ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

平井秀明プロデュース ニューイヤーサロンコンサート2018@代々木の森リブロホール

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年明けにNHKニューイヤーオペラに出演した嘉目真木子を生で聴くのは久しぶりだが、金山京介はついせんだってアプリコ小ホール開催の「歌唄い」(吉田貴至企画)で聴いたばかり。

この二人は2年前の魔笛で初共演だったことや、そこで起こったハプニングに触れたトークが面白かった。また、作曲家平井秀明(父は平井丈一朗、祖父は平井康三郎という名門音楽家の三代目)の解説がさすがに奥深く、初めて知ったようなことが多かった。しかも、彼自身の”おごり”で、休憩時間にシャンパンやワインを振舞ってくれたのが、殊の外嬉しかった。

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代々木から徒歩10分ほど、住宅街にある70席ほどの小さなホールだから、オペラ歌手には多少歌いづらいところかも知れない。

嘉目真木子、初めて聞いたのは8年前のマダムバタフライ、さすがに瞠目すべき進化を遂げているのがよく分かる歌唱だった。なにか自信に満ちた、意思の固さを感じさせる歌いっぷりとでも言おうか。

金山京介は、発展途上で、これからどんなテノールに成長していくのか、大変楽しみ。資質はしっかりしているのだから、将来性はすこぶる高い。

アンコールは嘉目のグノーの「アヴェ・マリア」で締めくくった。彼女は来月には「金閣寺」の仕事で、ストラスブールへ三ヶ月の滞在予定で出発するとか。いよいよ国際舞台に大きな一歩を記すことになりそうだ。In bocca al lupo!

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左端のピアニスト、木村裕平は、三日前の「千駄ヶ谷スタイル」コンサートで聞いたばかり。今や、超のつく売れっ子ぶり。

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終演後、ファンが列をなすのはいつもの風景。他のファンと話していたので、横顔でもいいと思ってスマホを向けるや否や、にっこりこちらを向いてくれた。この辺りの気配りというか勘の良さには、毎度感心させられる。

#7 文中敬称略

初めての東大和ハミングホールでプッチーニを

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歌劇団Kamite主催の第2回公演はプッチーニの二本立て、「ジャンニ・スキッキ」と「ラ・ボエーム」。

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再び、青栁X江口組の出演で早めに申し込んであった公演。先週は府中の森芸術劇場で「カヴァッレリーア・ルスティカーナ」を見たばかり。今回はラ・ボエームで再びカップル役で登場。どちらも相手が死んでしまうという悲劇ながら、ラ・ボエームの幕切れはあまりに切ない。

夫婦でロドルフォとミミを演じるのは、これで数度目か。照れ臭さも多分あるんだろうが、息のあった演技で、こちらも安心して見ていられる。

かなり変わった舞台設定と演出で面食らう場面も少なからず。でも、面白いと思ったのも事実。パリ下町の屋根裏部屋の設定だが、室内なのに、すぐそばに街灯が立っていて、室内でロドルフォとマルチェッロたちががやがややっていると、同じ平面で右側では通行人が通ったりと、まるでキュビズムの絵を見ているような錯覚を覚える。

変わっていると言えば、さらにカフェ・モミュスの2幕から3幕への転換がマジックのようにいつの間にかダンフェール・ロシュローの、当時パリ市内外を分ける税関のようなものがあった辺りになっている。モミュスのテーブルなどはそのまま残して。この辺りは、かなり無理があるように感じられる。このオペラをよく知らない観衆には恐らく???だったろう。

さらに、終幕、舞台中央には5段ほどの階段があり、そこにロドルフォが不自然な格好で座っているところから始まる。そして息も絶え絶えのミミが登場し、「はやくベッド、ベッド!」と思っていると、なんとその階段に寝かせるという、およそ考えられないような演出である。そこで、そのままミミは臨終を迎えるが、クッションもなく、背中は悲鳴をあげていたはず。

この公演で、マルチェッロを演じたバリトンの大川 博を初めて聴いたが、こりゃまた生きのいいすごいバリトンが出て来たものと、嬉しくなった。声の響きの素晴らしいこと、圧倒されっぱなし。

ま、でも少ない予算(多分)、限られたスタッフ・キャストで、ここまでの舞台を作り上げられたことは素晴らしいと賛辞を送りたい。

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カーテンコール、真っ正面にスタンディング・オヴェーションおばさんに立ちふさがられて、憤懣やるかたなき思い。

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マルチェッロを演じた大川 博。間違いなく注目株だ。

ミミ役の江口二美。役10年前、滝野川会館での同じ演目の時は、病人用メイクが凄かったが、それとは対照的に今回は割に控えめなメイク。

ラ・ボエーム」の前に「ジャンニ・スキッキ」の公演を見た。上演時間がちょうど1時間の喜劇。ブオーゾが遺した遺産をめぐり一族郎党がみっともない騒ぎを演じるのだが、前半に超有名アリア「私のお父さん」が入るのを聴衆は楽しみにしている。

あとはドタバタ喜劇が展開されるだけで、このアリアが終わってしまうと、なんとなく白けたような気持ちになってしまうのは愚亭だけではないだろう。

三角頭巾をかぶったブオーゾは亡者姿で冒頭から最後まであっちへウロウロ、こっちへウロウロと、結局最後まで舞台から消えることはない。演者にはきつかったろう。

やはりO MIO BABBINO CAROはたっぷり聞き応えがあった。歌ったのは産後まだ五ヶ月の山口佳子。その声は力強く、そして品があって他に言うことなし。

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#6 (文中敬称略)

初めてのホールで初春のハーモニーを堪能

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今、日本で実力、人気ともトップクラスの男女4名のユニットで、結成はもう10年も前らしいが、自分が聞いたのは2011年の銀座YAMAHAホール、そして翌年の二期会週間(サントリー・ブルーローズ)の2回。昨年は行きそびれた。

大変息のあった個性豊かな4人組で、そうした温かい雰囲気が歌唱にもトークにもよく表れている。今回は、当ユニットとしても恐らく初めて、私にとっても初めての紀尾井町サロンという、多分80席ほどのかなり小ぶりなホールで開催された。

小さいが、響きもよく、使い勝手のよさそうな美しいホールであるが、当然、ロビースペースなどはかなり限定的なので、このような人気ユニットの場合、終演後の混雑はおって知るべし。おばちゃんたちがほぼ9割という異常な比率で、男性客は恐れをなして早々に退散、写真撮影はおろか挨拶するタイミングもなく会場を後にしたのが少し悔やまれる。

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前半はほぼ型通りというか、軽めの日本歌曲中心、後半はアチラものを並べるという構成。独唱、重唱をうまく織り交ぜて、飽きさせない工夫を凝らしたプログラムになっていた。

第一部

1全員、2田上、3与那城、4長谷川、5高田、6、7全員、7の前にサプライズで「古都の宵桜」全員

第二部

1田上、与那城、2長谷川、3高田、4田上、5与那城、6長谷川、高田、7全員

それぞれの持ち味をうまく引き出す構成も見事だったが、ピアノの木村裕平の伴奏が素晴らしかった。華麗で、時にジャジーなリズムを織り込むなど、このユニットの特性にピタリと合わせていたテクニシャン!ブラーヴォ!

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#5 (文中敬称略)

「はじめてのおもてなし」

180116 独 WILLKOMMEN BEI DEN HARTMANNS(ハルトマン家にようこそ)116分 脚本・監督:ジーモン・ファーフーフェン

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ドイスが現在抱える難民問題と、今の普通の人たちの日常の家庭環境、ついでに社会問題などを皮肉りながらも、笑いに包まれたヒューマン社会派ドラマに仕立てている。

ミュンヘン郊外のおしゃれな一角に、結構立派な家を構えるハルトマン一家。外科医のリヒャルトは、急速な老いを意識し、妻のアンゲリカは、鬱々とした日々をワインに紛らわして、庭いじりに精を出している。

息子のフィリップは投資会社の経営者として辣腕を振るってはいるが、離婚後、一人息子との間はぎくしゃく。娘のゾフィーはなにかにつけて父親が進路について口を出すから、”自分探し”で32歳にもなって、まだ学生を続けている。

一家が集まったある日、突如アンゲリカが難民を自宅に預かりたいと言い出すから、全員、椅子から転げ落ちそうなほどびっくりする。しかし、アンゲリカの意思は固く、家族も折れるしかない。

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かくして、難民センターから一人のナイジェリア人の男、ディアロがこの一家の一員となって、ドイツ語を学びつつ、一家に溶け込もうと努力を続けるのだが、近所の目、世間の目、とくに右翼系住民は必ずしも好意的に見るどころか敵意をむき出しにし始める。

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ついに警察沙汰のトラブルが・・・ま、最後はこの通り⬆︎ハッピー・エンディングを迎えるが、今起きている切実な問題だけに、遠い国の出来事として笑ってばかりもいられないのだ。他山の石とすべき時も来るかも。

この作品、見るきっかけとなったのは、アンゲリカを演じるセンタ・バーガーを何十年かぶりに見られると知ったこともある。現在76歳、その昔は妖艶な役も多く、アラン・ドロンとの共演作「悪魔のようなあなた」(1967)はリアルタイムで観ている。ちなみに本作の監督は彼女の息子。

その頃は、一つ年上の、やはりドイツ女優エルケ・ゾマーなどと並び称せられ、どちらかと言えば肉体派女優で、久々の銀幕登場は、先日見たばかりのミレーヌ・ドモンジョ(「ルージュの手紙」)同様、懐かしさが込み上げてくる。

#5 画像はIMDbから

府中で「カヴァレリア」を楽しむ

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応援している青栁・江口夫妻から誘われて、合唱練習の終盤こっそり抜け出して、蒲田から府中へ向かった。

開場時間の20分前に着いたら、20mぐらいの行列が。それでも2,000を超える客席数のどりーむホールだから、ゆうゆうといい席を確保。今回は演奏会形式ということだったが、蓋を開けてみれば、コスチュームも振りや動きも本公演並みで、ないのは舞台装置だけという、ありがたい公演!

オケと合唱団の間の、かなり狭い隙間までも巧みに使って動きを作っていたは見事だった。後で聞いたら、演奏会形式ゆえ演出は入らず歌手たちがそうした工夫をしたというから、そこもまた感心しきりだった。

今回は割に舞台近くに陣取っていたのに、オペラグラスまで使って、いつになく念入りに歌手たち、オケ、そして合唱メンバーの表情や動きを観察してみたが、とりわけソリストたちの表情が素晴らしく、やはりこういうところまでも見て、それがオペラなのだとつくづくと感じ入った次第。

オケは、筑波大附属高校が母体になっているということで、全体に若さあふれるフレッシュなメンバー揃い。響きも若々しく、マエストロ柴田真郁が初々しい彼らをうまく乗せて、それなりに瑞々しいサウンドを届けてくれたと思う。

合唱団は今日の公演のために募集されたそうで、後で団員の方に聞いたら、12月から練習に入ったそうで、それにはびっくり!実際に合唱が歌う場面はトータルで20分ほどではあったが、イタリア語だし、結構苦労があったと思われる。楽譜持ちだったが、ほとんどの団員がチラッと目を落とす程度で、マエストロをしっかり見て歌っていたのが印象的。

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それにもまして、ソリスト陣がご覧の通り、まことに豪華な布陣で、言うことなし。日本人4人はいずれも歌唱も演技もトップクラスで、以前にもここでコメントしているのでいまさら付け加えることは何もない。ウクライナ出身のソプラノ、オクサーナ・ステパニュックは今回初めて聞いた。やはり日本人とはすこしだけ異なるような気がするが、それはそれで素敵な音色で、容姿も含め、ローラにはぴったりの演唱だったと思う。

もともと主役のトゥリッドゥは村一番の美女ローラと恋仲だったのが、兵役に取られて戻ってみたら、馬車屋のアルフィオとできちゃって、夫婦にまでなってたというから、そりゃ頭にくるわな、まして熱しやすいシチリア人だもの。んで、腹いせに貞淑なサントゥッツァと一緒にはなったけど、やっぱ派手なローラがどうしても忘れらんない。どうすべぇ。

アルフィオとサントゥッツァの目を盗んで、こそこそローラと逢瀬を重ねるが、狭い村だから、あっという間に噂に。その辺、考えが足らないというか、バカなんだな、このトゥリッドゥという男は。

可哀想なのは一途なサントゥッツァ!トゥリッドゥの母親のマンマ・ルチーアに相談しても埒が明かないこと、知っていて、愚痴をこぼすしかない。

結局解決の糸口がないまま、悲劇的結末で幕というわけ。ま、言ってみればシチリアでは、そこいらの村々で日常的に起きていた、まさに絵に描いたような悲劇なんだろう。

村人たちも結構無責任で、面白がって囃し立てるばかりだし、マンマ・ルチーアもてめえの愚息が引き起こしたラブ・アフェアなのに、おろおろするばかりっていうのもねぇ〜、見ていて歯がゆいったらありゃしない。

それにしても、このヴェリズモオペラの傑作は、なんど見ても、何度聴いても、ほんとうに素晴らしい!

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左から須藤慎吾(今回のアルフィオも存在感たっぷり)、青栁素晴(冒頭、いきなりのアリアがあるから、大変。サントゥッツァとの息のあった名演唱)、オクサーナ・ステパニュック(やはりこうして見ればひときわ異彩を放っている)サンタことサントゥッツァの江口二美(余裕の歌とお芝居。安心して聞き惚れていた)そして巌淵真理(この時、感極まって、涙)

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左端はマエストロ柴田真郁

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⬆︎マンマ・ルチーアを演じたメゾソプラノ巌淵真理。次はなんとサントゥッツァを演じることが決まっているとか。

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もう10年以上にわたって応援しているサントゥッツァを演じたソプラノの江口二美。この素敵なコスチュームも自前で用意したもの。

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#4(文中敬称略)