ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

オペラ・アンサンブルワークショップ 2017

170617 所属する地元合唱団で伴奏をしてくれている吉田貴至先生が主催する講座の、修了式が近くのホールであったので、覗いてきた。

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最近は、アリアだけでなくアンサンブルも楽しみたいという声楽愛好家が増えているらしく、そうした層に応えるべく開講したとか。今回は、2期生の修了発表会。

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講師陣も上記のごとくなかなか豪華な顔ぶれだ。助演の二人も、それなりの力量で、一緒に歌える受講生は幸せな気分が味わえたことだろう。

客席には、講師陣の中からバリトン大沼 徹、ソプラノの川越塔子の姿が見られた。大沼に至っては、プログラムにはないが、いきなりラフな格好のまま客席から舞台に駆け上がり、伯爵のアリア、Vedrò mentre io sospiro を歌い始め、何か得した気分になった。ついでだから、川越にも何か歌ってほしいと思ったが、それはいささかあつかましいか。

登場した受講生、皆さん、本格的なコスチュームを付けて、本当に楽しそうだ。中には、結構プロに近いような演唱で聴衆を魅了した人も何人か。

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左端、吉田先生。すぐ右隣は助演のお二人。

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挨拶する吉田先生。右端、暗いが、川越塔子大沼 徹の姿も。

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修了式。一応、賞状のようなものが交付されているようだ。左端が川越塔子、真ん中は大沼 徹

(文中一部敬称略)

「パトリオット・デイ」

170616 原題:PATRIOTS DAY 2016 米 133分 原案・脚本・監督:ピーター・バーグ 製作には、主演のマーク・ウォルバーグの名も。

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4年前のボストンマラソン、ゴール付近での爆破事件を扱った実録物。当時の映像もかなり含まれているが、爆破シーンの再現場面はド迫力!

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ボストン警察巡査部長、トミー(マーク・ウォルバーグ)が主役。事件発生から二人もの犯人確保まで100時間を超えるが、彼らの不眠不休の活躍ぶりに焦点が当てられている。

前日、別の事件で犯人のアジトらしき部屋を急襲、ドアを蹴破ったのはいいが、膝を痛めてしまう。簡単な手当だけで、翌日開催されるボストン・マラソンの出発・ゴール付近の警備につくが、膝痛で、歩行もままならない。そこで、妻のキャロルに電話して大型サポーターを持ってきてくれと頼む。

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届けに現場に駆けつけた妻、キャロル(ミシェル・モナハン)は、しばらくそのままゴール付近で観戦することに。間もなくとんでもない事件が起こることも知らず。事件発生までをほぼ実際の経過と同じ時間軸で、しかも犯人側、警察側の動きを並行して辿っていく手法は、最大限の緊張感を生む。

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事件発生後の現地警察とFBIの素早い動きが印象的だ。FBIのデローリエ特別捜査官(ケビン・ベーコン)も、きびきびと捜査の陣頭指揮にあたる。地元警察、FBI、州知事など、手際よく分担を決め、だだっ広いスペースを確保して捜査本部を立ち上げるが、周到かつ迅速な動きには目を見張る。三者三様の必死の覚悟のほどが窺がわれて、興味が尽きない。日本で、もし同種の事件発生が発生したら、どうだろうか。

爆破犯人が事件発生後短時間(実際には4日間)で解決を見たことは、当時の報道で日本でも知られていたが、犯人逮捕に至る過程で、これほど行き詰まるドラマが展開されていたことは、知られていないと思う。

現場付近の監視カメラを元に、犯人像割り出しに成功するも、どの時点で世間に公表するかについては、地元警察、FBIで大きく意見が分かれ、結局、テレビ局にリークされ報道されるという情報が。先手を打つような形で本部が犯人の映像を公開する。果たせるかな、それを見た犯人(中東系の兄弟)が動きだす。彼らは、爆薬のプロで、この後、ニューヨークでも爆破騒ぎを起こす計画があった。

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住宅街に逃げ込んだ犯人側との激しい銃撃戦に”参戦”しようと防弾チョッキを着用して向かうボストン郊外、ウォータータウン警察の巡査部長ジェフ(J.K. シモンズ)。

犯人のうち、兄は銃撃戦で死亡、弟は闇に乗じて住宅街に逃げ込み、警察を手こずらせるが、結局捕縛される。こうして事件の幕が降りる。

エンディングでは、爆破による犠牲者、警察の殉職者、犯人逮捕に功績のあった人物の実際の映像が紹介される。そして、ボストン市民が愛してやまないレッドソックスの開幕(?)試合のセレモニーで、伝説の強打者オーティーズが感動的なスピーチを行う場面が実写で紹介される。レッドソックスはその年、ワールドシリーズで優勝するという、ボストン子には願ってもない弔い合戦の大勝利となった。

#36 画像はIMDb、およびALLCINEMA on lineから

 

「人生タクシー」

170615 原題:TAXI 2015 イラン 88分 監督:ジャファル・パナヒ 

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この監督、イラン政府から現在も映画監督禁止令が出されたままとは知らなかった。そんな中でも、いろんな手法を試しながら、映画を作り続ける反骨魂がたまらない。本作は、監督自身がタクシードライバーになって、乗り込んでくる乗客や自分の姪たちを通して、生き生きと今のイランの姿を映し出している。

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乗り合わせたこの二人、車中で死刑制度について激論となる。お互いに職業を告げることになるが、女性は教師、男性は強盗と告げて(冗談だろうが)、降りていく。

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金魚鉢に二匹の金魚を入れて乗り込んできた老婆二人、この金魚をもらってきた泉に正午までに帰してあげないと、自分たちの命が絶えることになるから、急いで欲しいと。訳のわからないことを告げる相手にも、パナヒ監督、淡々と走らせる。結局、自分の姪を迎えにいく途中で時間がないからと、半ば強引に別のタクシーに乗り換えさせてしまう。

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散々待たされたらしい姪、すこぶる機嫌が悪い。まずはこうして叔父さんをじーっと睨みつける、がとっても可愛いのだ。小学校の高学年ぐらいだろうか、とにかくおしゃべりで、学校で起きたことや、友達のこと、そして自分が今はまっている映画のことを延々と喋り続ける。CANONのデジカメ動画でずーっと叔父さんを取り続けたりする。

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知り合いの弁護士を見つけ乗せてあげる。真っ赤なバラを抱いたこの女性、見るからに理知的で、しかも笑顔を絶やすことがない。この人も政府から活動を禁止されているという。

こうして様々な市井の人々を乗せたり降ろしたりしながら、テヘランでの一日が暮れようする。撮影はダッシュボード上あたりに固定した小型カメラで、時折監督がカメラの向きを調整したりする。

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しかし、監督が車から降りて、別の車に近づくこのような描写は、どのカメラで撮影したのだろうか、疑問が湧く。偶然乗り合わせたように見せているが、やはり全員俳優だそうで、あらかじめおおよそのプロットは用意していたようだ。ただ、姪との会話は、あまりにも自然であり、とても台詞を言っているようには見えないので、ほぼ台本なしのアドリブだと感じた。

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 車内に落ちていた財布は金魚鉢のおばあちゃんのものと分かり、まだいるかも知れないとくだんの泉へ確認に行く監督。幸いおばちゃん達がいたので、車に引き返し、スタンバイしている姪と一緒に泉へ降りていくところをカメラは捉えている。そして・・・しばらくすると怪しげな男がカメラに向かってきて・・・まさかの車泥棒!もちろんカメラはストップして、THE END. うまい、うまい!なかなか洒落た展開と終わり方だ。

ところで、現役時代に一度テヘランに行ったことがあるが、だだっ広く、猥雑な街という印象だった。本作で、ほとんどテヘラン市中を走り回るので、市内の様子が結構分かって、それも興味深い。それと、誰もが当たり前にスマホを使っているのはやや意外だった。監督のiPhoneの着メロが自分のものと同じなので、鳴るたびに自分のスマホ、切り忘れたかとドキッとさせられた。

#36 画像はALLCINEMA on lineから

オペラ・オードブルコンサート「月に寄せる歌」@日生劇場ロビー

170614 いわゆるロビー・コンサートで、秋に控える本公演の宣伝を兼ねた無料ミニ・コンサート。事前申し込み制。早めに行ったので、いい席で鑑賞できた。

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上記の他に、秋本悠希の独唱で、同じドボルジャークの「わが母の教えたまいし歌」、最後に再び「月に寄せる歌」を田崎尚美が歌ってお開き。

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偶然だろうが、歌手は全員芸大出身(秋本は博士課程在籍中)。しかも、田崎と新海は同級生というから驚き。(失礼ながら、新海の方がずーっと後輩と思い込んでいた)

田崎の歌唱は以前から聞いているが、ほぼソプラノ・ドランマーティコと呼んでいいほどの、太く大きな発声が特徴。一方、秋本は、容貌同様、きりっとしたスピントだろう。

驚異的なのは清水の野太いドバスで、東欧やロシア出身のバス歌手のようだ。そう言えばガタイも日本人離れしている。こういうバスに支えられながら歌うのは、多分気分いいと思う。新海のテノールも、以前から注目しているが、伸びのある高音域には定評がある。

秋の本番に行くかどうか、まだ決めていない。オードブルだけで終わっちゃうかも。

#25 (文中敬称略)

「スプリット」

170614 原題もSPLIT(分裂)2016 米 117分 製作・脚本・監督:ナイト・シャマラン('99「シックス・センス」、'00「アンブレイカブル」など)

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性格異常者(この場合は多重人格者)による人質誘拐・監禁を扱ったホラー映画。主人公ケビン(ジェームス・マカヴォイ)は、何せ23人、それも9歳児⬇︎から女性までの異なる人格を持つとされているから忙しいし、こんがらがる。

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自分の中で異なる人格同士の確執があったり、24人目となる”ビースト”まで目指している。幼少時、幼児虐待の経験あり。

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捕まる側は、パーティー帰りの女子高生3人、リーダー格のケイシーだけ幼少時、叔父から虐待の経験を持つところが犯人との共通点。これが結末の伏線になっている。

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ケビンは、正常な時に、フレッチャーという精神科の医師の診察を受けている。フレッチャーも多重人格に大きな関心を抱き、ずーっと彼をフォローし続けることが命取りTなる。

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銃片手に必死に逃げるケイシー、幼い時に父親に教わっていた銃の知識が役立つ。

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”ビースト”を手に入れた時は、ほとんど”超人ハルク”状態に変化、筋肉は盛り上がるし、血管は浮き上がり、壁や天井を這うという信じられない技を繰り出す。⬆︎はケーシーが逃げ込んだ檻をこじ開けようとするケビンだが、自分と同じ虐待経験を持つと知って、やり過ごすシーン。全体にジェームス・マカヴォイの怪演が見ものだ。

事件解決後、レストランで客がテレビニュースを見ているシーンに。そこである客が「以前、似たような事件があったよね?確か、あの時も犯人は妙な名前で呼ばれていたけど、だんだっけ?」と周囲に聞くと、近くの男が「ミスター・グラスだろ」と応じる。これがナイト・シャマランの「アンブレイカブル」に出てたブルース・ウィリス。ご丁寧にも胸にはその時の役名、Dunnの名前の縫い取りが。つまり本作は「アンブレイカブル」と同じ世界の中の話だったというわけか。

この種の人質監禁ものは、古くはテレンス・スタンプ主演の「コレクター」(The Collector '65)、同じくモーガン・フリーマンの「コレクター」(Kiss the Girls '97)、ハル・ベリー主演の「ザ・コール」(The Call '12), 最近では、邦画だが香川照之の「クリーピー 偽りの隣人」やブリー・ラーソンの「ルーム」(Room '15)など、見ているものだけでも、これだけある。それだけに、よほどの独自性を出さないと展開がほとんど読めてしまう。

#35 画像はIMDb、およびALLCINEMA on lineから