ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ガーンジー島の読書会の秘密」

190903 THE GUERNSEY LITERARY AND POTATEO PEEL PIE SOCIETY 英仏合作 124分、原作:メアリーアン・シェイファー、監督:マイク・ニューウェル

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1946年、大戦後間もないロンドンと英仏海峡に浮かぶガーンジー島が舞台。ヒロインは若い女流作家ジュリエット(リリー・ジェームス)。たまたま読者の一人から届いた手紙で、本作タイトルとなっている妙な名前の読書会の存在を知り、それを題材にした文章を書こうと思い立ち、島を訪れる。

気楽に仲間入りを考えていたのだが、その会の成り立ちにはある深刻な秘密が隠されていて、実は自分があまり歓迎されにくい雰囲気を感じるジュリエットだったが、秘密を知るうちに島を立ち去りがたい思いに駆られていく。

それは最初のとっかりとなった手紙をくれた人物、ドーシー(キール・ハースマン)と、謎の失踪を遂げた、そして読書会の発案者でもあるエリザベス(ジェシカ・ブラウン・フィンドレイ)が残した幼い娘の存在であった。

アメリカ人の婚約者が待ちきれずに島に彼女を迎えに来て、一旦はロンドンに戻り、普段の作家生活に戻ろうとするが、どうしても気になる思いが湧いてくる自分をどうすることも出来ず、婚約者との関係もぎくしゃくしたものに変化していく。この辺りは、想定内というか、まあよくあるパターンでのハッピーエンド、意外性はまったくない。

それより、ガーンジー島が戦時中、ドイツ軍が進駐していたとは知らなかったし、読書会の成り立ちも、その後の”秘密”に、これが大いに関係している。

大人気海外ドラマだった「ダウントン・アビー」に出演していが俳優が4人も出演していたことも大いに興味を惹かれた。特にダウントンでは早々と死んでしまった次女役を演じたジェシカ・ブラウン・フィンドレイを見られたのは収穫。ここでも悲劇的な役を演じている。

原題が長いが後段のPotato Peel Pieとは文字通り戦時下の食糧難で工夫されたジャガイモの皮だけでできたパイのことで、相当まずかったようである。ジュリエットが味見をするがあまりの不味さに慌ててジンをがぶ飲みするシーンがこれ。

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リリー・ジェームスは美貌ではないが、愛嬌のある顔立ちと雰囲気の持ち主で、誰からも好かれそうな印象。

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意外にも脚が体育会系である。

同じくダウントン・アビーに出ていたマシュー・グッド出版界の人物としてジュリエットを親身に世話する役を好演している。

ガーンジー島ジャージー島と共に英仏海峡に浮かぶ島だが、ご覧のように限りなくフランスに近い。その昔、ジャージー島には行ったことがあるが、当然ながら、フランス語もよく通じるし、文化的にも影響が大きい。本作でもGood nightに対してボン・ニュイなどと答えるシーンが出てくる。

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以下、ウィキペディアからの抜粋。

イギリス王室属領であり、イギリス女王をその君主としているが、連合王国には含まれない。そのため、内政に関してイギリス議会の支配を受けず、独自の議会と政府を持ち、海外領土植民地と異なり高度の自治権を有している。 欧州連合にも加盟していない。したがって、イギリスの法律や税制、欧州連合の共通政策は適用されない。 ただし、外交及び国防に関してはイギリス政府に委任している。したがって、主権国家ではない。

#52 画像はIMDbから

「トゥーランドット」@新宿文化センター

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今回も両組に聴きたい歌手がいるため、迷ったが、2日目の公演にした。

これは新宿区民オペラが主催して、オケと合唱団はこの名前が付いたアマチュアである。先日「仮面舞踏会」を聞いた荒川区民オペラ同様、実に立派な公演であり、しかも入場料が廉価であることがオペラファンにはたまらない魅力である。

 

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今日は左セクション右端2列目と、まあいつものポジションで楽しんだ。

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こんなにデカデカとあるのに、これまで気づかなかったパイプオルガン。今日は、ずらりと銅鑼が並んでいて、パーカッショニストはこちらを向いて座っている。


タイトルロールの福田祥子は初めて聞かせてもらった。実に堂々たるトゥーランドット姫を演じられた。見栄えもよければ声もまことに立派で言うことなし。ただ、この役、実は割に損な役回りとも言える。2幕3幕で高音域をたっぷりと歌う割には、単独で演奏されるようなアリアがないのだ。

そこへ行くと、奴隷女リューは対照的に得な役回り。1幕と3幕に実に美しい、プッチーニらしいアリアが用意されている。今日は、応援している西本真子が情感込めてたっぷりと響かせてくれて大々満足!

カラフの安東英市も初めて聴くことになったが、評判はあちこちで聞いていた。評判通り、ダイナミックにカラフを歌っていたが、肝心のネスドル、舞台のやや下がった位置で歌ったため、声がよく届かず、幾分不発感は否めない。この劇場、もう少し響がよかったはずなのだが、今日はかなり前方で歌わないと、オケに負けてよく通らない場面がしばしば。なぜこういうことになっているんだろう。先日聞いたサンパール荒川の方がはるかに響いていたような気がする。

ピン・ポン・パンも結構頑張っていて、楽しめた。更に、オケの響きがすばらしかったこと、それと合唱団、歌も演技も区民レベルでそこまでやるか、という感じで、大ブラーヴィであった。

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西本真子(リュー)

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右端、マエストロ時任、よほど快演だったようで、終始ニコニコ。

#58 文中敬称略

二人で喜寿祝い

190828 たまたま8月生まれ同士の大学の親しいクラスメートと、麻布十番のイタリアンで喜寿祝い。アペリティーヴォは彼の介護付き高級マンションの部屋で済ませたので、赤ワインを1本取った。

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普段は滅多に口に入ることのない銘酒。ほんのに渋みのある深い味わいを堪能。

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アミューズとしてこんな派手なものが。

アミューズはまあ、お楽しみ、ということで、お通しか付き出しと思えばいい。これはフランス語だが、イタリア語にはこれに当たる言葉がない。antipastoになると前菜だし。ソムリエ同様、イタリア語にない言葉がフレンチには時折登場する。文字通り目を楽しませてくれるもので、食べられるのは、小さなホタテ一つ。Cappesante(Coquille st. Jacques)

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これが前菜。かんぱちのカルパッチョ、水茄子とガスパチョ。涼しげだ。

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トリュッフの薄切りをまぶしたスパゲッティ。これは絶品!

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主菜は子羊のロースト。夜空を思わせるプレートに半月状に盛られて登場。

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秋の風情を感じさせるデザート。(名前、説明してくれたが、忘れた!)

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食後酒にはグラッパを選んだ。

エスプレッソの後には、グラッパがベストチョイス。

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至福の2時間

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 ちなみにここの内野シェフは2014年、イタリア料理コンコルソ優勝者。

「シークレット・スーパースター」

190828 SECRET SUPERSTAR インド 製作・出演:アーミル・カーン、監督:アドヴェイト・チャンダン 主演:ザイラー・ワシム

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インド地方都市で、驚異の歌唱力を持つ少女が、スターダムを駆け上がって行く話。

トンデモ親父ゆえ、学業一筋にと歌うことを禁じられたインシア、一計を案じ、ブルカに身を包み、自らの歌唱を動画サイトにアップすると一気に話題沸騰。

母親が真珠のネックレスを売ってインシアに買い与えたパソコンで何とか売り込む方法を探るが、それを知った父親からパソコンを捨ててこい言われ、泣く泣く4階の窓から投げ捨てるのだった。

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夢を断たれたかに見えたインシアだが、彼女に想いを寄せるクラスメートに助けられ、非常識な行動に打って出る。絶大な人気を誇りながら今は落ち目の音楽プロデューサーの力を借りようというのだ。

一種のシンデレラストーリーだが、笑いの要素たっぷりで、最後はお涙ちょうだい、さらにさらにエンドクレジットが流れ始めてから、最後の最後にまた笑わそうというサービス精神に溢れかえった、やかましくも哀しいインド映画。

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このアーミル・カーンの濃い顔と演技で散々笑される。大した役者だ!163cmしかないらしいが、スクリーンでは大きく見える。これまでも様々な役作りに没頭するタイプとか。

言語はヒンディー語がメインだが1割程度、英語が入る。会話の中でも頻繁に英語が聞こえるが、これがインドの日常会話なのだろう。

インシア一家は中流階級という設定のようだが、ベッドがなく居間の床に薄い布団を敷いて寝起きしている光景は意外である。そして男尊女卑の描かれ方も、ホンマかいなと思うほど強烈で、父親は絶対君主としてDVなどごく当たり前、それを必死で耐える妻役の女優が美貌だけに、見てるのが辛くなる。

そして父親の暴言・暴行を目の当たりにするインシアは父母を離婚させようと必死になるが母親から、「いいのよ、これで」と諭され、諦めるしかない。終盤、父親のサウジへの転勤が決まり、一家で空港に向かうが、チェックインカウンターで大揉めとなり、びっくりの展開へ。

夫婦間で延々と押し問答が続くが後ろに並ぶ搭乗客が誰も文句も言わず、また航空会社職員も何の手も打たないのがかなり奇妙に映るが、まあそれはどうでもいいことなんだろう、この際。

#51 画像はIMDbから

オペラ・オードブル・コンサート@日生劇場フォアイエ

190828 メイン・ディッシュである本公演に先駆けて、さわりを聞かせて宣伝する当企画も9回目。半分以上は出ていると思う。中にはオードブルだけでメインを食べずにすますことも。今回はきちんと11/9の本公演もすでにチケット入手済み。

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粟国 淳の解説は手慣れたもので、うまく手短にまとめていた。(彼の父親、安彦はオペラ歌手で、1969年からローマのサンタチェチリア音楽院に学んだが、その時代に何故かお会いしている。淳はローマ育ち。イタリア語の固有名詞の発音がまさにイタリア人)

砂川涼子、相変わらず巧者だ。真横から間近に見ていて、口の開け方が最高音近くに達すると、がくんと変わるのにがよく分かる。いわゆるギアチェンジだろう。

昨日東京音コンで聞いたばかりの工藤和真、ベテランの砂川涼子の相手役ということで、緊張気味。昨日の舞台より緊張していた様子。無難に歌い終えてホッとした表情。粟国から振られて、「29歳です」と答えた瞬間の砂川の、ちょっと複雑な表情が面白かった。

アンコールは工藤のRecondita Armonia。

#57 文中敬称略