ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ルーベンス展」@国立西洋美術館

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正直、それほど好きな画家ではないが、午前中から4時間もイイノホールで、気鋭のオペラ歌手18人の選考会を聴いたあと、日暮里サニーホールでの第九合唱、初のマエストロ練習まで時間がありすぎるため、ちょうど中間にある西洋美術館に向かった。

時間調整で行ったようなわけだが、これがなかなかどうして、結構みどころ満載で、すこしばかりルーベンスに対する見解を改めなければならないことになった。

全部で76点の展示のうち、ルーベンスの作品は半分以下の30点。副題に「バロックの誕生」とあるように、彼の回顧展でないのは覚悟の上で見る必要がある。さらに、細かいことを言えば、30点のうち、この西洋美術館所蔵のものが2点、絵画以外の、彫刻や同時代、あるいは後世の、彼に影響を受けた画家の作品も数多く展示されている。

ルーベンスがあまり好きではなかった理由の一つに、先に大作ばかり見たことも、自分の中ではあるのかも知れない。とりわけ有名なのが、ルーブル本館の広い一室を埋め尽くすマリー・ドゥ・メディシスの生涯を描いた全24枚という途方もない作品群であり、巨大な肉の塊のごとき人物描写に辟易したいたよう記憶がある。

だが、今日改めて、ほんの一部であるものの、様々な作品に触れて、特に肖像画に卓抜した技を示したものが多いことに気づいた。そんな中でも、子供を描いた小品の素晴らしいこと!

大作では、工房で仕上げた作品が多く、いわば流れ作業のようにして、大量生産していたこともあまり好きになれなかった理由かも知れない。

今回、彼がイタリア旅行を通じて、少し前のヴェネツィア派のティツィアーノやティントレットに影響を受け、それを逆に後世の画家に影響を与えるという、いわば橋渡しのような役割を担っていたことも紹介されている。

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詳細を見るにはTBSのホームページが参考になる。

バリチューとは、なんぞや?!

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コーラスフレンズといっぱいやることになり、その前に千円コンサートに行くことになった。ミューザが以前からやってる昼はワンコイン、夜は千円というカジュアルなコンサートシリーズで、かつては結構行ったものだ。

今回はタイトルからして、「おや?」というもので、バリチューが何を指すのか、このポスター/チラシを見るまで分からなかった。バリチューはバリ+チューで、バリトンとチューバを指すことが分かるまで多少時間がかかった。

そういえば、昔、通っていた中学校で、自分が発起人になって、ブラバンを立ち上げることとなり、限られた部費で買えたのが中古のトランペット1台と、このバリトンという、朝顔が上を向いている中型の楽器の2個のみ。自分は親にせがんでやはり中古のフルートを買ってもらい、3人で細々とスタートしたのだが、今や当然ながら、大編成の凄いブラバンに成長している。そんな次第で、この楽器には、人知れぬ愛着がある。

今や楽団員の半数以上が女性が占めるのが当たり前の時代だが、このチューバだけは、唯一男性が死守している楽器と言ってもいいだろう。多分、肺活量がかなり必要な上、楽器自体が重すぎて、女性の細腕では抱えられないからだろうと思っている。一方、バリトンは、現在ではユーフォニアムとシャレた呼ばれることが一般的で、図体もチューバより一回り小さいので、女性奏者も少なくない。

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さすがに知っている曲は最後の1曲のみ。アンサンブルの響は確かにパイプオルガンのようでもあり、荘重で、妙なる響が心地よかった。アンコール曲は、⬇︎メンバーの一人の自作曲!それにしても、全員、トークが驚くほどお上手で、聞きにきてくれたファンに対するサービス精神を存分に発揮していた。

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一番下、リーダーの渡辺 功がここをフランチャイズにしている東京交響楽団のメンバーである。当日は、氷雨が降り出すという悪天候もあり、予想通り、はっきり言って館内はがらがらであったが、おそらくそれは計算済みだったろう。でも、このような珍しい企画が格安で楽しめたのは嬉しいことだった。

#74 文中敬称略

 

 

新進ピアニストたちの響宴@アプリコ大ホール

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何が10周年かと言うと、「アプリコお昼のピアノコンサート」というシリーズを始めて今年で10年目ということ。お得なお値段ゆえ、過去なんども聴きに来ている。

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今日の演奏家の中で、まだ一度も聞いたことがなかったのは中村芙悠子尾崎未空の二人で、三浦友里恵大田区出身者ゆえ、なんどもアプリコに登場していて、なんども聞いたことがある。

みなさん、それぞれ輝かしい受領歴もある略歴は素晴らしい。今日も、いずれも素晴らしい演奏で、中でも實川 風中桐 望の演奏は忘れがたい。

中桐が弾いたクライスラーの作品、普段ヴァイオリンで聴く名曲だが、これをラフマニノフがピアノにアレンジし、すこぶる高度なテクニックを加えて、ベースになる例のメロディーは残しながらも、ピアノの名曲に作り変えられている。

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最後にアンコールとして演奏したのが「動物の謝肉祭」のフィナーレ。それも、びっくりの3人連弾を2台のピアノでという、なんともアクロバティックな演奏。演奏そのものにも驚かされたが、演奏スタイルが楽しく、大喝采のうちに終演となった。しかも、本番前のわずか10分程度の練習だけで、こうしたことができると言うのは、全員がやはり並大抵の技量の持ち主ではないのだ。

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サインをもらうために長い列が。

 

#73

 

「マダムのおかしな晩餐会」

181206 MADAME 仏  原案・脚本・監督:アマンダ・ステール

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パリに移住したセレブ夫婦、晩餐会を開くが、土壇場で亭主の連れ子のバカ息子が加わることになったため、13人に。忌み数を避けるため、仕方なくメイドをゲストに仕立て上げて、急場を凌ごうとするが、まあものごとは思い通りにはならない。

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ホストをうまくこなしていくが、果たせるかな、メイドが事前の注意を忘れて大失態。まあ、ゲストたちは楽しんでくれたようだが、メイドがゲストの一人と惹かれあうことになったのがなんとしても気に入らず、一見、メイドに優しく振る舞うように見せて、内心は嫉妬にかられ、恋路の邪魔に奔走、そういう自分がまた気に入らず、イライラの日々。

ラスト近く、18区の Terrasse Hotelの前で偶然会ったくだんのゲストに対して、彼女がどんなことを言い放ったか、その部分だけトラックの陰で見せてないから、想像するしかない。

パリ生まれ、ロサンゼルス育ちの監督、Amanda Sthersは小説家として名を馳せ、日本ではあまり知られていないが、かなり成功している。本作では、原案、脚本、監督までこなしているから、まさに才女。まだ40歳そこそこだから、たいしたもの。今後も映画を撮るのか不明だが、撮るとすれば大いに楽しみだ。

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巨大な鷲鼻を持つ、メイドを演じたロッシ・デ・パルマ、スペイン人だが、二人の子供とフランスで生活している。巨匠、ペドロ・アルモドバルに見出されて映画の世界へ。顔同様、かなり個性的な人物らしい。母国語のほか、英、仏、それにカタルニア語も流暢で、歌手のほか、ファッション・モデルもこなす多芸ぶり。

すっかり上記スペイン女優の陰に隠れるような存在になったが、タイトルロールはマダムのアン(トーニ・コレット)。父親以上の年の差婚で、ずっと没交渉の亭主ボブ(ハーヴィー・カイテル)に飽き足らず、晩餐会のゲストの一人と不倫を楽しもうとするが、大胆すぎたか、逃げられてしまう。(夜のプールの場面はなかなか面白い)

晩餐会に集ういわくありげな人物たちを巧みに描き分け、謎めいたエンディングを用意するあたりはなかなかの手腕であり。舞台はパリだが、会話は9割方が英語というのも、いかにもパリ生まれロサンゼルス育ちのアマンダ・ステールらしい。

#84 画像はIMDbから。

 

「おかえり、ブルゴーニュへ」

181204 仏 113分 CE QUI NOUS LIE(我々を結びつけているもの)邦題は、英語タイトル BACK TO BURGUNDYブルゴーニュに帰る)から取ったのだろうが、人称が逆転している。監督:セドリック・クラピッシュ(「ニューヨークの巴里夫」2013, 「PARIS」2008、「スパニッシュ・アパートメント」2002)

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ブルゴーニュ地方の典型的な中堅ドメーヌ(ワイン生産者)で生まれ育った3人。長男が10年ぶりに我が家へ戻るところから映画は始まる。

病気療養中の父に代わってドメーヌを取り仕切る妹、近くで別のドメーヌ経営者の一人娘と結婚して、そこでワイン生産に従事する弟。さっそく3人が感激の対面を果たす。

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 実は長男のジャン(ピオ・マルマイ)、大好きだった父親とはちょっとした行き違いから疎遠になり、世界のワインを見たいと、故郷を飛び出し南米やオーストラリアへ。旅の途中で知り合った女性と一緒になり、二人の間に生まれた幼い長男と、今ではオーストラリアでワイン作りを始めて5年。しかし、生まれ故郷のブルゴーニュへの郷愁、絶ち難く、また疎遠だった病床の父を見舞おうと帰国したのだった。

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亡くなった母親の葬儀にも顔を出さず、今頃のこのこ帰って来やがってと激しく詰め寄る弟、ジェレミーフランソワ・シヴィル)、口にこそ出さねど妹、ジュリエット(アナ・ジラルド)も同じ感情を抱いている。

ちょうどこのドメーヌでは収穫の時期を迎え、喧嘩している場合でないことは3人とも良く分かっている。いつ摘み取り作業を開始するか、ジュリエットが決めることになっているが、遠慮しつつも、摘み取り時期には一家言持っているジャンが自分の経験から妹に助言し、ジャンの案で開始することに。さっそく摘み取り作業人を急募、手順の説明などはすべてにジュリエットが采配を振るう。

作業人全員による収穫祭のどんちゃん騒ぎも終わり、今後の身の振り方について三人三様の考え方が交錯するものの、ブルゴーニュで生まれ育ったワイン造り手としての誇りを失うことなく、最後は見事なまとまりを見せるのだった。

フランスで、ボルドーと並ぶワイン産地、ブルゴーニュの豊かな自然を背景に、家族愛、兄弟愛が、あたかも芳醇なワインの味わいのごとくまろやかに描かれる佳作。

ワインの製造工程が結構詳細に描かれていて、そこも本作の見どころの一つ。

ジュリエット役のアナ・ジラルド、名前からしててっきり名優アニー・ジラルドの縁戚にあたるかと思ったのだが・・・。人気アイドル歌手、クロード・フランソワを描いた「最後のマイ・ウェイ」2012や「FOUJITA」2015に出演していたが、まったく思い出せない。それほど、印象の薄いタイプ。

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 撮影中のセドリック・クラピッシュ監督。

#83 画像はIMDbおよびALL CINEMA on lineから。