ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ライフ・オブ・パイ」

130128  109シネマズ川崎 原題もLIFE OF PI  台湾出身のアン・リー監督、「ブロークバックマウンテン」で一躍その名を世界に轟かせたが、やるもんだね。この作品、やはり映像の凄さに尽きるだろう。

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インドでは比較的上流階級の一家が、それまでの動物園経営に見切りをつけ、更には息子達の将来を考え、カナダに移住することに。日本の貨物船に乗り込み、大海原に乗り出したのはよいが、大暴風雨に遭遇。次男のパイ一人が生き残る。

ただ、救命ボートの相客には、ベンガル虎も。これで半年以上も漂流するのだが、他の相客、シマウマ、オランウータン、ハイエナはさっさと虎の餌食に。当然、次はパイの番であるが、彼は動物園育ちであり、しかも子供の頃から宗教に対する関心がハンパでなく、キリスト教、ヒンズー教、仏教のどれにも帰依したいと言い出すほど。

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ということで、虎とパイの壮絶な戦いを通じながらも、漂流を共闘するという仲間意識も徐々に芽生え始めるという具合。これだけでは見せ場には乏しいことになるから、途中、いろいろ仕掛けをしている。

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一例は夜、気づくと一面発光クラゲだらけで、幻想的な青白い海原に変容、そこへ突如シロナガスクジラが巨体を空中に踊らせたり⬆、空腹に堪え兼ねている二人(?)を目がけて無数のトビウオが飛んで来るなど、このあたり、CG効果が最大限発揮される。

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更にやっと島に漂着したら、そこはミアキャットだらけの無人の島、どころか人間も餌食にする人食い島であることに気付き、急ぎ虎と共にそこを離れるのだが、もうその時点で二人はすっかり仲間になっちゃっている。遠ざかってみると、その島の形はヴィシュヌ神が横たわる形と言う風で、宗教上の隠喩が見え隠れしたりして、この辺り、やや抹香臭い感じもする。

結局メキシコに命からがら漂着し、相方の虎は茂みに消えて行くのだが、別れを惜しむ風でもないことに、パイは大きな失望を感じる。

やがて、日本の海難専門の保険会社担当者が聞き取り調査を実施。当然、パイの話を信じる筈もない。と、ここで、何を思ったか、パイはまったく別のストーリーを彼らに聞かせるのだった。はてさて、本当のところは・・・?

今回、3D, IMAXで観たので、その迫力は尋常ではなかった。大昔、パリで、初めてリュミエール兄弟が撮影した機関車を見て、慌てた観客は外に逃げ出したそうだが、あれからざっと120年、映画もとうとうここまで来たのか、という感慨。

トーキー、カラー、シネマスコープ、55mm、そして「タイタニック」のCGに驚き、「アヴァター」の3Dにたまげる。

しかし、もうこの先に技術的には何も残されていない、行き着くところ迄行ったという印象だ。そんな映画技術の集大成的な感じも持ったこの作品、来月のアカデミーでは、何部門、取るのかな。

因に、虎のシーンは8割がCGだが、残りは本物の虎を使って撮影したと。冒頭、動物園で、パイと一対一で出会うシーンは勿論だが、ボートから海へ落ちて泳ぐシーンもそうらしい。虎があんなに泳ぎが上手いとは知らなんだ。

船のコックという、まさにちょい役で、あのジェラール・ドゥパルデューが登場するが、その心は?

パイを演じるスラジ・シャルマという青年、ずぶの素人と言うから驚く。選んだアン・リーを褒めるべきだろう。

日本の船(船名はヘブライ語だが)という設定だから、ボートに載せられている救急用品使用法はすべて日本語表記。ただ、英語併記だから、パイは十分対応可能。

パイの本名はピシーヌ。若き日にパリに住んだことのある父親が何を思ったか、16区のモリトールにあったプールの名前をつけちまった。迷惑千万で、これが土地の言葉ではトイレのことというのだから、パイには気の毒,この上ない。んで、彼は自分の名前は円周率πを意味するパイにすると宣言したわけだ。

因にこのパリのプール、今でもあるが使用されていない。写真で見ると、日本のプールと違って、装飾的でなかなか豪華なシロモノ。

#4 画像はALLCINEMA on lineから。