ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

BALLO IN MASCHERA @東京文化会館

130210 日本の歌劇団によるこんな素晴らしいオペラ公演は滅多に見られないと思ったのが、見終わった実感。

f:id:grappatei:20130211102403j:plain

何と豪華で洗練された舞台だろう。それにきらびやかで本物志向のコスチューム、細心で大胆な照明、etc.  幕が開いた瞬間、息を呑むほど美しい舞台がそこにあった。角度や,照明の当たり具合、明暗、計算され尽くした舞台作りに成功していると思う。

幕が上がった瞬間、西洋活人画を見ているような錯覚に捉われた。どっかで観たことがあるな、と思ったら、レンブラントの「夜警」だった。他の幕も、なにやら泰西の名画という風情。

二幕目,ボストン郊外の荒れ地のシーンも、中央に廃船の骨格と先端部分の骨格だけの大きな人形がシルエットから、徐々にぼんやりした光を得て、一層不気味さが加わるという趣向の素晴らしさ。

三幕目第3場の、目も眩むような空間が。伯爵家の大広間の見事な天井画をバックに配しての盛り上げ方の巧みさには驚嘆あるのみ。

こんな素晴らしい舞台で演じるソリスト陣が、また大した競演を繰り広げてくれた。村上敏明は、最早押しも押されもしない日本を代表する国際歌手、低音部分に迄凄みを増して、言うことなし。レナートの堀内康雄は今更付け加えることはない。アメリア、野田ヒロ子、とりわけ高音部のピアニッシモの美しさはどうだろう。ウルリカの森山京子も持ち味を出しているが、この役はもっと荒々しく演じてくれてもよかったように感じた。オスカル、大森智子、この役をよく研究していると感じた。

これに円熟の粟国演出、緻密な演奏の東フィルと、抜群の上手さを誇る藤原合唱団とくれば、大成功公演にならない訳がない。

IL TROVATOREほどでないにしろ、この歌劇も素晴らしいアリアが次々に登場し、飽きることがない。中でもレナートが3幕1場で歌う「お前こそ心を汚すもの」は絶品である。

#6