ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「プーシキン美術館展」@東京都美術館

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この美術館、何年か前、ロシア旅行の際に訪問している。だが、実はあまり覚えていないことが判明。ま、よほどの傑作でない限り、そんなもんだろう。さすがに⬆︎クロード・モネのこの絵はよく覚えている。副題が「旅するフランス風景画」となっているように、肝心のロシア絵画は出品されていないのが残念。

全部で65点と多くはないが、すべて油彩画ばかりというのが凄い!

構成;

第1章 近代風景画の源流

第2章 自然への賛美

第3章 大都市パリ風景画

第4章 パリ近郊 ー 身近な自然へのまなざし

第5章 南へ ー 新たな光と風景

第6章 海を渡って/想像の世界

なんだか、無理やりこじつけ感たっぷりの章立てに思えて仕方がない。

代表的な作品を美術館のホームページから

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理想風景の代表的な画家、クロード・ロラン(1600-1682)の「エウロペの略奪」(1655)。中央の白い雄牛がゼウスが化けたもの。

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新古典派、そして奇想画で知られたユベール・ロベール(1733-1808)の「水に囲まれた神殿」(1780年代)モデルになった神殿はナポリから少し南へ下ったところにあるPAESTUM(ペストゥムと発音)にあるギリシャ神殿。実際はもっと完全な姿だが、ロベールは敢えてこれをもっと廃墟にしている。また水に囲まれた姿にしているのも彼の創造。

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レオン=アウギュスタン・レルミット(1844-1925)の「刈り入れをする人」(1892)。ゴッホが影響を受けたとされる画家。

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愚亭の好きな画家の一人、アルベール・マルケ(1875-1947)の「パリのサン・ミシェル橋」。穏やかな色調と単純化された描写が素晴らしい!

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おなじみ、クロード・モネ(1840-1920)の「庭にて、ムーラン・ドゥ・ラ・ギャレットの木陰」(1876)。左端の人物のコスチュームは、同名のタイトルでなんども登場する。

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フランス生まれのイギリス人画家、アルフレッド・シスレー(1839-1899)の「霜の降りる朝 ルーヴシエンヌ」(1873)

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ポール・セザンヌ(1830-1906)「サント・ヴィクトワール山、レ・ローブからの眺め」(1905-8)。これはもうはっきりとキュビズムの香りが漂う作品。ピカソやブラックが絶賛したと伝えられるのも当然。

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アンドレ・ドラン(1880-1954)の「港に並ぶヨット」(1905)。もはや革命的な描写。フォーヴィズム、満開!南仏コリウールの港が描かれている。

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住まいの町から外に出たことのないアンリ・ルソー(1844-1910)の「馬を襲うジャガー」(1910)。襲われているのにのんびりとこちらを見る馬の表情がなんとも言えない雰囲気。動植物園で観察したり、図鑑で調べただけで想像力を含ませて描いたルソー独特の世界だ。

フランス風景画というほんの一部の切り口で揃えてもこれだけの作品が登場するのだから、侮れないプーシキン美術館。(サンクトペテルブルクのエルミタージュになると、この10倍はもってるだろうから、いやはや!)

アプリコ・アフタヌーン・サロン2018

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藤原歌劇団二期会という、日本のオペラ界二大組織の実力・人気ともにトップクラスのお二人の共演で、超有名な曲を並べ、しかもこのお値段というのに、平日の午後という開演時間ゆえか、入りがもう一つだったのは、ちょっと残念だった。

前半は「椿姫」の第1幕のシェーナ、後半はプッチーニの曲をメインに演奏。アンコールは、望月哲也が「女心の歌」、小林沙羅が「私が街を歩くと」と、2分程度の軽めなアリア。トークも交えて、正味100分の内容。

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望月は同じコスチューム、着っぱなしだったが、小林は前半でも、真っ赤、真っ白と着替え、後半はご覧の通りブルー(写真では白っぽく見えるが実際はかなり濃いブルー)の衣装で舞台を華やかに盛り上げた。

歌唱力にはお二人とも定評があり、改めてのコメント不要だが、小林はチャーミングな舞台姿だけでなく、スピントの声も魅力溢れるもの。対する、望月のテノールぶりも、負けていない。ややソフトな美声で、なんでもこなせるしなやかさが特徴。

トークでは、進行の浦久俊彦が慣れた口調で「椿姫」の裏話を紹介してくれて、たいへん興味深く聞いた。出演者へのQAタイムでは、それぞれ得意の演目を尋ねたところ、小林は自分の現在の年齢を考えれば、「フィガロの結婚」のスザンナ、それとアンコールで歌った「ジャンニ・スキッキ」のラウレッタと答えたいたのが印象的。

望月は、自分の声に酔うことは?と聞かれて、そもそも自分の声が好きではないので、それはあり得ない。好きな歌手はパヴァロッティで、彼に憧れてこの世界に飛び込んだような挿話が面白かった。美貌のピアノ伴奏、河野紘子は、ピアノは音をひたすら紡いでいくだけなのに、歌手はそこに言葉をはめ込んで行けるから羨ましいという発言が面白かった。

イタリアオペラの魅力については、二人とも同意見だったが、歌い手にはイタリア語の歌詞が音符にぴったりはめ込んであるところがプッチーニにしろヴェルディにしろ最大の魅力という趣旨のことを話していた。

#25 文中敬称略

「女は二度決断する」

180416 AUS DEM NICHTS  独 106分 脚本・監督:ファティ・アキン(44歳、ハンブルク生まれだが、トルコ系移民、「消えた声が、その名を呼ぶ」2014)

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この作品、ドイツが現在抱えている移民問題を正面から取り上げている。監督自身がトルコ系移民の2世ゆえ、世界に実情を訴える狙いもあったか。ネオナチの跋扈、トルコ系住民への攻撃が日常的になっているハンブルクが舞台。

冒頭、一見して房内と分かる場面。上下真っ白なスーツ姿、長髪を後ろで縛り、これ以上ないほどの典型的な鷲鼻、濃い眉、浅黒い肌と、何から何まで中東風のいかつい男が得意げに出所するところで、受刑者仲間から拍手と歓声に送られ意気揚々と出所。出た先にはこれまた純白のウェディングドレスの白人女性が待ち構えていて、いきなりの結婚式。

トルコ系の夫とドイツ人の妻、5歳の男の子という3人家族。夫は、かつて麻薬取引でムショ暮らし。その後、麻薬稼業とはすっぱり縁を切り、立派に更生し、今では街なかに法律事務所兼旅行代理店を構えている。

ある日、事務所の夫のもとに息子を預け、親しい友人と市内のハンマーム(トルコ式公衆浴場)で寛いでから事務所に戻ろうとすると付近は物々しい警戒。なんと事務所が爆破され、愛する家族が犠牲になる。ここで、初めてタイトルが出る。

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⬆︎被告側弁護人(左から二人目)を演じたヨハネス・クリッシュという俳優の憎々しいほどの迫力の演技には参った。この法廷シーンは息詰まるような緊迫感で見ていてハラハラドキドキ、身体がこわばる程見事だ。

間もなく犯人が逮捕され、裁判となるも、証拠不十分で無罪!!どうしても諦められない女が取った行動が予想を超える展開となる。

それにしても、一見して教養もありそうなドイツ人女性がよりによって、今では足を洗ったとは言え、どうしてこんな物騒なクルド人と結婚しようと思ったのか、その辺が端折っているから、ずーっと違和感がつきまとう。

家族を奪われ、一時は自殺未遂にまで追い込まれるほどの悲しみのどん底から、すこしずつ這い上がり、犯人を追い詰めるまでの鬼気迫る決断をする、極めて難しい役どころをダイアン・クリューガーが見事に演じる。特に、ギリシャの海岸にいる犯人側を突き止め、手製の爆薬を仕掛けようとするも、ギリギリで思いとどまる辺りの微妙な心の揺れを顔の表情、それも目だけで演じきる。カンヌ映画祭で主演女優賞を取るのは不思議ではない。

ダイアン・クリューガー出演作品で日本公開は20本ほどあるが、半分以上を見ている。別にとりわけ好きな女優でもないのだが。若い頃はもう少し繊細な印象を受けたが、今はもう典型的なドイツ人で、どこかいかつい、というか、ごつい印象に変わってきている。なぜか出演作はほとんどがフランス語か英語で、母国語での出演はこれが2本目というのも、珍事。元ダンナはフランス人俳優のギヨーム・カネ。(そう言えばドイツ人男優のダニエル・ブリュームも外国語作品の方が圧倒的に多い)

この映画、3章仕立てで、第1章は”家族、第2章、”正義”、そして第3章”海”という構成。それぞれ撮影手法を替えているという。第3章、ギリシャ編では、古い感じを出すために敢えて年代物のレンズで撮影したとか。また、過去の家族の動画はiPhone撮影らしい。

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⬆︎演技指導中のファティ・アキン監督。若い!

全編、徹底的に感情移入させれれてしまう作品。ところで、この邦題、二度の決断とは?二度目は明らかだが、最初の決断がどれを指すのか、判断が分かれるところだ。両手のリストカットをして浴槽に沈む寸前に弁護士からかかってきた電話に出る時か。犯人側を何が何でも極刑にしてやろうと考えた時か、それともそもそもあんな男と一緒になろうとした時か。

#29 画像はIMDbから。

ロッシーニ「スターバト・マーテル」@東京文化会館

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このコンサートのことを気づくのが大幅に遅れたため、初めて5階で聞くことに。

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初めての体験で、すこしワクワク感も。最前列で、しかも特製の腰高の椅子に座ると、角度が急で、怖いほど。上手1/4ほどが隠れるが、独唱者、合唱団全員も見られたし、オペラグラスを持参したので格段の不都合もなし。音響的にもまったく問題なし。負け惜しみでなく、今後、やたら高い公演の場合はこれも大ありと思った次第。ちなみに、5階のやや右寄りのこのD席、@¥4,600。これより安いE席 (@¥3,600)はさらに視界がせばまる席、つまり極端に左右どちらかの端の席なのだろう。

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3/26の東京文化会館小ホールでの「ロッシーニとその時代」の記事の中でも一部触れたことだが、42歳で音楽界から引退して(随分早い!)故郷のボローニャで過ごすが、その少し前に、マドリッド在住の親しい司祭に頼まれて、初演非公開しかも一度だけ、楽譜の公開もなしという条件で作曲したのがこの曲。途中、体調不良もあり、ジョヴァンニ・タドリーニに作曲を任せて完成。

ところがである、門外不出の楽譜が出回ったため、ならば全部自分で作曲しなおすとして完成させたのが今演奏されている「第2稿」と言われるもので、まあ、曰く因縁のある曲なのだ。

今回は現在国際的にも大変評価の高い4人のソリスト陣に加え、一人一人がオペラ歌手という、その名も東京オペラシンガーズ約80人が揃う舞台だけに、必見、必聴!期待にたがわず素晴らしい演奏で、ブラーヴィが飛び交い喝采、いつまでも止まずという、ひさしぶりの光景だった。

ソリスト陣では、エヴァ・メイマリアンナ・ピッツォラートは過去数度聞いていて、その力量は分かっているつもりだったが、改めて聴くと、やはり只者ではない感が強い。エヴァ・メイは少しばかり声も容貌も衰えたかなと思えたが、聴かせどころはしっかり存在感を見せつけた。

初めて聴くマルコ・チャポーニ、輝かしい高音はわれわれを痺れさせるのに十分。それにもまして凄かったのがバスのイルダール・アブドラザコフだ。名声はつとに名高いことは以前から承知していたが、まさに噂通りの凄みのあるバス。しかも高音も結構出せるから。ロシア内陸部奥深く、ほとんどカザフスタンの国境に近い地方都市出身。

ソリスト陣にも負けるとも劣らない聴かせどころは合唱である。知っている顔が10人はいた、すごい合唱団!これにはソリスト陣からも盛んに喝采とブラーヴィが送られていた。

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さて、スペランツァ・スカップッチ、ピアニストから指揮者に転じた(あるいはまだピアニストとして活躍か)若手女流指揮者で、一言で言えば、日本の女流指揮者に比べると、脚を大きく広げ、腰を下ろすなど、そのダイナミック極まる指揮ぶりが目立つ。音楽的感性にどの程度優れているかは定かではないが、まあまあやはり完成度が高い演奏だったことは間違いない。

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イタリア女性としては、まあ普通でとくべつ別嬪さんではないが好感度、高いようだ。この日は太い編み込みを下げて登場。

蛇足ながら、このホール、演奏後の撮影にはすこぶるうるさいところで、終演部が近づくと”ゲシュタポ”があちこちに現れて、暗闇に目を光らせる。時折”犠牲者”が出るが、上からそれがよく分かって、上からでないと見られない光景を楽しんだ。

#24 文中敬称略

戴冠ミサ+「ルチア」by 大田区民オペラ合唱団

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昨年もほぼ同時期に開催された定期演奏会、歴史ある合唱団なのに第2回とあるのは、多分、大田区民オペラとして過去オペラの本公演に出演していて、定期演奏会を開催する余裕がなかったのではと勝手に想像している。その大田区民オペラは主宰者の都合により解散してしまい、合唱団だけが引き継いでこの形になったのではないかな。

ちょっと残念ではあるが、まあこういう形で本公演ではないけど、それに近い形で一流歌手を招いてオペラのシェーナが安く見られるのだから、これはこれで見る側にはありがたい。

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雨の予報だったが、空はなんとか終演まで持ちこたえてくれた。会場はほぼ満席。この内容で指定席がこの値段だから、ま、当然でしょう。

後半の「ルチア」は、前半から出演している中江早希が例のルチア狂乱の場「香炉は燻りて」で会場を魅了した。フルートの伴奏がなかったのは残念だったが、そこは名手、伴奏の木村裕平が完璧にカヴァーしたと思う。

字幕が出なかった代わりに、あらかじめスライドであらすじを紹介するというスタイル。字幕を出す余裕、あるいは技術的に無理だったのか、ちょっともったいない気がする。

照明がまた少し変わっていて、フットライト、サイドライトを多用して、影絵のごとく浮かび上がらせたり、ジョルジュ・ラトゥールやカラヴァッジョの作品風の光の明暗を駆使して盛り上がらせていた。

合唱団、動きもスムーズで、うまく舞台に溶け込んでおりモルト・ブラーヴィである。この合唱団もご多聞に漏れず、男女比1:3ぐらいで、しかも高齢者が多く、苦労しているようだ。

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血だらけの衣装は中江早希。中央はマエストロ。右へ今日も美声とイケメンぶりでとりわけ女性客を魅了した城 宏憲、響きの良いバス・バリトンジョン・ハオ、右端、どのような役でもはずさない名メゾソプラノ鳥木弥生、たっぱらあるし、どんな衣装でも着こなしてしまう。

中江の左は絶好調のバリトン増原英也。以前聞いたリゴレットもはまり役と思ったが、今日のような悪役がまた上手い。その左は、めきめき頭角を現しているテノール新海康仁、その左は前半のピアノ伴奏、井上めぐみ

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赤い衣装は主宰者の山口俊子

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#23