ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

三遊亭小遊三@大田文化の森

180705 久しぶりに落語を聞いた。

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日頃、「笑点」の大喜利でしか見ることのない三遊亭小遊三が近所のホールへ。東京都・警視庁・大田区による催し物、振込詐欺対策の集いがあり、小遊三聴きたさに会場へ。当然、高齢者で溢れかえっている。前半は主催者側が講じている対策についての説明と寸劇でいくつかの事例を紹介。後半は、客寄せの落語。まずは、小遊三の弟子で二つ目の遊里(大曲出身なので、当初は三遊亭小曲だったとか)、続いて真打の登場。

まくらに、大月に住む実姉がオレオレ詐欺に遭いそうになった話で散々笑わせておいてから、「置泥」でたっぷり。やはり期待通りで、小遊三の語り口や表情が、とにかくおかしい。

このところ足が遠のいている末廣亭浅草演芸ホールに行きたくなった。

「空飛ぶタイヤ」

180704 2009年にテレビドラマとして放映されたらしいが、見ていない。

運送会社の大型トラックが配送中、突如左側前輪が脱輪、宙を飛んだ巨大なタイヤが、たまたま息子と近くを歩いていて主婦を直撃し、主婦は即死。その事故の責任を負うのは運送会社なのか、以前にもリコール隠し事件を起こした製造元の自動車会社なのか!

巨大な財閥組織を相手に、敢然と立ち向かう若き運送会社社長の孤独な戦いと、巨大組織に潜む闇をドキュメントタッチで描く秀作。

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脚本もしっかりしていて、見応えはたっぷり!ただ、池井戸 潤の原作ゆえ、「下町ロケット」、「半沢直樹」、「陸王」がまぜこぜになったような、どこかで見たような場面ばかりで、彼の作品はもういいかなという印象で見終えた。

即ち、巨大企業vs.町工場、家族の支え、事故原因究明中に起こるトラブル、従業員同士の対立、どこまでも社長についていこうとする従業員グループ、トップ企業に内側に潜む組織防衛と自己保身、etc.

モデルになった自動車メーカーは、誰の目にも歴然で、どこまでがトゥルーストーリーだったのか、その辺の興味はつきない。

みんな芸達者だが、中でも岸部一徳笹野高史は抜きん出た巧さだ。主演の長瀬智也も結構な力演だった。

#54 画像はALLCINEMA on lineから

アプリコでスペインに浸る

180603

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うだる暑さの中、アプリコ大ホールへ。今日も熱中症を警戒して、いつもあるくところをバス移動に切り替えた。

7割ほどの入り。前から5列目の左セクション右端というお好みのポジション。だが、前にも経験があるが、ギター表面の照り返しが意外にきつくて、まぶしい思いを何度か。

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必ずしも馴染みのある曲目ばかりではなかったが、これぞスペインという雰囲気はたっぷり味わえた。アンコールはカタロニア民謡「鳥の歌」。(後のおやじが知っている旋律が出たので嬉しかったのか、ハミングするから、参った!(尤も、すぐ制したけどね。)ときどき、こういう不届きものが出るのは困ったものだ。

舞台後ろのスクリーンにスペインの名画を次々に映し出す趣向は悪くない。案内人の浦久俊彦が、部分的には解説するのだが、せっかくそこまでやるなら、できれば、映し出したすべての画家とタイトルぐらい出してくれればなお良かったのに、ちょっと残念。

アルハンブラの思い出」の演奏後、多少時間を使って出演者二人にインタビューが。このギタリスト、そのアルハンブラに行ったことがないと聞いて、少し驚いたが、その後、若いチェリストのお嬢さんが、アプリコホール、そう言えば、アルハンブラ宮殿のように感じます、とか言い始めて、「ハァッ?」

折角、案内人がアルハンブラ宮殿の話をしようと思っていた(と思われる)のに、アプリコ大ホールがいかに素晴らしいホールかという話にすり替わっていったのは、いささか・・・。

演奏自体、お二人とも、文句なしに素晴らしかった。

#37 (文中敬称略)

「男と女の観覧車」

180702 WONDER WHEEL 米 101分 原案・脚本・監督:ウディ・アレン

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今年83歳になるウディ・アレン、まだまだ若々しく、いまだに瑞々しい作品を創り続けていることに喝采!何だろうね、この若さの源は。そして今回の舞台が1950年代のコニー・アイランドというところにも、大いに興味を持った。やはり目の付け所が違う。

そんな非日常空間で繰り広げられる男女の愛憎劇と言ってしまえば、あまりに陳腐で、ウディさんには失礼かも。前の結婚でもうけた男女一人づつの、と言っても一人はまだ少年だが、連れ子がいる再婚夫婦、ハンプティ(ジム・ベルーシ)とジニー(ケイト・ウィンスレット、ケイトさん、まだ43歳だが老けた!「タイタニック」の面影まるでなし!)、ハンプティの娘、キャロライン(ジュノー・テンプル)と、この一家に絡んでくる、ライフガードのミッキー(ジャスティン・ティンバーレイク)が主要登場人物。

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コニーアイランド(ニューヨークのブルックリン地区の南端の半島で、遊園地として有名)で細々と生計を立てている一家。ハンプティは回転木馬の操縦係、ジニーは園内のレストランでウェイトレス、ハンプティは休日には仲間たちと釣りや野球観戦でそれなりに日々を楽しんでいる。

一方、ジニーは、火付けが面白くてたまらないという問題児を抱え、必死に生きる日々。クタクタになって戻る家は、大観覧車の真横で、階下は射的場だから、一晩中うるさく、まったくくつろげない。

そんなある日、ギャングと結婚して家を出て言ったハンプティの一人娘、キャロラインが行くあてがないと、この一家に転がり込んでくるから、大変!最初は、「すぐ帰れ!お前みたいな女がくるところじゃないんだよ。そもそもこっちは縁を切ったつもりなんだから。」と口汚く罵るが、見ているうちに情が募ってくるのをどうすることもできないハンプティ。

結局、今回初めて会った義母と同じところで、ウェイトレスとして働き始めるのだった。ここまでは、多少の感情のもつれはあっても、ほぼ平穏に過ぎて行くのだが、

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ころがりこんできたキャロラインは、ご覧のように、そこそこキュートでもあることから、状況は一気に複雑に、そして元夫のギャングが付近に現れることで、事態は急展開!

人物描写に長けたウディだが、主要人物に、と言っても、ミッキーとジニーだけだが、カメラ目線でながなが状況を説明させる手法は、どうなんだろうね。そもそも冒頭シーンは、ミッキーの独白で、コニーアイランドの紹介と自己紹介。ともあれ、意外な形で一家が崩壊していくのは、いささか後味がよろしくない。

バックに流れる音楽が、もう最高!出だしのミルス・ブラザーズが歌うConey Island Washboardから、やられっぱなし。場面に合わせて、うまくピックアップしている。自分が知っている曲だけでも、Harbor Lights, Kiss of Fire, Till I Waltz Again with You, Let Me Call You Sweetheart,  You Belong to Me, April Showers, Because of You, Red Roses for a Blue Lady, Roses of Picardyと、当時の録音でざっと10曲近くも歌われるのだから、こりゃたまらん。当時の情感をうまく醸し出していて、ここらへんもうまいよ、ウディさん。

ところで、前出のケイトさん、顔もだが、身体全体の雰囲気がとても40代には見えない。どうしちゃったのか。役作りで、こうしていると思いたい。ずっしり重たそうな肉置き(ししおき)が、露わになるシーンがなんどかあり、そっと目を背けた。ウディはケイトを「マッチポイント」(2005)で起用しようと思ってたが、急に気が変わってスカーレット・ヨハンソンにスィッチしたとか。

さて、コニーアイランドのこの大観覧車、つまり本作のタイトルにもなっているワンダーホイールは、1920年から稼働しているというから間もなく100年を迎えることに。ウディさんによれば、観覧車は、登場人物たちの行動や心情のメタファーとして使われたそうで、そこからの眺めは美しく、ロマンスの花も咲くが、ぐるぐる回っているだけで、究極的にはただ虚しさだけが残るといいたいのか。ちなみに、邦題、悪くない。

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ケイトさん、一応おめかしすれば、この通り。

#53 画像はIMDbから。

梅雨明けと第九

180701 スマホに送られてくるニュース速報を見て、そんなバカな!どうせまた後で「実は・・・」とやらかすかと、半信半疑の梅雨明け速報。その、朝から猛暑の中、いつもは歩いて行く蒲田も、ガーメントバッグ提げてとなるとさすがに躊躇われて、バスで移動。

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午後2時開演だが、区長挨拶やら岡田 愛によるモテット、"Exsultate, Jubilate"が冒頭に演奏されるし、合唱団が入場するのは第九の2楽章終了時ゆえ、両袖での待機時間は結構長くなる。ただ今回は170名ほどの大所帯だから、早め早めに動かないと、当日になって何かが起きらないとも限らないから。

アルトとバスは上手袖から入場。山台が8段も組んであり、結構全員勢揃いまで時間のかかること。揃ったところで、着席(と言っても、後ろの山台の手前の空間にちょこっと腰掛けるだけ。かなり不安定な姿勢で、じーっとしているのは案外しんどい。さらに3楽章は美しい旋律が随所にあるものの、ややもすると単調で居眠りが出そうになる。ここは我慢のしどころ。

自分の位置はほぼ中央で、ソリスト4人のうち、アルトの背中をまっすぐ見るポジション。今まで第九は8回歌っているが、今回がベストポジション!

やがてティンパニーの連打と共に、バリトン与那城 敬が立つのと同時に、合唱団全員がさっと(とは行かなかったようだ。高齢者が多いから、まっすぐ立てただけでもこの際、よしとしよう)立ち上がり、さあ、始まった。

与那城 敬の歌唱は見事という他にない。いろんなバリトン、あるいはバス歌手の出だしの名唱を聞いているが、お世辞抜きに今回ほどぞくっと来る歌唱はなかった。やがて呼応する男声合唱のフロイデ!しっかり巻いたRが聞こえる。

やがてソリスト4人が歌い始める。完璧なまでにお上手だ、素晴らしい。これを聞くだけでも第九合唱に参加する意味があると言っても過言ではない。どんどん快調に進んで最大の難所のダブルフーガも順調にすすみ最終部、プレスティッシモに差し掛かる。

不安のあった、急にテンポがゆるむトーホターアウスエリジウムも、まあぎりぎりセーフで、あとはコンミス吉原葉子(生まれも育ちも大田区沼部)のすぐ後ろに控える胃高齢男性ヴァイオリニストの”華麗なる”弓捌きをとくと鑑賞。本番は練習の時ほど、弾き終わった後、高々と上げた弓を、上空でくるりと回すことは敢えて避けたようだ。

終わった、終わった、やれやれ。オケから順にハケて、さらに両脇の女声陣がハケる頃には、会場を埋めていた(9割がたは入った印象だが)聴衆も退場して、がらんとなった中で、男声陣が出ていって、ハイ、今年の第九は歌い納め、かな(?)

正装のままでロビーへ出て来場者と記念撮影する光景はいつもの通り。事故もなくまあまあ、首尾よく行ったほうだろう。

その後、地下の会場でマエストロやソリストたちも参加しての打ち上げが1時間。プログラムにソリスト全員のサインをしてもらう団員、特に女性団員が多いのに驚く。

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バリトン与那城 敬を筆頭にソリスト、マエストロ、コンミス、舞台監督、(財)大田区文化振興協会の担当課長などが次々に登壇して、ご挨拶。みなさん慣れたもので、散々会場を沸かせる。彼は、歌唱も抜群、人柄もすばらしく、ご覧の通り長身イケメンを絵に描いたような存在だけに、特に女性陣から人気は絶大。

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登場前、楽屋で撮影されたらしい一枚。(フェイスブックからお借りしました)

(文中敬称略)