ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

初めて「オ・シャンゼリゼ」(神楽坂)へ

190318 店名から一見してシャンソン小屋と知れる小さな、まさしく”小屋”。地下1階に降り、入口を入るとそこは、バーコーナーで、6人ほどは座れそうだ。奥は一段低くなっていて、15人も入ればいっぱいとなるスペース。舞台には、ピアノが鎮座。歌手は手前の平土間で歌い演じる。手を伸ばせば届きそうな距離感がとってもよい。こんなところにオペラ歌手が登場。普段はもちろんシャンソン主体の演目を組んでいて、時折箱貸しもということのようだ。

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んで、今宵はこのお二人。工藤志州は昨年の「ラ・トラヴィアータ」で”共演”(?)して以来、何度か舞台を拝見しているが、もちろんこの種の会場での演奏会は初めてのことで、興味津々。大音声のオペラ歌手ともなれば、狭いスペースではそれこそ”耳をつんざく”ようなことにもなりかねないのだが、もちろん当人はそんなことは先刻承知の助、うまいこと調整して聴かせてくれた。2ステージ、7時開演、9時終演、途中20分ほど休憩時間。飲み物が一杯ついて@¥4,500はコスパ高し。

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客席はぐるりとコの字型に配置。15人でいっぱいかな。

 

今回取り上げた演目は下記の通り、まことに多彩(演奏順)

花の街江間章子團伊玖磨、戦後間もない1949年、NHK「私の本棚」のテーマ曲として使われ、我々世代には大変懐かしい)

さくら横ちょう中田喜直の名曲、これが結構難しい、特に終演部が)

あわて床屋(白秋・耕筰コンビ、1923年。今回は岩河智子アレンジで)

ラ・クンパルシータピアノ演奏アルゼンチンタンゴの名作。仮装行列を意味するイタリア語LA COMPARSAからスペイン語に転じ、縮小語尾が付いたもの)

LASCIA CH’IO PIANGAヘンデルのオペラ「リナルド」から。以前は「私を泣かせてください」という訳だったが、これだと元のニュアンスが異なるため、最近「涙の流れるままに」の表記が徐々に増えつつある)

IO SONO L'UMILE ANCELLA DEL GENIO CREATOR(チレア作曲「アドリアーナ・ルクブルール」から1幕でいきなりこの有名なアリアが登場する。「私はつつましい創造主のしもべです」)

愛の讃歌 (ピアフの代表作)

 

休憩に入る前に工藤お手製の歌詞カードを見ながら 全員で「花」を歌う。パソコンで打ち出さず肉筆であることが好評。(この人、オペラ界屈指の達筆だからねぇ!)

 

AVE MARIA (珍しいサン・サーンスの作品)

YOU RAISE ME UPCELTIC WOMANの歌唱でヒット、「あなたのおかげで元気に」)

熊蜂の飛行ピアノ演奏リムスキー・コルサコフの名曲だが、バンブルブギーというジャズ風アレンジでおしゃれに演奏)

COME PRIMA(「以前のように、いやそれ以上に君を愛そう」という意味の、トニー・ダララのヒット曲。1958年、サンレモ音楽祭での優勝曲)

熱き口づけレハールの「ジュディッタ」から)

ヴィリアの歌(「メリー・ウィドウ」から)

最後にアンコールとして、皆で「見上げてごらん夜の星を」でオヒラキ。

ああ、楽しかった!

 

#14 文中敬称略

 

 

「こうもり」@たましんRISURUホール(立川)

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青栁素晴出演というので、我が家からは結構な距離にあるこのホール。以前は確かアミュー立川という名前で、その時代に数度行ったことがある。最寄駅は西国立なので、あえてのんびりと南武線を利用した。

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両組とも充実したキャスティング

開演15分ほど前に自席へ。ほどなく1200席もあるホールがほぼ満員になったから驚いた。地元の行政、協賛企業が相当力を入れている恒例のシリーズだからだろう。これだけ入れば、遠日側も一段と熱がこもるのは当然。

オケの響きもいいし、合唱団もかなり手慣れた演唱という印象を受ける。独唱陣に目を向けるとお目当の青栁素晴は、今回も堂々とした、というより過去散々演じて来ただけの風格を感じさせる歌唱と演技。コミカルな演技も受けること!何度か床に思いっきり転倒するシーンがあり、意外に身のこなしが柔らかいのだ。

ロザリンデの鳥海仁子、初めて拝見・拝聴するが、見栄えも歌も素晴らしい。きっちりとした振る舞いはすばらしい。フランクの大川 博、歌もさることながら、かなりひょうきんな演技が笑わせる。青栁と組むことが多い(同じ国立の先輩・後輩)。いろんなギャグや寸劇を入れて、一人でかなり笑いを取っていた。

オフロフスキーの鳥木弥生は、もはや日本のメゾでの地位を不動のものにしている、いわば大物。たっぱもあるし、この役にはぴったり。アルフレード吉田 連、幕が上がるとすぐ登場し、歌うのだが、かろやかに発声できる高音域の響きがこの歌手の「売り」だろう。

アデーレの佐々木麻子も自分には初めてだが、声質的にはぴったしだ。雰囲気的にはイマイチから。もっとやかましく、はなやいでもよかったような気がしたが。

台本も地元客狙いが見え見えだったが、このくらい笑わせてちょうどいいのが「こうもり」。だいたい日本の観客は大人しく見過ぎる傾向があるから、じゃんじゃんふざけて欲しい。その点、松山いくおがやったフロッシュは成功だろう。

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FBからお借りした画像です。

#13 文中敬称略

久しぶりの文楽

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毎年、この時期に近くのホールで上演される人形浄瑠璃、愚亭は数度目だが、歌舞伎には詳しいカミさんが実は初めてとは、それこそ初めて知った。

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この演目、実は以前から見たかったのだが、なかなかチャンスがなかった。そのわけは、自分の血筋に、この演目に登場する吉野の鮨屋に婿入りした人物が存在することだ。

以下は数年前にいとこ筋にあたる人物が編纂した我が家の家系図からの抜粋である。

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中央、青い部分に記載がある。

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少々見づらいが、事の詳細はこの通り。

というわけで、今日は実に興味津々でこの上演を見ることになった。それにしても、歌舞伎に比べると黒子の存在がどうしても気にならないわけがなく、なかなか感情移入に時間を要したが、慣れてくると、人形だけが生き生きと動いて見えるから凄い。

それと義太夫と三味線!4組が登場するが、義太夫はいずれもどっしりとした体幹の持ち主で、身をよじらせくねらせ、大音声の熱演ぶりに圧倒されっぱなしであった。耳だけでは到底追いきれないので、片側に字幕が出る仕掛けは大いに助かる。

西洋音楽と違い、譜面もなく合わせる三味線がまた大した技術!!こうした貴重な伝統文化は絶やさず、後世にいっそう盛り上げて行って欲しいとつくづく思った次第。平日の午後であるから無理もないのだが、場内は高齢者ばかり。主催の公益財団法人 文化振興協会には喝采を送りたい。

METライビビューイング「カルメン」

190314 このシリーズのことは、前回の「アドリアーナ・ルクブルール」で触れたので、今回は省略。

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今回のタイムテーブルとスタッフ・キャスト一覧

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35歳のフランス人、クレモンティーヌ・マルゲーヌのことは聞いたことすらなかった。体幹がどっしりとして、しかもご覧のように妖艶さもある。それになにより、声がカルメンにぴったりの、やや重めのメゾである。

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酒場「リリァス・パスティア」で踊りながらジプシーソングを歌う場面、これは相当ハードだろう。よほど横隔膜をしっかり保持しておかないと歌えない。その後、営倉から出されたドン・ホセが現れ、彼のために歌う場面、本来ならカスタネットを鳴らして歌うことが多いが、カスタネットはオケピットから小さく聞こえるのみ。割に珍しい演出である。

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現在55歳のロベルト・アラーニャ、両親はシチリア出身だが、彼はパリ生まれ

明るく伸びのある歌声はこの人の持ち味。パリのキャバレーで歌っていて、のちにほぼ独学でここまで登りつめたのは大したもの。ルーマニア人のアンジェラ・ゲオルギューとは結局別れ、現在はポーランド人のアレクサンドラ・クルジャック(35歳、今回のミカエラ役)と一緒になっている。

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3幕への間奏曲でのバレエシーン。これがまた見応えタップリで、さすがメトである。

原作も作曲もフランス人の作品ゆえか、マエストロ、カルメン、ドン・ホセいずれもフランス人だったのは、偶然ではないだろう。

エスカミリオのアレクサンダー・ヴィノグラドフはロシア人。細身だが、声は太くはないがよく響くし、粘着質とでも言えるタイプ。そこそこ見栄えもいいから、案外人気者になるかも知れない。幕間のインタビューでも、どことなく垢抜けしており、明るく愛想もいいのでロシア人という感じがしない。

今回の幕間インタビューアーは、アイリーン・ペレス(Ailyn Pérez)、メキシコ系アメリカ人。2011年、日本公演の「ラ・トラヴィアータ」で国際舞台にデビュー。

#13 画像はMETライブビューイングのHPから。

ヴェルディのレクイエム、本番を無事終演!

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半年近くに亘って練習に励んできた通称ヴェルレク、ついに本番の日を迎えた。

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午後2時開演で、10時半前に会場であるかつしかシンフォニーヒルズにスタンバイ。

舞台上で簡単な声出しとゲネプロを、慌ただしくそれぞれお昼を済ませ、いよいよ本番。舞台裏へ整列。最後列から順に左右に分かれて舞台上へ。ソリスト陣も最後に登場、マエストロ、いつもより多少神妙な表情で指揮台へ。

さんざん微調整を繰り返した立ち位置だが、残念ながら、マエストロの姿は半分しか見えない。もはやどうにもならないから、このまま歌い続けるのみ。

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前から4列目だが、前の列が入場するまえに撮影された一枚。

荘厳、静寂のうちに低くはじまる前奏があって、男声からゆっくりささやくように♪Requiem♩と入る。あとは怒涛の80分。終楽部も静かに消え入るように。もっと華々しく終わるかと思っている人が結構多いが、余韻をたっぷり残し、マエストロが静かに前を向いて、初めて嵐のような喝采が巻き起こるという段取り。この曲は絶対勇み足禁止だ。

合唱部分も60分はあったろうか、第九の正味12分、復活の8分に比べれば、どれだけ長いかということだ。長さだけでなく、メリスマや臨時記号の多さもはんぱなく、アマチュア泣かせ。これをアマチュア合唱団でも暗譜で上演することがあるが、自分には真似のできない芸当である。尤もYouTubeなどで海外の演奏会など見ると、譜持ちの方が圧倒的に多いけどね。ただ、暗譜だと指揮棒をしっかり見ていられるという利点が大きい。

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エストロ安藤には、ほんとうにお世話になった。この方、オケ、合唱の指導はもとより、事務方もほとんどすべて自分でこなしてしまうという才人!人当たりもいいし、好かれる要素、満載。いろんな方に指導してもらったが、抜群の指導力

ソリスト陣、バランスよく揃えてあり、後ろから聞いていて、失礼ながらさすがプロと感心する場面、少なからず。初顔合せ時とは異なり、きちんと本番にポジションを合わせられる力量には驚かされる。

カーテンコールほか一連のセレモニーも滞りなく終了、ロビーで知り合いの来場者と写真撮ったりして、帰路に着いた。

今年は、今月初めの「復活」、そしてこのヴェルレク、6月に再び「復活」、7月は日声協の「カルメン」、暮に地元合唱団の定期演奏会が控えており、充実の1年になりそうだ。こうした活動ができるのも後3年と踏んでいるのだが。