ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

立ち見で「こうもり」@丸の内オアゾ

170504 「告解」を見終わって、すぐ東京駅へ。丸の内オアゾのロビーに行くと、椅子席は整理券を持っている人だけで、そうでない人は立ち見となる。あーあ、これからオペレッタ「こうもり」が始まる5時まで、2時間もただ突っ立っているのもさぞ辛かろう。

ところが、しばらくすると、ヴァイオリニストが伴奏ピアニスト(津嶋啓一)を従えて登場。30分ほどのコンサートがまずあったのだ。桐朋学園出身の小林倫子が弾いたのは、

パラディ:シシリエンヌ

ヴィタリ:シャコンヌ

サラサーテ:序奏とタランテッラ

バルトークルーマニア民族舞曲

軽く弾いているように見えるが、実は結構なテクニックを要する曲ばかりで、さすが日本音楽コンクール入選の腕前である。桐朋学園から英国の名門、ギルドホール音楽院に留学している。

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このミニコンサートが終わると、直ちに椅子は撤去、オケスペースを作り始める。立ち見客はそのまま引き続き待機。

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最前列だから、目の前にコンミス、そしてすぐ手の届くところにマエストラの岸本祐有乃が。前回(2年前)、アイーダの時と同じだ。

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丸の内合唱団のみなさん、張り切って、思い思いの凝ったコスチュームを身にまとっての登場。オケを挟んで聴衆を向き合う位置でひしめいている。

ちなみにマエストラ岸本祐有乃(これでゆりのと読ませる)は、前回、アイーダでも振られた、ご覧のようにチャーミングな方である。

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5時ちょうどに序曲がなり始める。オアゾが1年でも、もっとも華やぐ瞬間だろう。やがてソリストたちが登場。

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賑やかにエンディング。オルロフスキー公爵役の浪川佳代、しょっちゅうアルテ・リーべや銀座ライオンに出演しているから、こんな役はお得意の様子、アドリブも入れて、会場を沸かせる。進行役を兼ねた古澤利人も堂に行った演唱で、安心して聞いて入られた。

お目当の塩田美奈子は当然ロザリンデを演じたが、ずーっとマスク姿だったのがちょっと残念。アイゼンシュタイン、小貫岩夫オペレッタが断然似合う二枚目。出番の少ないアルフレード志摩大喜のために、あえて「こうもり」と関係ないオー・ソレ・ミオを持ってきたが、肝心な聴かせどころを小貫と古澤にさらわれるというハプニング。散々、浪川からいじり倒された形の志摩は、ちょっと気の毒だったかな。

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#17 (文中敬称略)

 

「告解」(イタリア映画祭出品作)@有楽町朝日ホール

170504 恒例のイタリア映画祭が開催されている。例年、数本は見るのだが、今年はこれ1本。原題は、LE CONFESSIONI 100分 監督:ロベルト・アンドー

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ドイツ北部、北海に面する保養地ロストクにあるデラックスホテルを会場にして先進8カ国蔵相会議が開かれている。

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そこでゲストの一人、IMF理事長が自室で死体となって発見される。自殺か他殺か。同じく理事長が招いていたゲストのイタリア人神父が、理事長に最後に会った人物として、警察にマークされるが、決定的証拠が得られないまま、会議は閉会に至る。

理事長は前夜、神父を自室に呼んで告解を申し入れるが・・・。神父は何をそこで知ることになったのか。

蔵相以外にも経済界の大物や、作家など多彩な顔ぶれが各国から参加していて、密室殺人事件の様相を帯びながら、展開していく。北ドイツの陰鬱な空の下、あちこちに伏線を張り、特異なカメラワークやシュールな音楽も効果を生んで、最後まで飽きさせない。

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主役の神父に扮するトニー・セリヴィッロの上手さが断然光るが、フランス映画界の大物の一人、ダニエル・オートゥーユ⬇︎がIMF理事長に扮し、いい味を出している。この理事長は、スキャンダルで失脚したドミニク・ストロス=カーンがモデルと言われている。

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日本の蔵相に扮するTogo Igawaが何者か調べてら、日本名、伊川東吾(本名:馬場義之)、1940年生まれで、なんと中高は愚亭と同じところを出ていて、4年後輩にあたる。現在はイギリス在住で、ヨーロッパで活躍中と判明。

#23 画像はIMDbから

 

雪中貯蔵酒にありつく

170503 珍しいお酒が手に入ったからと知人宅にお呼ばれ。それがこの日本酒。

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説明文を読むと・・・

清酒「荒澤岳」は毎年、12月頃に奥只見にある荒澤岳で取水した水を洗米や仕込みの水として使用し、お酒を造ります。豪雪地として知られる奥只見は雪で行き来もままならない季節でもあり、時として雪上車で取水口からトンネルの入り口まで運ぶ年もあります。おのずと水にこだわる為にお酒としての生産量にも限りが生じます。水質は軟水。醗酵は緩やかですが、しっかりとした味わいの酒を醸します。

ということで、ラベルにある伝之助小屋の水で仕込み、雪中の場所を探すとか。雪室貯蔵ということで、4,000本を雪の下に埋め、機械も動員してそれを掘り出すという面倒臭いことをするのだ。

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ご覧のようにラベルが間に合わず、仮のラベルが貼ってある。さて、味はといえば、ワイン党の愚亭でも、分かるスッキリ辛口の奥深い味わいでした。この日は、ひたすらこのお酒だけ。もちろん、今日は給水もしっかり。おかげで帰路の足取りもしっかり。

「カルメン」日本語版@国立オリンピック記念青少年総合センター

170503 昨年末、杉並公会堂での第九に合唱団の一員として舞台に乗ったが、その際、アルトのソリストを勤めた星 由佳子カルメンで出演というので、滅多に行く機会のない会場へ。

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星 由佳子の出来栄えは一言、素晴らしかった!だが、それ以外は、かなりいろいろあったような公演になったと思う。

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この方、ご覧のような美貌と、すらりとした長身で、舞台映えのすること!特に、カルメンなどは、まさにぴったりのハマり役なのだ。終演後、ご本人から聞いたところでは、体調万全ではなく、必ずしも自身では納得の行く演唱ではなかったようなことをおっしゃていたが、そんな風には全く見えなかった。

この公演の問題はいくつかあると思うのだが、辛口になって申し訳ないけど、まずは演出の意図が少々分かりづらい。演出を担当し、またホセを演じた蔵田雅之モーツァルト劇場(現在、代表を勤めていることは、⬇︎の略歴で初めて知った)などでも何度か聞いていて立派なテノールの一人である。

ところで、開演前に場内アナウンスがあり、昼の部のホセ役、池本和憲が、体調不良で、急遽夜の部予定の蔵田雅之が昼にも出ることになったと。この大事な役を一日2回演じる重圧からか、第2幕後半あたりから高音域に大トラブル。3幕以降は少し持ち直したように見えたが、まことに気の毒な結果だった。愚亭自身、以前聞いたことがあるが、堂々たる声の持ち主だけに、余計に慚愧に堪えない思いだったろう。

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ご覧のように、オペラに対する立派な見識をお持ちで、これまでも赫赫たる成果を示されてきているが、まあ、稀にこんなこともあるのだろう。

演出については、すでに触れたように、演出家の意図が伝わりにくいことは否めない。それにだいたい子供達の出番が多すぎる!なぜ、子供達だけのフラメンコを二度も見なくてはならないのか、時間の使い方に工夫が足らないような気がしたが。

また、舞台のセットも、もう少しなんとかならなかったのか。クリスマスツリーにしか見えない木が2本、そこにクリスマスデコレーションのごとき飾り付け?全体にカラースキームがあまりに安っぽすぎる。

それから、舞台はアンダルシアなのに、まるで極寒のロシア兵が着るような厚手の軍服も違和感たっぷり。ついでに、オケもかなりいっぱいいっぱいの演奏だったように感じられた。

こう書くと、なんだかカルメンの一人舞台だった観、大ありなのだが、とは言え、チラシにも書かれているように、ユニバーサル・デザイン・オペラと銘打っているということは、老いも若きも健常者も障がい者も誰でもが参加可能という触れ込みの、いわば究極の手作りオペラと捉えれば、もう少し優しい眼差しで観る必要があるのだろう。ちょっと見方が辛口すぎたかも知れない。

 

(文中敬称略)

#18

 

リリカ・セレーナというオペラアリア・歌曲研究団体の発表会@アプリコ(小)

170501

知り合いのソプラノが出演することを偶然フェイスブックの記事で知り、とりあえず、彼女の出番、それも後半だけ聞きにアプリコへ。

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田中由佳さんの第3部最初の出番は間に合わず、受付のモニターで聞くしかなかった。その代わり、彼女がトリを務めることになった、ヴェルディの歌劇「ドン・カルロ」から、エボリ公女が歌う「ヴェールの歌」(Canzone del velo,またはNei giardin del bllo)はしっかりと鑑賞できた。

これはメッゾのアリアだから、ソプラノの由佳さんには多分低音部は手に余ったことだろう。なんでも、当日はソプラノ歌手ばかりだったこともあって、敢えてこの歌を選曲したとか。それでも、中音部のアジリタなど、なかなか聞き応えがあった。

彼女、一月に渡伊、トリノでイタリアが誇る名花、バルバラ・フリットリの5日間のコースを受講し、一皮むけたようだ。今日の歌唱に進化の跡が窺がわれたように感じた。

田中由佳さん以外には3人しか聞くことが出来なかったが、いずれも立派な歌唱ぶりで、この団体のレベルの高さが窺がわれた。

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この小ホールの舞台には全員が乗り切れないほど。一番左側に当演奏会の企画・指導に当たられた主宰者、阪口直子さんがいるのだが、撮りそこなった。生憎、愚亭は知らなかったが、アルトの世界では、かなりご活躍されている方とか。この団体名も、彼女の発案らしい。実にいいネーミングである。Serenaには澄み切った、晴れ渡ったという意味があるからね。Liricaは詩・歌全般も意味するが、一般的にはオペラを指すことが多い。

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集合写真撮影のあと、ロビーに出て来てもらって、一枚撮らせていただいた。

#18