクリスティン、娘を返して欲しいと。まあ、この辺りはお定まりの図式。すっかりサミュエルに懐いてしまっているグロリアだが、母親も恋しい年頃。

スッタモンダの挙句、親権裁判で、勝ったサミュエルだったが、DNA鑑定でのドンデン。グロリアはクリスティンとニューヨークへ旅立つことに。だが、そこで再びのドンデン返し。まあ、ツッコミどころはいくらでもあるが、いちいちあげても詮ないことだし、得てして映画ってそんなもん。この際、それをあげつらうより、オマール・シーの破天荒で素晴らしい演技を楽しんだ方が得策。

途中、サミュエルとグロリア、二人で病院で診断を受け、医者から余命について重大なことを言われる場面が。てっきりサミュエルのことだと観客を騙していたが、実はグロリアのことだったとは!ちょっと悲しい幕切れだが、それを振り切るように、「グロリアはいつも俺の横にいるんだ。あしたはまた最高の1日のスタート!」(これがタイトルのDEMAIN TOUT COMMENCE)とサミュエルが晴れやかにつぶやくところで、-FIN-

ところで、この監督、ユーゴ・ジェランだが、あら懐かしや、ダニエル・ジェラン(1921-2002)のお孫さんだったとは!!!ダニエル・ジェランの代表作は、フランソワーズ・アルヌールとの共演や、劇中歌われたファドの女王、アマリア・ロドリゲスの「暗いはしけ」でも有名になった「過去を持つ愛情」(1954)

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#64 画像はIMDbから

J.S.バッハ ミサ曲 ロ短調@東京オペラシティコンサートホール

170918 地元の合唱団仲間が出演するので、久しぶりにロ短調を聞きに行った。

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初めてこの曲を聴いたのは11年前のベルリンの、例のカラヤンホール、旅の疲れから、うつらうつらしながら聴いていた記憶がある。したがって、どんな曲だったか、ほとんど覚えていない。その意味で、聴くのは今回が初めてと言うに近い。

会場で配布されたプログラムの解説によれば、この曲はバッハの作品のみならず、あらゆる音楽作品(大きくでたなぁ)の”最高峰”という肩書きで呼ばれることが多いとか。思わずホンマかいなとツッコミを入れたくなる。まあ、バッハの真髄って、なかなか素人には分かりにくいし、最晩年ぐらいにやっと少し分かり始めるのだろう。

ロ短調と呼ばれる割に実際にはロ短調の部分はわずかだそうで、バッハの子供達は「大ミサ曲」とか呼んでいたらしい。時代が下って、1800年頃のドイツの音楽学者がロ短調ミサと呼び、それが定着したという風に解説されている。

たっぷり2時間の宗教曲となれば、眠気はどこかで生じる覚悟はしていたが、第1部MISSA⦅KYRIE, GLORIA⦆(演奏時間、約1時間)の7曲目あたり、やや単調な部分で、ウトウト。第1部の最後、CUM SANCTO SPIRITU IN GLORIA DEI PATRISは、快活なリズムで生き生きとした締めくくり。

今日の演奏は、指揮者、管弦楽団ソリスト、それに合唱団とも、一流どころで、見渡したところ、2、3階席までほぼ満杯に近い状態で、人気のほどが知れる。尤も、合唱団員が150人を超えており、その家族や友人・知人だけでも、相当な数に上るから、満員になるのは当然といえば当然かな。(11月に予定されている我が合唱団の定期演奏会にもこれだけ入ってくれればいいのだが・・・)

休憩の後は、第2部 SYMBOLUM NICENUM (CREDO)、第3部 SANCTUS、第4部 OSANNA, BENEDICTUS, AGNUS DEI, DONA NOBIS PACEM(後半もほぼ1時間ほどの演奏時間)を一挙に演奏。演奏する側も、聞く側も会場内が一体になったような盛り上がりを、たっぷり楽しめた。

ソリストたちの演唱がそれほど多くはないのだが、最もうっとり聴いたのは、第2部でのソプラノとアルトの比較的長い二重唱。ソプラノとアルトの美声が絡み合いながら、素晴らしいハーモニーを生み出していく効果をまざまざと体験。

半田美和子は以前から知っていて、その実力のほどは折り紙つき、一方アルトの谷地畝晶子は、今日初めて聴いたが、重量感のある朗々たる響きは大したもの。

エストロ秋山和慶と東響は、本拠地の一つが近くのミューザ川崎なので、これまで結構頻繁に聞かせてもらっている。今日のコンマスはロシア人のグレブ・ニキティン(このかた、我々の定期演奏会に伴奏者の一人として弾いてくれるという、今でも信じがたい話)、他にも顔なじみの奏者があちこちにいて、なんとなく落ち着く。

東京アカデミー合唱団は、団員数に厚みがあり、しかも各パートにバランスよく人数が揃っているので、地域の弱小合唱団から見れば、本当に羨ましい。よほどハードな練習を繰り返していたそうで、大変立派な演奏だった。

出番はあまりなかったが、テノール鈴木 准は、典型的なテノーレ・リリコで、お顔もそうだが、普段話す声も誠に爽やかな印象を受ける。魔笛のタミーノや、愛妙のネモリーノ、ドン・ジョヴァンニのドン・オッターヴィオなどはきっとぴったりだろう。

楽しみにしていた大御所、多田羅迪夫は体調不良で、急遽、合唱の指導にあたっていた成田 眞が代役に立った。このかた、押し出しも堂々としているが、声もなかなかのもの。問題なく代役を立派に務められたと思う。

この曲を聴くのは11年ぶりと書いたが、その時(2006.10)の記事があったので、当時のブログから以下抜粋。ほとんどウトウトしていたからか、肝心の演奏のことにはまったく触れていないが。

カラヤン・サーカス」と呼ばれたベルリンフィルの本拠地フィルハーモニー劇場でバッハのロ短調ミサ曲が聴けたのも嬉しかった。ここではダフ屋ではないが、中年男性が近づいてきて、自分が行けなくなったからと、額面価格20ユーロで譲りたいとのこと。即座に20ユーロを出したのは言うまでもない。確かに、このホール、川崎のミューザを更に大きくしたようなホールでステージの後ろ側の座席数の多いこと。演奏は勿論ベルリン・フィル、指揮はサー・ロジャー・ノリントン、Susan Gritton(S), David Danierls(Counter tenor), John Mark Ainsley(T), Detlef Roth(Br)

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ミューザ川崎はこれの小型版と言える。ステージの周囲360°全方位に座席があり、サーカスと呼ばれる所以だ。後ろ側は、やはりヴォーカルになるとまともには聴こえない。今回はまさにこのケースで、ちょっと残念。

#59 文中敬称略

IL CONCERTINO

170917 さて、本日最後のイベントは、浜離宮朝日ホールで開催中の通称イルコン、IL CONCENTRINO(コンチェルトに縮小語尾を付したイタリア語、まあ、ミニコンサート)。川越から築地までの結構な移動。築地についても、まだしつこく降っている。

ちょうど、第4部が始まってしばらくしての入館。お昼から夜の8時45分までの大コンサート!IL CONCERTINOどころか、IL CONCERTONE(拡大語尾)の方がふさわしいぐらい。

何しろ、オペラ界でもきってのおしどり夫婦(ほんとのオシドリはそれほど仲良くないとも最近言われ始めているらしいが)である羽山晃生・弘子夫妻の教え子たちが年に一回、ここに集って、一年の成果をお披露目するというもの。

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ちょうど10番目の櫻井 航の仮面舞踏会の「お前こそ魂を汚すもの」という有名なアリアから聴き始めた。社会人、音大生、卒業したての新人など、様々らしい歌手がこのコーナーに登場、そして最後は次第にプロ級が出始め、最後は超大物で締めくくり。いやぁ〜長丁場、お疲れさんでした!

重唱、8番目に登場された羽山弘子だが、昨年の「人道の桜」(杉原千畝を扱った新作オペラ)以来、久々に聴いたが、依然、豊かで瑞々しい発声に聞き惚れた。そのあとに、羽山晃生が登場。つい最近、「コウモリ」のアイゼンシュタイン役で聴いたばかりだが、その時は、テノールバリトンの中間的な印象を受けた(この役はどちらがやってもいいことになっているから、ま、当然)が、今回ははっきりとバリトンの声になっていて、ドミンゴ並みに、正式に転向されたんだという、やや感傷的な気分に。

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羽山晃生前坂美希、左の後ろ姿は伴奏する羽山弘子アイーダを歌い終わるや否や、伴奏を務めるという離れ技!お二人ともピアノの腕前には定評がある。この日のために、企画・構成、そして本番での伴奏・歌唱の全てをこなしてきた訳で、そのものすごいパワーには感心、というか感嘆あるのみ。

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大トリの梅津 碧だが、噂に違わず、こりゃまたすっごいのが出てきた!YouTubeで「キャンディード」の「きらびやかに着飾って」を聴いているから、驚きはしなかったが、超高音を苦もなく出しちゃうのは、もちろん本人の努力もさることながら天賦のものだろう。あとは海外で演技やら表情やら、声の色とかなんとか、細かいことについて研鑽を積めば、そのまま国際舞台で十分通用するし、そうなって欲しい。

彼女、羽山弘子の舞台を観て、オペラ歌手を目指そうと決めたというから、人の出会いとは、不思議なものだ。

失礼とは思いつつ、終演時間が予想以上に遅れたので、挨拶もせずに帰路を急いだ。

来年は20周年の節目のIL CONCERTINOになるので、すごい企画になるらしい。楽しみだ。

#59 文中敬称略