ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ドイツ・レクイエム」@東京文化会館(都民響第127回定期演奏会)

190321 合唱仲間の一人が出演するというので、東京でのソメイヨシノ開花宣言がされたこの日、上野の杜へ。

好天、桜の開花、その上入場無料だから、満員にならない方がおかしい。5階席までびっしり。一緒に聞く仲間が先に予約のためにはやばやと並んでくれたおかげで、1階左側の割にいい席を確保してくれて大助かり。

まずはストラヴィンスキーの「火の鳥」の演奏。アマチュアでも老舗の名門オケだけに立派な演奏だ。

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ソニー合唱団は多分初めて聞かせてもらったが、四声のバランスの良さは見事。

休憩後、お目当のドイツ・レクイエムブラームス)! レクイエムと言えば、三大と言われるフォーレク、モツレク、ヴェルレクを聞く機会が圧倒的に多く、本作を聞く機会は比較的少ない。

いずれもそうだが、本作も荘重、荘厳に静かに始まる。ヴェルレクなどに比べると、全体に、テンポやリズム、音の大小など、大きな起伏があるわけでなく、あくまでもしずしずと進行していく印象が強い。また、ほどんど合唱が歌いっぱなしで、合間にすこしだけソロが入るという展開も特徴的だ。

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独唱したお二人。

横山和美、上背のある大沼 徹と入場すると親子ほどにも見える小柄な姿だが、歌唱は広い場内のすみずみまで響き渡るもので、聴衆の多くが多分驚いたと想像する。ピュアな声質もこの曲にはぴったりという感じだ。

一方の大沼は、すでに日本のバリトン勢では、押しも押されもしない堂々たる地位を築いている。伸びのある高音に特徴のあるハイ・バリトンというジャンルに属するのか。ついでに、チャーミングな人柄も手伝って、とりわけ女性ファンの間には人気沸騰中。

合唱団の入場から少し遅れて入ってきた二人だが、オケの中段に用意された席に座り、それぞれ出番になると、前へ出て歌うという方式は比較的珍しい。

それにしても70分と言えば、自分も合唱団員として先日うたったばかりのヴェルレクより少しだけ短いのだが、大きな違いは独唱はごく僅かで、合唱がずーっと歌いっぱなしというところか。しかも立ちっぱなしで、これはきつい。高齢者には耐えきれないだろう。

#15 文中敬称略

「天国でまた会おう」

190321 AU REVOIRE LÀ HAUT 117分 仏 脚本・監督:アルベール・デュポンテル(出演も)原作:ピエール・ルメートル(脚本もデュポンテルと共同で担当している)

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小説は読んでいないが、それでも十分楽しめる。ただ、117分にまとめたため、かなり原作を削ぎ落とした気配で、分かりにくいところも。

第1時大戦直後のモロッコ、警察に呼ばれた男の尋問から始まる。ここから男の長い述懐としてストーリーが展開して、最後は、またこの部屋に戻り、意外な結末となる。

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塹壕では仲間の似顔絵描きをするエドゥアール

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無意味な偵察に出て行く仲間を見守るアルベールとエドゥアール。直後、仲間は背後から撃たれる。誰に?


厭戦気分蔓延のマジノ線塹壕場面に切り替わる。気分は仏独兵士共通のものらしい。最悪なのは敵である独軍より、戦争継続を狙う味方の中尉だという兵士のつぶやきが。

中尉の悪辣な仕掛けで、激しい戦闘再開となり砲弾飛び交う中、肉弾戦に。生き埋めになるはずだったアルベール(デュポンテル)を助けたエドゥアールは、逆に砲弾の破片で顎を吹き飛ばされてしまう。

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病院で目が覚めたら、顎が・・・!

戦後、命の恩人であるエドゥアールを必死で支えるアルベール。実はエドゥアールは資産家の息子、画家になる夢に反対する父親との確執から、家には戻らない覚悟と知り、アルベールは彼を別人に仕立て上げて、食うため二人で大掛かりな詐欺事件を画策、そこに父親や、あの中尉(戦後も汚い手を使ってのし上がってきている)を巻き込んで・・・。

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顎を隠すために仮面製作に夢中になるエドゥアール

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さまざまな仮面作りに存分に芸術的創造性を発揮するエドゥアール

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HOTEL LUTETIA (PARIS)から・・・。

#17 画像はIMDbから

「キャプテン・マーヴェル」

190320 CAPTAIN MARVEL 124分 米 監督:アンナ・ボーデン、ライアン・フレック(監督二人は珍しい。ボーデンは脚本も)Walt Disney Picture, Marvel Studios

ご存知マーヴェル作品。時代設定は1995年。アヴェンジャーズ誕生秘話の一つ。「ルーム」('15)でアカデミー主演女優賞を獲得したブリー・ラーソンを見たくて見に行ったような次第。

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まあ、なんともまばゆいばかりのポスター柄

アメコミにほとんど馴染みがない身ゆえ、あれこれ語る資格もないので、ド派手な宇宙での格闘映像を楽しむのみ。ブリー・ラーソンはとりわけ美人でもないし、かなり地味だが、広く好感を持たれるタイプの女優。毎日4時間、延々9ヶ月にわたって格闘技の特訓を受け、しまいには2トントラックを一人で動かせるほどの筋力をつけたと言うから、さすがハリウッドの俳優魂!

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メイクのせいだろうが、サミュエル・ジャクソン、ここでは青年並み。

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懐かしい箱型コンピューター。1995年だからね。

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この茶トラ猫が大活躍する。

グースという名前の猫、素晴らしい演技を見せるが、4匹のプロ猫を採用したらしい。ちなみにブリー・ラーソンは猫アレルギーのため、猫の映るシーンでは、本物は使わなかったとか。

他にアネット・ベニング(老けたが、相変わらずチャーミング)、ジュード・ロー(こういうSF作品には不向きと思うのだが)が共演。

まあまあの感じだが、同じ嗜好なら、マーヴェル・スタジオの対抗馬、DCコミックスの「ワンダー・ウーマン」('17)の出来の方がよかったように思う。

#16 画像はIMDbから。

「ウトヤ島、7月22日」

190319  Utøya, 22 juli ノールウェイ 97分 監督:エリック・ポッペ(ノールウェイ人、「ヒトラーに屈しなかった国王」'16)

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割に最近の事件としての記憶があったが、実は東日本大震災と同じ2011年、夏の事件であった。当時、日本でも大々的に報じられていたから、詳細に事件のことは覚えている。

ワンカット撮影という手法、最近では「カメラを止めるな」でも知られているが、特段珍しいものではない。ただ、実際の事件の進行にシンクロさせ、ほぼ同じ時間を追い、ハンド・カメラで撮りっぱなしの手法がどれだけ臨場感を生むかがよくわかる。実際の事件は72分で、本作の上映時間が97分なのは、前後のシーンが含まれることによる。

ウトヤ島とは別の近くの島を撮影場所に選び、生存者から聞き取った真相をできるだけ集めて再構築した完全なるフィクションであることを監督自身、エンドロールの字幕で訴えている。すなわち、事件の被害者や遺族に最大限配慮したものと思われる。

前半は轟く銃声、逃げ惑う若者たちの細かい描写で、息詰まるように見ていたが、後半はさすがに少しだれてくるのは、この手の作品、つまり結果が分かっている事件ゆえ、ある程度はやむを得ないだろう。

映画は、まずオスロ市内の実写シーンで始まる。政府庁舎が爆破されるが、わずか数分でウトヤ島へカメラは移動し、サマーキャンプ場のテント村へ。

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労働党青年部主催の恒例のサマーキャンプに参加している若者たちの間には、すでに庁舎爆破のニュースが入ってき始めている。(8年前にすでにアイフォンなどを手にする若者が多いことに驚く。因みに初代アイフォンは2007年発売!)親元からの電話で、オスロでおそろしいことが起きたから、そっちでも気をつけろということだろう。

実際、犯人はまずオスロで事件を起こしてから、ウトヤ島を狙うという周到な計画的犯行に及んだことはのちに犯人自身が自白しているが、ある種陽動作戦で警察をオスロに釘付けにしようという算段だったようだ。

それにしても1時間以上にわたって一人で撃ち続ける犯人の体力もすごいが、その間、ヘリが飛来するわけでなく、警察その他のボートが現れるわけでなく、延々と若者たちは恐怖にさらされ、おののくことに。

銃声は響き続けるが犯人の姿は最後まで見せないというのも、見ている者の恐怖心をあおるに十分だ。終盤、島の海岸側に避難している若者たちを断崖上から狙い撃ちする場面で、初めてぼんやりと犯人らしき人影が映るだけという徹底ぶり。

結末はわかっていても、これだけ画面に惹きつけ続ける手腕は大したものだ。

時あたかも、NZとオランダで市民を犠牲にした銃撃事件が発生、改めて移民問題ヘイトクライム、白人至上主義などについて考えさせられる作品。

#15 画像はIMDbから

Utøya 22. juli

Utøya 22. jノールウェイ 97分 監督:エリック・ポッペ(「ヒトラーに屈しなかった国王」

「運び屋」

190319 THE MULE (ラバから転じて麻薬の運び屋という俗語)米 116分 製作・監督・主演:クリント・イーストウッド (間もなく満89歳!!)

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これが90間近の人の作品かと思うと驚嘆しかない。これも実話に基づいた作品。くそまじめな老人だからバレにくいという理由から麻薬団から運び屋を頼まれ、まんまと12回も成功させて大金を手にするが、結末がちゃんと用意されている。

 

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花をこよなく愛する男がまさか麻薬の運び屋とは、誰も思わないところがミソ。

主人公のアール(クリント・イーストウッド)は、もともとヘメロカリスという一日花栽培農園経営で成功したのだが、通信販売の隆盛とともに、農園をたたまざるを得なくなる。そんな折に、舞い込んだ”美味しい”話に乗るのだったが・・・。

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今日もルンルン、麻薬を乗せてひたすら走る、走る。

家族のことは奥さんに任せっぱなしで、やたら外面(そとづら)だけはいい、かなりいい加減に生きてきたアールだが、晩年に至りやっと家族の大切さを知り、悔い改め、家族の元にもどるというお話。

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ダイナーでたまたま隣あわせたのは、麻薬団を追う刑事ベイツ(ブラッドリー・クーパー

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12年以上も父親と口をきかなくなっていた娘もやっと心を開き始める。

適度な緊張感を前面に漂わせながら進行していくストーリーも、終演部でいっきにしっとりとした雰囲気に包まれていく。クリントの一人芝居と言っていい作品。

メキシコの麻薬王に扮したアンディー・ガルシアは、クリントの作品にはどんな役でもいいから出させてほしいと言っておいたらしい。

クリントはハイウェイを走行中、ラジオをかけっぱなしで次々とカントリーやらウェスタンやらが聞こえてくるが、これに合わせて延々と歌いまくる。これがまた彼の音楽性の高さを示すシーンになっている。

この作品が最後の作品にならないことを祈らざるを得ない。ちなみに娘役のアリソン・イーストウッドは実の娘。

#14 画像はIMDbから