ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「スタンリーのお弁当箱」

130725 シネスイッチ銀座 原題:STANLEY'S TIFFIN BOX(TIFFINはインドの英語で昼食のこと)インド [製・脚・監・出] アモール・グプテ

インド映画には、いわゆる歌って踊ってのボリウッドの他に、やや地味ながら、心温まる人間ドラマという流れもあり、本作はまさに後者の典型だろう。

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舞台はムンバイ近くの地方都市にあるカトリック系の学校で、主人公は、そこに通うスタンリー。幼少時に良心を交通事故に失い、今は飲食店を経営するあこぎな叔父のところに住んでいるが、学校から帰れば厨房で動物のようにこきつかわれている。映画は、この種明かしを最後にもってくるから、何故スタンリーが弁当を持って来れないのか、その理由が分からないまま進行していく。

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このスタンリー、頭の回転が早く、誰よりも創造的で、しかも明るいからクラスの人気者だが、弁当は持って来れない。水道水で空腹を紛らわせるそんなスタンリーを見かねて、クラス中で弁当をシェアすることに。

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ところが、ヒンディー語の先生が、昼になると彼らにたかりにくるようになると、事態は一変、大の大人が、それも先生がやることではないが、弁当のないスタンリーを咎め、弁当を持って来れない奴は学校へ来る資格がない、と彼を追放してしまう。

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んで、スタンリーのクラスメートはどうしたか!なかなか面白くも感動的な展開が待っている。

 

⬆ほんとにどの子も愛らしく、賢こそうだ。因に、この映画の撮影は、子供達にはほとんど映画製作であることを伝えず、小型カメラで撮影したらしい。子供達は演技でなく、自由にそのまま行動しているから、見事に自然な動きや表情が活写されている。しかも、学校の授業には一切影響を与えることなく、わざわざ土曜日に集めてワークショップということにして、一年がかりで撮影されたと。

 

インド式の弁当というのは、テレビ番組でも時折紹介されるが、中には4段重ねの豪華なものまであり、結構豊富で贅沢なランチなのだ。まぁ、本作の主人公は、寧ろスタンリーよりこのお弁当かも知れない。

 

製作・脚本・監督・出演(ヒンディー語教師)と4役をやったアモール・グプテは、スタンリー少年を演じたパルソーの実父だとか。いずれにしても、大した才人である。

 

面白いことに学校の教科だが、国語はヒンディー語で、その他の科目はすべて英語で行われている。ミッション系ということもあるのだろう。子供達も遊ぶ時はヒンディー語がほとんどのようだが、ごく自然に英語でもやりとりするという、日本から見れば羨むべき環境。

 

#58 画像はALLCINEMA on lineから