ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「オン・ザ・ロード」

130924 原題もON THE ROAD。アメリカが舞台だが、仏・ブラジル合作映画。原作はフランス系カナダ移民の米人ジャック・ケルアックの自伝的小説「路上」。原作は読んでいないから(その後、読んだが)、比較は不可だが、読んだ人に言わせると、小説の何分の一かにまとめられているが、かなり忠実にうまく作ってあるらしい。[監]ウォルター・サレス [出]サム・ライリーギャレット・ヘドランド、クリステン・スチュアート、クリステン・ダンスト、エイミー・アダムスヴィゴ・モーテンセンテレンス・ハワード、スティーブン・ブシェーミなど。

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時代は、1948年から1951年まで4年間の出来事。いわゆるロスジェネの後に登場するビート世代の話。しかもまさしくこれぞロード・ムービーの典型。このブラジル人監督は「セントラル・ステーション」、「モーターサイクル・ダイアリーズ」と、ロードムービーがお得意のようだ。

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ニューヨークで暮らし主人公サル(一般的にSalはサルヴァトーレの略称だが、ここではカーロの詩の一説sad paradiseから。手書きでsadがsalに見えて命名したという説も)は、父を亡くしたばかりで、何もする気になれない日々。偶然出会った西部から来た若者ディーンと意気投合。少年院上がりで、一通り悪いことは散々やってきた、サルとは対照的な育ち方をした若者に、瞬く間に心を奪われてしまう。ディーンが失踪した父親探しをしていることにも大いに共感する。

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彼の誘いに乗って、一人ヒッチハイクで、彼のいるデンヴァーを目指すのだった。そこから、延々と彼と、ついでに彼のガールフレンド、メリールーとの旅が続く。ディーンの素行の悪さは相変わらず、酒、ドラッグ、セックス、ホモ、盗み、スピード違反、車上荒らし、etc. サルも表面的にはつき合うが、勿論彼本来の生き方ではないから、やがて、二人の関係も破綻することは目に見えている。

 

メキシコで赤痢にかかり汗びっしょりで熱にうなされる「友」を、冗談を言いながら去って行くディーン。彼の本性を見た思いのサル。やがて、著作が売れ始め、羽振りもよくなったサルのもとも訪ねてくる尾羽うち枯らしたディーンには残酷なシーンが。

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一貫して彩度を抑えたセピア調、ジャズを含む当時の音楽を巧みに挿入し、この時代特有の虚無感、焦燥感、喪失感などなどが画面から生き生きと伝わって来る作り込み方は見事だ。青春の一時期、誰もが体験する、ぶっ飛びたいという感覚も、人により差があっても、一定期間で終わる、ある種通過儀礼だろう。そこにサルとディーンの違いが出たようだ。

 

登場人物が多いのは、なにせ広大な米大陸横断、加えてメキシコまでの縦断それぞれ往復だから当然と言えば当然。しかも出演者がとにかく素晴らしい!よくぞこれだけ名のある俳優を集めたと感心する。キルステン・ダンストはいち早く2006年にはこのカミルの役が決まっていたとか。つい先日、「エリジウム」で見たばかりのブラジル人女優、アリシー・ブラガを続けて見るとは思わなかった。

 

#80 画像はIMdb及びALLCINEMA on lineから