ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「許されざる者」

130919

f:id:grappatei:20130919222915j:plain

これで同名作品は3本目というややこしいことに。西部劇とチャンバラは相互にリメイクしやすいということがよく分かる作品だ。92年のクリント・イーストウッド版をかなり忠実に同年代の北海道に置き換えている。確か柳楽優弥の役はオリジナルにはなかったと思うが。

f:id:grappatei:20130919222938j:plain

⬆西部劇の一シーンと言われてもおかしくないような光景が。

李相日監督がオリジナル版の日本版への置き換えと脚本も担当している。北海道の美しい大自然に深く入り込んで、厳しい撮影を俳優に強いたらしいことは、既にテレビ番組でも散々話題になっているが、その甲斐あって、オリジナルとは別趣の素晴らしい作品に仕上がっている。

f:id:grappatei:20130919223033j:plain

「人斬り十兵衛」と異名を取るほど暗い過去を持つ男、十兵衛(渡辺謙)。その過去を振り払うようにして新天地に流れて来る。そこで図らずもアイヌ人女性と禁断の恋の末に、女を一族から奪うようにして最果ての荒れ野に家を建て、子供二人を授かるものの、極貧の末に妻を亡くし、その日暮らしの日々。

f:id:grappatei:20130919223057j:plain

そんな時に現れた昔馴染みの金吾(柄本明)から賞金目当ての殺人行に誘われる。一切の殺生を断ち、酒までも断ってのやり直し人生の渦中にある者には辛い選択だ。一旦は断るものの、子供達の先行きを考えた時、男の心は決まる。

f:id:grappatei:20130919223121j:plain

金吾という男、オリジナル版ではモーガン・フリーマンが演じたが、これの描き方がイマイチすっきりしない。嫌がる男を無理矢理誘っておきながら、途中で降りてしまうし、賞金にも未練なしということで、何となく観客は置いてきぼりを食った印象で、スッキリしなかったなぁ。

 

罪のない金吾を嬲り殺した一味を決死の覚悟で皆殺し、天を焦がす火柱をバックに去って行く十兵衛のどアップは、自ら深傷は負ったものの、いずれ子供たちのもとに戻ることを暗示してジ・エンド。

f:id:grappatei:20130919223138j:plain

小池栄子、上手くなったなぁ。柳楽優弥も、「誰も知らない」でカンヌ映画祭の男優賞を受賞したのがまぐれではなかったことを、本作で見事に証明してみせた。

 

気の毒なのは、小澤征悦で、トイレでしゃがんでいるところを襲われ、落命。セリフもほとんどなしという具合だ。

 

#76 画像はALLCINEMA on lineから。