ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「イル・トロヴァトーレ」METライブ・ビューイング

120926  東劇 約3時間。

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2010-2011のシリーズ。

指揮:マルコ・アルミリアート 演出:デイヴィッド・マクヴィカー

出演:マルセロ・アルヴァレス、ディミトリ・ホヴォロストフスキー、ソンドラ・ラドヴァノフスキー、ドローラ・ザジック

上映時間:2時間59分(休憩1回) MET上演日:2011年4月30日

私の最も好きなオペラ。日本での公演はほとんどないので、久しぶりに見た。すっごい配役で、3時間の長丁場、たっぷり楽しめた。もともと素晴らしいアリアが次々に出て来る、珍しい演目だから、飽きる場面がまったくないのだ。

このオペラは主演4人の力量が揃わない限り、公演不能であるから、日本で、日本人だけでは成り立たないのは、よく分かるし、ちょっと残念ではある。

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4人ともほんとに素晴らしいのだが、中でもレオノーラ役のソンドラ・ラドヴァノスフキーにはたまげた。姓からすると、東欧系と思ったのだがシカゴ生まれのアメリカ人。ソプラノ・ドランマティコというのは、滅多にいないと思うが、彼女がそれに属するのかどうか、素人には判断が難しい。でも、低音域も豊かに出るし、高音に行くにつれ輝きを増す声質はスピント以上であると思う。イネス役のメゾが澄んだ声質なので、第一幕で二人の重唱を聞いていると、どっちがソプラノだか、分からなくなる。

アズチェーナのドローラ・ザジックもまた凄まじかった。この人も東欧系だろう。やはりアメリカ人だ。嘗てパリで何度も見たこのオペラ、アズチェーナ役ではフィオレンツァ・コッソットがベストだったが、ザジックは彼女に勝るとも劣らない。特に低音の響きはゾクっと来るものがある。終幕部でのマンリーコとの二重唱「あの山に帰ろう」は聞き応えがあった。

マルセロ・アルヴァーレスは一度ロドロフォで聞いたことがあるが、身体もデカいが声もデカいテノールという程度の印象しかなかったが、このマンリーコは素晴らしかった。DI QUELLA PIRAも勿論、メトを揺るがすような大喝采を受けたが、強弱を巧みに使い分けたSUBLIME AMORに続くAH SI BEN MIOは絶品、溜め息ものだった。

ホヴォロフストフスキー(何ともはや書き辛い、発音しづらい名前ではないか。昔は確かホロフストフスキーと書かれたように思うが、ま、どっちにしても難しい名前だ)は、今更だが、巧い。一番の聞かせどころ、IL BALEN DEL SUO SORRISO、勿論良かったのだが、昔聞いたバステァイニーニの歌唱に比べると、やや平板の印象を免れなかった。

主役の4人、いずれも大男、大女で、4人合わせて軽〜く500kg越えで、かのIL DEVUも真っ青というところか。

演出もよかったが、第3幕で兵士のたむろしている中に、どこからともなくジプシー風の女たちが登場し、兵士たちと絡むシーンは、ちょっと首を傾げたくなった。余り意味がないなと。

装置はさすがメトである。重厚感たっぷりで、回り舞台で裏表があるだけだが、この使い分けが絶妙。演技する方も随分楽だったと思う。幕間で、美術担当者が背景の一部の修復を丹念にやっており、遠目だから、大したことではないように思えたのだが、こだわり方が尋常でないのも印象的だった。

蛇足ながら、隣席のおっさん(ま、私より6歳上だから正真正銘のお爺さんだが)、三島から上京して、東劇に駆けつけたとか。折角だからと東京に2泊。宿泊する以上は出来るだけ見ようと、この日は午前の「カルメン」、午後のこの作品、そして夜は「ドン・カルロ」の3本見るというから、仰天。聞けば医者をしていた父親も本格的ペラゴロ(初めて聞いた言葉だが、オペラばっかり聞いて終日家でごろごろしている者の意味とか)で、物心ついた時からオペラ三昧だったようだ。世の中には実に凄い人もいるもの。

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