ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「貴婦人と一角獣」展@国立新美術館

130527 The Lady and the Unicorn(La Dame à la licorne)@Musée de Cluny, Paris

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数年前に、現地で見ているタペスリー(一般的には日本ではタペストリーと英語からの訳語を使うが本展では、仏語式)なので、迷ったが、行ってよかった。パリで見た時は大した事前知識もないままに、漫然と見ていたことが今回、図らずも判明した次第。これほど見事な作品群であったとは、今更ながらの驚きである。

ここの学芸員たちの努力の賜物と思うが、懇切丁寧な解説やら、NHKプロモーションが制作した高精細画面によるデジタルシアターでの紹介など、到底現地では味わえない付加価値の高い内容で、存分に堪能でき、まことに幸いだった。現地クリュニーでの展示は⬆のように、ただ並べて展示されているだけでまことに素っ気ないものだから、余程、こうしたアートに通暁した人でないと真価は理解できないかも知れない。

ウィキによればパリで下絵が描かれ、15世紀末(1484年から1500年頃)のフランドルで織られたものとみられている。背景は千花模様(ミル・フルール、複雑な花や植物が一面にあしらわれた模様)が描かれ、赤い地に草花やウサギ・鳥などの小動物が一面に広がって小宇宙を形作っており、ミル・フルールによるタペストリーの代表的な作例となっている。

タペストリーの中に描かれた旗や、ユニコーンや獅子が身に着けている盾には、フランス王シャルル7世の宮廷の有力者だったジャン・ル・ヴィスト(Jean Le Viste)の紋章(三つの三日月)があり、彼がこのタペストリーを作らせた人物ではないかと見られている。ジャン・ル・ヴィストがリヨン出身であり、獅子の「lion」はリヨン「Lyon」から、一角獣は、足が速いためフランス語で「viste」(すばやい)とル・ヴィスト(Le Viste)の一致によるものと言われている。

このタペストリーは1841年、歴史記念物監督官で小説家でもあったプロスペル・メリメが現在のクルーズ県にあるブーサック城(Château de Boussac)で発見した。タペストリーは保存状態が悪く傷んでいたが、小説家ジョルジュ・サンドが作中でこのタペストリーを賛美したことで世の関心を集めることとなった。1882年、この連作はクリュニー美術館(中世美術館)⬇に移され、現在に至っている。

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触覚、嗅覚、聴覚、視覚、そして第6感とも言える「我が唯一の望み」の5面をかなり間近に見られるように展示されているのも有り難い。タペスリーの織り目までがくっきり見ることが出来るほど、照明も工夫されている。

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⬆触覚

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⬆味覚

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⬆嗅覚

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⬆聴覚

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⬆視覚

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⬆「我が唯一の望み」天幕の上にMON SEUL DESIRと書かれている。

サイトによれば、この展覧会の見所は以下のようにしている。

1.中世ヨーロッパ美術の最高傑作《貴婦人と一角獣》が6面すべて出品されます。
2.《貴婦人と一角獣》が表わすものとは? 五感を超えた謎に迫ります。
3.全長22メートル! 迫力の6連作です。
4.人々を魅了してやまない伝説の動物・一角獣が描かれています。
5.フランスの至宝が、奇跡の初来日を果たします。
6.全出品作品が日本初公開です。

たまたまクリュニーの中世美術館が全面修復中ということで、かなりの期間にわたって日本に貸し出されると言う幸運に恵まれたわけで、これまで、一度だけ1974年にニューヨークのメトロポリタン美術館に貸し出されただけという、まさに門外不出のお宝というわけだ。だから、この機会を逃すと、パリまで行かないと見られないのですよ。