ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「塀の中のジュリアス・シーザー」

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130131 銀座テアトル・シネマ 原題:CESARE DEVE MORIRE(シーザーは死ぬべきだ)イタリア映画。 

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現在二人とも80歳を越えるタヴィアーニ兄弟の会心作。

まさか刑務所で演じられる芝居とは到底思えない。種明かしをしなければ、普通の舞台劇と思えてしまう。囚人たち(それも重犯罪人ばかり)、つまり素人だけでシェイクスピア劇をかくも堂々と演じるとは!

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舞台はここ⬆。ローマ近郊のレビッビア(REBIBBIA)刑務所である。ここで毎年演劇実習が行われていることに目をつけたタヴィアーニ兄弟が、舞台監督ファヴィオ・カヴァッリに話を持ちかけてコラボに成功。

冒頭、舞台のラストシーンがあり、熱狂的なスタンディング・オヴェーションの後、それぞれの独房に何事もなかったように収容される「俳優」たちと、刑務所の正面玄関から出て行く観衆の群れ。

そこで、モノクロ画面に変わり、カヴァッリが囚人を集めて、その年の演目を告げると、いつにないざわめきが。出演希望者を募り、さっそくオーディション開始となる。

ここが一つの見せ場で、二つの異なるシチュエーションで演技をさせる。家族に別れを告げて、言わば悲しみに沈んで自分の姓名、生年月日、誕生地など個人情報を告げるケースと、怒りを込めて告げるケース。それぞれに方言で台詞を言わせる企画も面白い。

イタリア人というのは、黒人が抜群にリズム感に優れているように、生まれながらの演劇人ではないかと疑いたくなるほど、全員が圧倒的な演技を見せる。

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刑務所内の劇場が改修中なので、⬆あちこちで稽古が始まる。独房内でもおのおのがひたすら台詞を覚える姿が見られる。

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こうして本番を迎える囚人たち。ここからカラーに戻り冒頭のシーンへと続く。

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終演後、歓喜の渦。その時の観衆と一緒に、われわれ映画鑑賞者も同じようにいい知れぬ感動を覚える。

#6 画像はIMdbとALLCINEMA on lineから