ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

ブリューゲル「バベルの塔」展

170419

f:id:grappatei:20170420105833p:plain

例によって、高齢者無料日の有効活用で、上野へ。前評判上々の展覧会だから、混雑を予想し、30分待ちを覚悟で、本まで持って行ったが、拍子抜けするほど、待ち時間ゼロで入館!!尤も、今回は超目玉のブリューゲルの「バベル」を除けば、あとはヒエロニムス・ボスの小ぶりの作品が数点程度で、それほど高齢者を惹きつけるほどの作品がなかったことによるのかも知れない。

ブリューゲルのバベルは、現存するものでは、ロッテルダムにあるボイマンス美術館所蔵の本作と、もう一点はウィーンの美術史美術館所蔵のものがある。下図のようにかなり図柄が異なる。

f:id:grappatei:20170420111009p:plain

実物は60 x 75cmと、思っていたほど大きなものではなかった。その中に、驚くほど細密な描写が含まれており、大変凝った展示の仕方で、細部がよく理解でした。この絵を展示してある2階に上がると、なんと40倍に引き伸ばし、これを湾曲したボードに貼り付けて展示。さらに、解像度の極めて高い写真技術で3倍のレプリカを展示してくれ、さらには、3D映像で、克明に紹介してくれるなど、この辺り、学芸員の苦労が偲ばれる。

f:id:grappatei:20170420111657p:plain

f:id:grappatei:20170420111719p:plain

暗喩に富んだ作品。ボスらしい奇妙奇天烈なものが細々と描きこまれている。

f:id:grappatei:20170420111846p:plain

なお、本展では、ブリューゲル1世というふうに表記されているが、これまで一般にはブリューゲル(父)とか(老)と表記されていた。ピーテル・ブリューゲルには二人の男の子がいて、長男が父と同じピーテル、次男がヤンで、どちらも画家となるが、長男が5歳、次男が1歳の時に父親が没しているので、父から直接手ほどきを受けたわけではないのははっきりしている。

さらに、次男ヤンの子供もヤンと称し、同じく画家となっているため、まことに紛らわしいことに。

「午後8時の訪問者」

170418  原題:LA FILLE INCONNUE(見知らぬ少女)仏・ベルギー合作 106分 製作・脚本・監督:ダルデンヌ兄弟

f:id:grappatei:20170419125305j:plain

サスペンスの趣もあるが、むしろ社会派ドラマ。診療所勤務のジェニー(アデル・エネル)は、若い研修生ジュリアンを指導中、ドアベルを聞く。診療時間を1時間も過ぎており、また自分もそのあとの予定が入っていることもあり、応対に出ようとするジュリアンを制止する。

f:id:grappatei:20170419130054j:plain

翌日、付近で黒人少女の遺体が発見される。ドアベルを鳴らしたのがこの少女だったことがやがて判明する。もしあの時、ドアを開けていれば、彼女は殺されなくてすんだのではないか。人の命を救う医者でありながら、死へ追いやったことで、深い自責の念にかられるジェニー。

f:id:grappatei:20170419130502j:plain

なぜ、どうやって彼女は死んだのか、一体何者なのか、独自に調べ始めると、自分の患者の一人との接点が見えてくる。調査を中止しろと恫喝され、得体の知らないバックグランドが見え隠れする。

舞台がベルギーのリエージュという小都市であり、移民問題が絡まった社会派ドラマということになれば、やや日本人には訴求力が弱いかも知れないが、ダルデンヌ兄弟が撮った同じく社会派ドラマ「サンドラの週末」に共通する味わい深い作品になっている。

この邦題は見事だ。見知らぬ少女より、よほどインパクトがあると思う。主演のアデル・エネル、愛想がなく、ほとんど無表情なのが、本作の地味な展開にぴったり。

兄弟は、もともと本作の主役にはマリオン・コティヤールを充てたかったらしいが、スケジュールが合わず、代わりに「サンドラの週末」をコティヤールで撮ったとか。

最後は、ちょっと呆気ないと思ったが、これこそがこの兄弟の持ち味なのだろうと思い、納得。エンドロールが淡々と流れる間、診療所前の通りを走る車の音だけ。

#9 画像はIMdb及びALLCINEMA on lineから

浜離宮ホールで混声ハーモニーを楽しむ

170416

f:id:grappatei:20170417124706j:plain

自分が所属する大田区内の合唱団のバリトンの一人が、LOCUSという混声合唱団の演奏会に出演するというので、自分たちの練習終了後、仲間を誘い合わせて築地へ。

#14

前回同様、ここが会場だとどうしても新鮮な魚介類ランチを楽しみにしてしまう。まずは、近くの「奥の院」で腹ごしらえ。極ウマの握りを慌ただしく頬張るのは、ちょっともったいないのだが、開場時間が迫っているから仕方がない。

会場に入ると、舞台には、譜面台が20台ほど並んでいるので、こりゃ何かパフォーマンスをするんだろうと思っていたら、案の定、後半の演目の一つで、手足を振り、手を叩き、実に楽しそう。男性10名、女性13名という小所帯。男性の一人だけ、女性側に入っていたのは、カウンター・テナーなのかも。

上のチラシでも分かるように、デンマークアイスランドの歌など、演目が馴染みのないものばかりだったが、どれもたっぷり堪能。羨ましいほどの息の合わせようだ。

いずれにしろ、相当な練習量だろうと思ったのは、一糸乱れぬ歌唱で、正直、我が合唱団がこのレベルに達するには、今の練習量では無理だろうと思った次第。

墓参

170414 両親と、満州で幼児期に命を落とした弟が眠る生田にある墓苑へ。

f:id:grappatei:20170415132217j:plain

今日は気持ちの良い好天、さすがに桜はかなり散っていたけど、周辺の樹々が色とりどりに風にそよぎ、しばし時の経過を忘れていた。

 

「キングコング:髑髏島の巨神」

170412 原題:KONG: SKULL ISLAND 米 118分 監督:ジョーダン・ヴォート=ロバーツ

f:id:grappatei:20170413102621j:plain

これまでのキングコングの映画作品はそのほとんどを見ている(もちろん、オリジナルの1933年作品はテレビ映像でのみ)が、いよいよ超弩級作品の登場である。とにかく、これまでのどのコングよりデカイ!!

f:id:grappatei:20170413103202j:plain

飛行中のヘリを鷲掴みにして吹っ飛ばす場面のど迫力!自分が支配する領域へ、勝手に商売目的でズカズカ乗り込んでくる人間に対し怒りを爆発させるのは、これまでの作品と共通するテーマ。ただ、まるでスケールが違うことと、最後は悔い改めて人間たちがここを去ることに理解を示し、天敵であるオオトカゲから人間を守る側に回るのが異なる点だろう。

第2次対戦、南太平洋で空中戦を演じていた日米のパイロットが偶然、なの知れぬ無人島にパラシュートで落下、敵同士だから、必死の殺し合いをしているところに、コングが登場するから、戦っている場合じゃない。二人は手を組んで、生き延びる方策を編み出す。

f:id:grappatei:20170413104448j:plain

それからおよそ30年後、未知の島発見の報に接し、軍に援護してもらいながら調査団を送るアメリカ。島をすっぽり覆う稲光の雲霧を抜けたヘリ群は、島に接近。この場面は明らかに「地獄の黙示録」に対するオマージュ映像だろう。船がジャングルの中の川を遡るシーンも「地獄の黙示録」を思わせる効果はたっぷり。

f:id:grappatei:20170413104538j:plain

上陸はしたものの、島にはコングの他にも巨大オオトカゲ、巨大な蜘蛛、同じくナナフシ、水牛など、巨大化した生物が滅多やたらに登場するから、調査どころではない。

f:id:grappatei:20170413104727j:plain

何名もの犠牲を出し、早く脱出しようとする民間人側と、不明者を救出しようとする軍が激しく対立、さらに第2次大戦生き残りの飛行士、マーロウ(ジョン・ライリー)も加わり、動きが取れなく一行。

f:id:grappatei:20170413105031j:plain

調査団の主要人物ランダ(ジョン・グッドマン)も、この直後、オオトカゲに一呑みにされる。

f:id:grappatei:20170413105343j:plain

ナパーム弾で、コングを焼き殺そうとする、ベトナム帰りのパッカード大佐(サミュエル・ジャクソン)のアイディアも、成功かと思われたが、不死身のコングが炎の中から蘇り、大佐の前にその巨体を見せる場面。

f:id:grappatei:20170413105613j:plain

このオオトカゲに何名の犠牲者を出したことか。最後のコングとの死闘は本作最大の見せ場。女流カメラマンのメイソン(ブリー・ラーソン)を救ったばかりか、死闘の末、オオトカゲを仕留めるコングの目覚ましい活躍で、今や小員数になってしまった調査隊が辛くも逃げ切ることに成功。結局のところ、これまでのコング作品同様、最後は人間の傲慢さだけが浮き彫りにされ、その意味では後味の悪いこと。超弩級の映像が楽しめれば、それで十分!エンドロールの後に、映像が続くので、最後まで席を立ってはいけない。

f:id:grappatei:20170413110354j:plain

⬆︎撮影風景 主にオアフ島、オーストラリア、ベトナムが撮影現場となった。

エンドロール近くで流れるVera LynのWe'll meet again. 

#18 画像はIMdbから