ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「北のカナリアたち」

121120 TOHOシネマズ川崎 そもそも見るつもりがなかったのが、時間調整と消去法で本作を見ることに。ぜんぜん期待してなかったが、結構面白かった。

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これはまさに小百合映画。ま、覚悟はしていたが、周囲が彼女に気を遣い過ぎている雰囲気ありあり。なんで彼女だけ聖女のように扱うのか。彼女だけ若作りのため、せっかく時の経過を越えてフラッシュバックする場面が分かりにくくなっている。メイクだって、もう少し、リアリティのあるものにしないとダメだ。

稚内近くにある離島の分校に、父親(里見浩太朗)がそこの町長を務めている関係で、赴任した主人公ハル(吉永小百合)、ある事情で教師をやめ、その後図書館勤務などで独り定年を迎えたところから物語が始まる。

あとはゆっくり温泉めぐりでもと思っていたところへ、教え子の一人が殺人事件を起こしたと尋ねてきた警官に告げられ、訝しく思いながらも、その離島を久しぶりに訪ねてみようと思い立つ。

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分校の6人の幼子と過ごす時間、まるで「二十四の瞳」を思わせるような設定。しかし、ある事件が起きて、様相はまったく異なることに。ミステリー仕立てで、現在の教え子を一人ずつ尋ねながら、亭主の死を巻き込んだ当時の事件の真相が薄皮をはぐように次第に明らかになる。この辺りの展開は見事だ。

しかし、途中で、分校時代に、ある若い地元警官とハルとの情事が挟まるが、まことに唐突で、なかなか事情が飲み込めない。もう少し丁寧に描くか、寧ろいっそこの挿入話はなくても良かったような気がする。

名の知れた俳優を贅沢に配して、小百合だけをもり立てるような撮り方にはまったく共感できない。せっかく感動的なラストがあり、全体としてよく出来た作品だけに、残念。

それにしても、木村大作剱岳 点の記が撮る島の風景が実にきれいだ。でも、川井郁子の音楽は大げさ過ぎて、まったくいただけない。

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