ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「アイーダ」@調布グリーンホール

181202 ここの市民オペラシリーズを観るのは「魔笛」、「トゥーランドット」に続いて3度目。

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市民の手作りでこれだけ盛り上げるのだから大したもの。

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初日の出来栄えも素晴らしかったらしいが、2日目も立派な舞台だった。

鈴木麻里子は9月のプッチーニ三部作でも見事な歌いっぷりと巧みな演技で大いに公演の成功に貢献していたが、このアイーダでも、見事な演唱で聴衆を魅了!なにせヴェルディ後期の代表作、それもタイトルロールだから、文字通りの大役であり、本番を迎えるまでの苦労も並大抵ではなかったことと思われる。

対するラダメスの上本訓久、輝かしい高音が持ち味のテノールであるが、エンジンがかかるのに多少時間がかかるタイプなのかも。「清きアイーダ」の出だしには若干不安を覚えたが、どんどん響きが良くなって行くのが分かって一安心。開幕直後にいきなり来るアリアだけに、大変なのはよく分かる。歌い終わって、ホッとしたのか、マエストロにウィンクしていたのが印象的。

脇役ではアムネリスの杣友恵子が、抜群の存在感を堂々と見せつけていた。歌唱もさることながら、王女のようなきらびやかなコスチュームを纏わせると、この人ほどぴったりする歌手はそうざらにはいないと思わせる。グランドオペラ向きのメッゾであることは間違いない。

アモナズロの大塚博章も期待通りの安定感、低音の響きも盤石。言うことなし。奴隷としてエジプトに連行されたエチオピア王なのだが、立派な衣装で、しかも帯剣姿というのは、細かいことを言えば、リアリティに欠けるのだが、ま、この際、どうでもいっか。

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このマエストロ、随分詳しい略歴で、これまでの多方面に亘る活躍ぶりは理解できるが、手腕はよく分からない。三浦安の演出は時としてかなりぶっとんだことをやるのだが、ここでは、かなりまともな演出ぶりで、やや意外。ただ、エジプトの砂漠の夜、アイーダがラダメスから作戦に関する秘密を聞き出す場面に、なぜか奴隷女を3人、傍に登場させてなにやら妖しげな動きをさせるのは、意図不明。

本オペラ・シリーズは、合唱団から派生して生まれたわけで、市民オペラにふさわしい成り立ちである。拝見するところ、高齢者がかなりの部分を占めているのは明白なれど、よく鍛え上げられた技を示せたと言えよう。合唱指導の谷 茂樹が、カーテンコールで、ど真ん中に位置することでも窺い知れる。

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市民オペラゆえに、当然低予算の中での上演と思われるが、舞台装置がよく出来ていて感心しきりだった。内部に階段をつけた三角形を縦横に組み合わせ、時にピラミッド、時に祭壇、時に牢獄と、実に巧みな使い分けていた。出演者たちは、内部の階段の上り下りがあり、歌いながらだと更にハードだったはず。

初っ端のアリア、「清きアイーダ」も上本が歌いながら上下していたが、きつい演出をつけたものである。

バンダを受け持ったのは桐朋学園大学音楽学部の学生たち。アイーダ・トランペットの演奏は素晴らしかった!

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合唱指揮者がプリマとマエストロに挟まれるとは、滅多にない絵柄である。

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楽屋裏へ駆けつけたところ、タイミングよくちょうど衣装、メイクのままでの集合撮影をしていて、ギリギリ便乗できたのは幸運だった。一番後ろのエジプト国王(山田大智)とランフィス(小幡淳一)は、二人とも、声は低いが、見上げるほどの偉丈夫。たまたまだろうけど、伝令(川出康平)がベストポジションに陣取っている。

#72 文中敬称略

音大フェス@ミューザ川崎

181201 毎年、初冬・晩春2回行われる音楽大学フェスティヴァル。音大在籍中のセミ・プロたちによる演奏を格安の値段で、聴かせてもらえるわけで、毎回楽しみにしている。

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この日だけは3校が出演、従って、3時開演で終演は6時半という長丁場。3校目の開演前で帰ってしまう聴衆も少なくなかった。演奏時間が計3時間半が想定外だったのは、自分も同様で、この後、田端での合唱練習に行く予定だったが、移動時間を考慮して、断念。コーラスフレンズの、「ワインでも一杯?」という甘言に釣られてしまって、気がつけば午前様という体たらく。

さて、まずは昭和音大斎藤一郎という若手マエストロだが、登場するや人目を引いたのは、長身イケメンぶり。日本人では、なかなかいないタイプだ。振り方も、風貌同様、かっこよく、胸をときめかせる女性プレイヤーもいるんじゃないかと、勝手に音楽と関係ないことを思ったりして聞いていた。

シエラザードは楽章の節目節目で哀調を帯びた旋律を首席が奏でるのが特徴的だが、全体にオリエンタル調で、いささか眠気を誘われるのは、想定内。ほんの一瞬だが、案の定、こっくりが出てしまった。それにしても、首席ヴィアオリニスの可愛いこと!ここは、弦の響き、管のまとまり、いずれも抜群。

次は国立。OBなのか指導者なのか、結構年配者が目立つ。冒頭、低く始まるクラリネットは2番が吹いたが、無難にこなした。トップも2番もそろって美形で、目を引く。第2楽章のホルンが吹く長いパッセージ、ほんの僅かに不安定箇所があったが、見事に吹き終わり、聴く方もホッとした。これも2番が吹くことになっているようだ。さすが現田茂夫、余裕の演奏でした。

アンカーは洗足学園、今や巨匠の域の秋山和慶、風貌そのものの端正な演奏!各楽器の演奏技術はここが一番かも。今日は計20人以上のコンバス奏者が登場しているが、初めてフランス式運弓の女性奏者を発見。いるにはいるが、圧倒的に少ない。ベラ・バルトークの音楽は、あまり好きになれない。

各大学の演奏前に、エール交換の意味で、別の大学の金管奏者が登場してファンファーレを演奏するのが、このシリーズの伝統的行事。新進の作曲科の学生の手になるものだが、どこも実にお上手。下手側からホルン3〜4本、トランペット3本、トロンボーン3本、チューバという構成。2番手に登場した洗足学園だけ楽譜持参だったが、作曲完成が遅れたのかも知れない。

#71

 

「ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ」

181129 SICARIO:DAY OF THE SOLDADO 米 122分 監督:ステーファノ・ソッリマ

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このアクの強い二人が組んでの続編。2015年の「ボーダーライン」にはエミリー・ブラントがFBI捜査官役で登場して花を添えたが、今回はこれに当たる役はなし。それもあってか、いまいち乗り切れない印象。ま、しかし続編にしては(と言うのも失礼なれど)なかなかよくできていて、監督はドゥニ・ヴィルヌーヴからイタリア人のステーファノ・ソッリマに替わっているが、まずまずの出来栄え。

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⬆︎ジョッシュ・ブローリン、相変わらず無愛想な役で登場。顔のデカさと脚の短さはかなり異色で、白人離れしている。

前作同様、政府の密命を帯びるCIA捜査官マット(ジョシュ・ブローリン)が、秘密兵器、麻薬カルテルに家族を奪われてリベンジに燃える元検察官、アレハンドロ(ベニシア・デル・トーロ)を力を借りて、組織の壊滅を狙う筋書き。

第3作ありきの終わり方で、そこがやはりストンと胸に落ちない感が強い。大悪党の娘のその後は第3作を見よと言わんばかりで、モヤモヤ。

今回も、撮影技術や音響の素晴らしさは前作を引き継いでいて、なかなか見事!空撮も多様していて、手に汗握る場面、すこぶる多し。男性向け作品。

カンサスシティーのスーパーでの自爆テロの犯人が、当初疑われた中東人でなく、マットがソマリアまで出向いて調査した結果、アメリカ人と判明するくだりや、いくら密命を帯びているとは言え、メキシコの正規の警察を相手に大暴れしてしまうこの特殊部隊の無法者ぶりが、なんとも我々日本人には理解不能

#82 画像はIMDbから

「ウィーン万国博覧会 産業の世紀の幕開け」@たばこと塩の博物館(墨田区)

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以前から気になっていた「たばこと塩の博物館」へ。

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最寄りの西馬込から乗り換えなしで本所吾妻橋下車、徒歩8分。びっくりするほどスカイツリーが間近に見える。周辺はがらんとした倉庫街のイメージで、そこに堂々たる構えの建物が。

1978年、渋谷公園通りにJTが設立したちょっと珍しいこの博物館、3年半前にこちらに移転。真新しく広々した空間を贅沢に利用している。

ちょうど標記の展覧会開催中で、これが見たくてはるばる墨田区横川まで足を運んだ次第。

日本が初めて万博と関わったのは、1862年。折から開催されていたロンドン万博に文久遣欧使節団(別名竹内遣欧使節)が見学したことが最初であり、出展したのは、それから5年後、1867年第2回パリ万博であるが、当時の政情を反映したかのごとく、幕府、薩摩藩鍋島藩がそれぞれ出展するという、国際的には理解されにくい事態であった。

正式に国として出展したのが、更に6年後のこのウィーン万博(1873)というわけだ。それだけに、政府としてもえらい力の入れ具合で、事前に各県から特産物を出させて、調査研究、選別などに相当な時間と労力を注いだらしい。それらがよく分かる展示となっていて、まことに興味深い。

細々した美術工芸品も、当時の西欧人を瞠目させるに十分だったが、さらに「目玉」として、大きくて一目を引くもの、名古屋城金のしゃちほこや特大の提灯なども展示されたようだ。

会場はウィーン近郊のプラーター地区で、日本館の他に日本庭園もそのためにわざわざ造営された。戦争やら不況などで、当初見込んでいた2,000万人のほぼ1/3の700万人ほどしか来場せず、開催国としては大赤字となったらしい。

だが、日本にとっては、この国際舞台への初参加が契機となり、その後の殖産事業に大いに貢献した模様。

さて、常設館の方だが、2階には塩の展示。とりわけ岩塩についての展示に面白いものが多かった。なかでもポーランドヴィエリチカの地下大空間での様子が動画で見られたり、岩塩を彫ったマリア像の実物大レプリカが展示されてたりで、大いに興味を惹く。

さらに3階にはタバコ(含む、パイプ、シガー)の歴史、各国のパイプやタバコ関連グッズが所狭しと陳列されている。一見の価値は十分!

「ボヘミアン・ラプソディー」

181126 BOHEMIAN RHAPSODY 英米 135分 監督:ブライアン・シンガー

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伝説の人気ロックバンドを、ヴォーカリストフレディー・マーキュリーを中心に描いた伝記映画的作品。後半のウェンブリー・スタジアムでの1986/7/13 LIVE AIDの21分に及ぶ演奏シーンは圧巻!カメラワークも冴え渡って、臨場感抜群。

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実寸サイズの特設セットで撮影されたらしいが、この雰囲気には圧倒され、涙腺がゆるむ。私事ながら、この時、この会場に比較的近いところに我が一家は生息していたのだが、この歴史的瞬間に立ち会う機会を逸したのは痛恨の極み。

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フレディー・マーキュリーを演じたのは出っ歯の義歯を付けたエジプト系アメリカ人のラミ・マレック、徹底的にフレディーの癖、動き方、表情などの特訓を受け、最終的には完璧なフレディーを演じることができたようだ。歌声は口パク。

冒頭、例の20世紀フォックスのサーチライトで奏でられる有名なメロディーを、実際にはクイーンのメンバーが弾いている。

#81 画像はIMDbから