ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「希望の国」

121118 109シネマズ川崎 脚本・監督:園 子温 

最近の「冷たい熱帯魚」、「ヒミズ」、「恋の罪」などで、猟奇殺人事件やどこか常軌を逸した事件を扱って、人間深層心理を鋭くえぐるような作品を世に問うていた園 子温監督だが、本作は一転、原発事故により崩壊していきつつも、かすかな希望にすがろうとする家族を扱う社会派ドラマ。

f:id:grappatei:20121119101308j:plain

福島第一原発事故をベースにしてはいるが、物語は架空の町で近未来に起こる設定。巨大地震で近くの原発が事故を起こし、立ち退きを迫られる二世代家族。身ごもっている嫁を心配し、一刻も早くここから逃げろと諭す父に逡巡し続ける孝行息子。認知症の母親のことも気がかりなのだ。

f:id:grappatei:20121119102242j:plain

行政の必死の説得も空しく、頑として立ち退きに首を縦に振らない父親には既に覚悟が。途中で、展開がある程度予想できるが、かなり想像を越える壮絶な終わり方で、終映後、声も出ない。ラスト近く、メラメラ燃える木(上の写真にある)が印象的である。

逃げた息子夫婦、はてさて安全な場所は見つかるのだろうか。ということで、ここで初めて「希望の国」というタイトルが出る仕掛け。

ほとんど被災地でロケを敢行したらしい。実際に、牛やヤギが道路を徘徊するシーンは胸をしめつけられる。とりわけ原発関係者、政治家、官僚に見て欲しい作品。

伊勢谷友介、大鶴義丹、また園作品には常連の吹越満なども出ていたらしいのだが、防護服を着ていたらしく、クレジットが流れて初めて彼らも出演していたことを知った次第。

主役の夏八木 勲、大谷直子の演技が光った。

#78