ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

山田武彦の「歌でめぐる世界の旅」@大田区民プラザ小ホール

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見えにくくて、すみません!

フレッシュ感漂う4人の女性歌手によるコンサート。Vol.7というから、これまで何度かやっているシリーズで、他の回では男性陣も加わり、ほぼ固定メンバーで構成されているようだ。今回は女声のみだが、次回(5/15)は、逆に男性メンバーがメインで女性は一人という構成。

愚亭には初めてだったメゾの石田 滉(これでキララと読ませるから驚きである。ご本人はKilaraと、敢えてエルとアールを充てている。クララ・シューマンを意識したとご本人)が驚きの演唱だった。細身でまだどことなく少女っぽいのだが、そこから出て来る声は太くふくよかなのだ。また楽しみな逸材が一人。

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石田滉(キララ)と。

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なんと来週から1年間、ハンガリー留学予定の宮地江奈。

ピアノ・進行役は名手、山田武彦!自在な編曲ときらびやかなサウンドで、毎回魅了されるが、歌手たちも彼の伴奏だとマジックにかかったように歌いやすいらしい。

冒頭、ブラジルタンバリンを片手で鳴らしながら、山田が軽快に弾き始めたのが「トロイカ」、石田のソロパートの低音部の迫力にはのっけから驚かされる。

イタリア映画「イル・ポスティーノ」主題歌、MI MANCHERAI宮地江奈が巧みに歌い上げ、ブラーヴァの嵐!

今日唯一の本格オペラ・セーリア「椿姫」から”ああ、そはかの人か”〜”花から花へ”を中村良枝が最後の音、お約束通り(?)Esをしっかり出して、派手な喝采を浴びた。

「ルサルカ」からの”月に寄せる歌”は大音絵莉チェコ語でしっとり、じっくりと聴かせてくれ、大満足!

最後は、皆で山田武彦作曲の「チョコレートをたべたさかな」をいかにも楽しげにユーモラスに歌ってくれて幕。

終演後は、出演者たちがその場に残って、客の相手をしてくれたのはありがたい主催者側の配慮。

#7 文中敬称略

 

「はじめのいっぽ」喜歌劇「こうもり」からの抜粋演奏会@大田区民プラザ大ホール

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昨年の7月末から稽古を続けて、ついに本番を迎えた。合唱団員としてのオペラ出演は一昨年の「椿姫」以来、2度目となったが、喜歌劇ということで、めまぐるしいほど舞台狭しと動かされ、フリを覚えると歌唱がおろそかになり、歌唱に集中すると動きを忘れるという繰り返し。せっかく演出家の先生が高齢者向けに動きをあまり伴わない演出を考えてくれたのにと思うと少々なさけない気持ちである。

正味1時間を切る演奏会を千円で提供したこともあり、同ホールのキャパ506席が完売となったのはまことに喜ばしい。やはり一流のソリスト4人のブランド力によるものでもあるのは疑いないところ。一緒に稽古していて、プロの技を目の当たりにし、今更ながら、いろいろ勉強にも、励みにもなった。

今回は全体プロジェクトの第1弾であり、来年後半にフルオケ付きによる全幕通し公演で完結する。先は長いが、第1幕に乗ったからには、なんとしてもその場には居合わせたいともっている。もちろん、客席でなく、アプリコ大ホールの舞台で。

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冒頭部分。高い山台なので、それだけでも緊張する。

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二人だけのG(爺?)組、唯一の出番。

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晴れがましいカーテンコール!

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華やかな女性出演者のコスチュームの影に地味な男性陣が見え隠れ。

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前日撮影したスタッフ・キャスト勢揃いの場面

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男性陣は助演2名を含めてこの14名。17歳から85歳までと年齢幅がすごい!


終演後、ホール2階のロビーで来場者と面会、写真撮影などでごった返した。その後、解団式が小ホールで小一時間ほど。さらに下丸子駅近くの中華料理店の2階を貸し切っての二次会で、さらに盛り上がった。ソリスト全員、プロデューサー、演出家にも参加いただき、彼らとの交歓がまた滅法楽しかった。これでやっと終わったが、案の定、すでに「こうもり」ロス状態。

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解団式で挨拶するソリストたち。

 

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とことん盛り上がった二次会会場

 

フォードvsフェラーリ

200130 Ford v Ferrari 米 153分 監督:ジェームス・マンゴールド

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単なるカーレースの話かと思うと、さにあらず。かなり奥行きの深い作品であることが分かってくる。タイトルにあるように、それまでのカーレースでは絶対王者であるフェラーリにフォードがあの手この手で立ち向かい、ついに完膚なきまでにフェラーリを叩きのめしたところで映画は終わる。

興味を引かれたのは、家内工業フェラーリに対し、巨大組織フォードの組織内の描き方で、三代目CEOであるヘンリー・フォード2世に取り入ろうとするが、ことの本質が見えない、見ようとしない幹部たちvs.現場人間たちで、日本でもよく見る対立構図である。現場のトップは、伝説のレーサーからカーデザイナーに転じたキャロル・シェルビー(マット・デイモン)であり、彼の陣頭指揮の下、実際に車を動かすレーサーの中心は天才的な発想と行動で奇人扱いされる英人レーサー、ケン・マイルズ(クリスチャン・ベイル)。ベイルの英国訛りの英語が面白く、「おい、ちゃんとイングリッシュでしゃべれよ!」と米国人に毒づかれる場面あり。ちなみに、奥さん役のカトリーナ・バルフ(Caitriona Balfe)アイリッシュ

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この二人の共演も本作の見どころの一つ。

ハリウッドを代表する二人の関係が巧みに描かれていて、笑い、かつウルウルくる場面、少なからず。ベイルは、この作品のためにまたまた凄い減量をしたようだ。その前に撮った「バイス」では、ディック・チェイニーを演じるため、相当増量していただけに、半端ない痩せ方。20kgぐらいの増量、減量を繰り返すのは絶対に身体に悪いから、彼のファンでなくても今後の健康具合が気になるところ。

ところで、カーレース作品と言えば、中学に上がったばかりで見た「ジョニイ・ダーク」('54)を筆頭に、三船敏郎のハリウッドデビューとなった「グラン・プリ」('67)、スティーブ・マックイーンが実際に運転した「栄光のル・マン」('71)、そして割と最近の、大事故に遭ったニキ・ラウダジェームス・ハントの友情を描いた「ラッシュ/プライドと友情」(2013)など、話題作はかなり見ている方だが、撮影や音響技術の圧倒的な向上によりレース・シーンの出来が素晴らしく、この作品も映画館で見ないと魅力半減だろう。

#3 画像はIMBdから

「パラサイト 半地下の家族」

200128 PARASITE 韓 132分 脚本・監督:ポン・ジュノ

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これは、もうかなりの面白さ!カンヌ映画祭パルム・ドール賞を取ったというのもむべなるかな。いかにもフランス人が好みそうな作品。

ソウルの超高級住宅に住む、絵に描いたような富豪一家と、対照的に半地下の住まいでその日暮らしの極貧一家とが、いかなる事情・経緯から接点を持ち、その過程が奇想天外かつ痛快なだけに、結果の悲惨さの対比の妙!それでいて、後味は決して悪くない、ある種、爽快感さえ漂う世界を巧みに描いた佳作。

身分を偽って、娘の家庭教師、息子の絵画療法士、主人専属の運転手、そして家政婦に一人づつ富豪一家に入り込む極貧一家、見破られるきっかけの一つとなるのが体臭という設定が面白い。いくらうわべだけそれらしくしていても、長年身にしみた体臭だけは隠せないということらしい。

終盤で、未曾有の豪雨により半地下は水没、一家が避難生活を送る体育館の様子が、毎度日本で見る避難所生活とまったく同じであるのには、笑えぬ衝撃を受けた。

また中盤、突如'60年代にヒットしたカンツォーネジャンニ・モランディの「貴方にひざまづいて」(IN GINOCCHIO DA TE)が流れたのにはびっくりした。ポン監督はその世代ではないだけに。

 

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これが冒頭シーン。半地下の家の様子がわかる。

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便器がこの高さにある不思議な空間!

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母親は元ハンマー投げの選手だったという設定が愉快。

#2 画像はIMDbから

VENTI 鈴木江美ソプラノリサイタル

200125

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VENTIはイタリア語の20。つまり歌手生活20周年のこと。

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鈴木江美を初めて聞いたのは・・・思い出せない。しかし、十数年前から、あちこちで。そう、彼女はオペラ本公演よりソロコンサート、ドゥオコンサートで聞く機会が圧倒的に多い。つまり小規模の演奏会ゆえ、座席が50~60程度のミニホールが舞台となるから、今思えば、随分あちこちのホールに行った。

ハリのある輝かしい高音を持つソプラノで、チャーミングな容姿と明るく飾らない人柄で、老若男女を問わずファンは少なくない。

何年か前に結婚、出産、香港移住など大きな生活環境の変化を経験している。今回は久々の演奏会。愚亭も何年かぶりに聞いた。それだけの変化があれば、当然声にも微妙に反映される。一言で言えば、以前より重みのある声、まるみのある声か。

今日は、お友達のソプラノ歌手、高山美帆(武蔵野音大出身)に「リゴレット」からの「慕わしい御名」を歌わせたり、はとこに当たる芸大1年生、小笠原義為勇(これで”よしちさ”と読む)に軽めの歌曲を歌わせるなど、これまでとは少し異なるスタイル。自身はアンコール、「ルサルカ」から「月に寄せる歌」と、「ラ・ボエーム」からO, MIO BABBINO CAROで締めくくった。

ファンが列をなしていたため、残念ながら、話をするチャンスを逸したのが悔やまれる。

#5 文中敬称略