ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

久しぶりに新宿文化センターへ

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ここの小ホールは残響がほとんどなく、歌う側も聴く側もいつもなんとなくもの足らない気がすると思う。早めに行ったので、丁度中央付近に陣取る。多分、ベストの位置と思うが、それでも響きの悪さはどうしようもない。それに拍手喝采を送っても、どうもパラパラとしか聞こえないのだから、始末が悪い。加えて、床が完全にフラットなのに、椅子を192個並べてあるだけだから、前の人の頭でかなり視覚が遮られることに。

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 そんな悪条件の下、皆さん、ほんとに熱演・奮闘されていて、申し訳なく思ったほどだ。素晴らしいパフォーマンスなのに、僅か200人弱しか聴かないというのは、実にもったいない。もう少し広い会場はなかったのだろうか。

当然、字幕表示などないから、進行解説をナビゲーターとして黒ずくめの森山 太氏が大いに奮戦された。舞台進行中も黒子として、随時登場、歌手達の演技を助けていた。例えば、スカルピアがトスカに刺される場面、舞台に大道具があれば、テーブルからそっとナイフを取り上げ、後ろ手にスカルピアに近づいて一気に胸に突き立てる訳だが、テーブルもないから、森山氏が鞘付きナイフを手に、やや大仰な仕草で、刃を抜き放ち、トスカの目の前の床にそっと置く、というような感じだ。

説明をやや鬱陶しいと見る向きもあるやに聞くが、彼の活躍は、この公演の重要な鍵だったように思う。ただ、カヴァラドッシ銃殺場面は、やはり黒子氏が銃らしきものをもって撃つ真似をした方がすっきりしたと感じた。何かコブシで、カヴァをのけぞらせたような振りはいささか・・・。

上演機会の圧倒的に少ない、マスカーニの「友人フリッツ」を観られたのはラッキーだった。大須賀さんと小貫さんのペアは、声質的にも、雰囲気的にも、まさにスーゼルとフリッツにぴったりと感じた。

次の「アドリアーナ」だが、角野圭奈子さんのドランマティコぶりには、たまげた。日本でも稀にこういうソプラノがいるのだ。凄い!相手役の又吉秀樹氏が、以前、アプリコで「マクベス」のマクダフを演じた際に、その強靭な喉に驚嘆した記憶が鮮烈だが、今日の舞台でも、その伸びやかな高音をいかんなく響かせてくれて大満足。

最後の演目「トスカ」、トスカによる第一声「マーリオ、マーリオ」を聴いた瞬間に、こりゃただ者じゃない、と思わせる凄さを感じた。登場してまたびっくり!この目力と圧倒的な存在感はどうだろう。久しぶりにトスカらしい歌手である。

相手役の村上公太さんも、少々持て余し気味のように感じてしまった(ごめん!)。冒頭、いきなりカヴァラドッシの「妙なる調和」が響き渡る筈なのに、それはなし!少々落胆であるが、第3幕の「星は光りぬ」の名唱が聴けたから、一応満足。

さて、終演後だが、広くもないロビーに出演者が全員お出ましくださり、大変なファンサービスぶりには感激。せっかくだから、一杯撮らせていただいた。

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「友人フリッツ」、ズーゼルを演じた大須賀園枝さん。衣装も素敵!

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ドランマティコで館内の空気を圧倒した角野圭奈子さん。

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トスカの高橋知子さん。

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(画像掲載は出演者から事前了解を得ています)

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