ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「母の身終い」フランス映画祭

130624 原題:QUELQUES HEURES DE PRINTEMPS (春の数時間)108分 [監]ステファーヌ・ブリゼ [出]エレーヌ・ヴァンサンヴァンサン・ランドン(尻取りみたいだが、通常ヴァンサンは姓より名)エレーヌさんは現在69歳、ヴァンサン・ランドンの方は1959年生まれの54歳で、母子関係としては、接近し過ぎなれど、エレーヌさんが、結構おばあさん顔なので、見ていて全く違和感なし。

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邦題でテーマがはっきりしているが、今はやりの親子問題、老いの問題、安楽死尊厳死に非ず)などを取り上げた、至極まじめな作品。当方も似たような年代ゆえ、結構ひきこまれてしまった。

麻薬不法所持で10年以上の刑期を終えた、元長距離ドライバー、アランは、行く当てもなく独り住まいの母の元へ。ハローワークに通えど当然まともな仕事はなし。やむなくゴミ処理場でゴミの選別作業員になってはみたものの、長続きせず、居候の身に。

そんな情けない息子に、嫌みを言い続ける綺麗好きのエレーヌ、とうとう息子と激しい言い争いに。飛び出たものの行く先も金もないアラン、結局親しい隣人ラルエットの家へ。これがまた見るからに面倒見のいいオッサン。

喧嘩別れしたものの、やはり寂しさつのるエレーヌ婆さん、飼い犬にちょっとした仕掛けをして、うまいこと息子を呼び戻す。この辺りはなかなかしたたかだ。でも、実は脳腫瘍が悪化するばかりで、余命いくばくもないのだ。

んで、結局、安楽死協会に登録、いよいよそれを実行するため、息子と安楽死が認められているスイスへと死出の旅、とまぁ結構辛い話なのだ。

それにしても、このドラ息子、てめえのことは棚に上げ、実母に向かってあらん限りの罵詈雑言には、見ている我々も思わず腹立たしくなるほど。こんな野郎だから、せっかくボウリング場で知り合って、即、親しくなっちゃったクレメンス(エマニュエル・セニェが相変わらず艶かしい)とも、すぐ破綻。ザマーミロってか。

安楽死協会が用意したスイスの終末ハウスと言っても、住宅街にあるごく普通の民家で、連絡を受けて待っていた係官のおばはんが「いらっしゃいませ、どうぞこちらへ」と愛想はいいが、すこぶる事務的。用意した薬を渡すと「では、さようなら!あと15分ほどですから、お二人でお過ごしください!」って、そんなぁ~。あっけないほどあっけらかんである。

こういう終わり方も、意識がはっきりしているうちに苦しまず、眠るようにしてあの世にいけるなら案外ありかも。現在オランダも安楽死は合法。行ってみる?

終映後、監督と主演のエレーヌさんが加わってトークショーが行われた。

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ガラケーで撮影。後方に陣取っていたから、この程度にしか。エレーヌさんが意外に若いのに、皆一様に驚いた様子だったのが印象的。

#47 画像及び動画は仏映画祭公式サイトから