ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「インポッシブル」

130622 TOHOシネマズシャンテ 114分 原題:THE IMPOSSIBLE(あり得ないこと)西・米合作だが、スタッフは監督J.A.バヨナを始めほとんどスペイン人、キャストはほとんどが英米という、面白い組み合わせだ。撮影は、一部は現地、タイのカオラック(プケットの北、凡そ100kmのリゾート)で、ほとんどはスペイン。友人在住のアリカンテでも撮影した模様。

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実話に基づく作品。日本在住のスペイン人一家がクリスマス休暇でカオラックへ出かけ、そこで2004/12/26のスマトラ沖大地震と津波に遭遇。奇跡的に、病院で再会を果たし、無事、母国に帰るまでをまとめたもの。

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津波関連映画は、韓国映画「海雲台」(日本ではTSUNAMI)(2009)、そしてやはりスマトラ沖大地震による大津波に遭遇するシーンが凄かったクリント・イーストウッドの「ヒア アフター」(2010)を見ているが、スケールといい、リアリティーといい、この作品はそれらを遥かに超越している。

 

ホテルのプールで泳ぐ子供達、プールサイドでくつろぐ夫婦、一瞬轟音と共に、海辺のヤシの大木がバリバリと音を立ててなぎ倒され、やがて彼らも狂奔する水の中へ引きずり込まれる。周辺のあらゆるものを巻き込んだ濁流に抗うことは出来ない。これで生き残れるのは奇跡でしかない。

 

画面では、一瞬音が途絶え、その後、もの凄い水流、ものが激しくぶつかる音が超リアルに再現される。気絶したマリア(ナオミ・ワッツ)もなす術無く手足が弛緩し、仰向けのまま、濁流に身を任せるのみ。気づくと水面に押し上げられ、大きく息を吸って正気を取り戻す。助かった!でも、まだ先は長い。流木やら電信柱やら車などが凄い勢いで流れているので、これらにぶつかる度に全身に怪我を負い続けるからたまらない。

 

このシーンが10分ほどだた、えらく長く続くように感じたし、どうしても日本人は3.11を画面に重ねてしまう。あの時はこんなトリピカルな場所ではなく、降雪時で更に悲惨な光景だったろう。

 

この後、奇跡的に長男と流されながら互いに無事を確認し、地元民に助けられ、病院へ搬送される。マリアが下肢に深手を負っていて、一刻も早い手術が必要という状況。長男のルーカスは、さすがに元気な子供だけあって、傷も大したことはなく、母親の言いつけで他人の救助に回るほどだ。

 

てなことで、夫のヘンリーと次男、三男も無事で、マリアの手術も終わり、保険会社差し回しの特別機で、母国へと。タイトル通り、あり得ないことが起きたわけだ。冒頭の飛行機でカオラックに着陸する機内でもチューリッヒ保険のパンフレットがチラッと見えたが、病院へこの保険会社のスタッフが駆けつけ、チューリッヒとデカデカと胴体に描いた機材が登場するに至って、こりゃ保険会社のCMでは、と一瞬思ったほど。ちょっとやり過ぎじゃないのかねぇ、これは。

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あり得ないほど悲惨な目に遭いながらも、最後までめげずにがんばって再会を果たす家族、そしてそれを通して子供達が目に見えてたくましく成長していく姿が大いなる感動を呼ぶ。どんな時でも他人を思いやることを母親から教わったルーカス、幼い三男サイモンを励まし続けることで別人のようになった次男トーマス・・・、機上の人となったマリアの涙が、彼ら一家の万感の思いを伝えるのだった。

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ナオミ・ワッツは私の好きな女優の一人だが、こういうカタストロフィー作品に向いている。こういう役はピッタリ。ニコール・キッドマンや、キャメロン・ディアスでは無理。どこか影のあるような表情だからかな。でも、この演技は大変だったろうと思う。いくらCGを使っているとは言え、実際に濁流に押し流されて撮影されたのは事実だろうから。

 

#45 画像はALLCINEMA on line