ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「そして父になる」

130930 血とはなにか。家族とは?育ての親と生みの親などがテーマ。

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⬆これは撮影の合間に撮影した記念撮影で、実際、映画で使われたシーンとは別物。

 

よくある産院での子供取り替え事件。6年後に産院から連絡があって、初めて知ることになる双方の両親。分かったことは、これは事故でなく、事件だったということ。担当看護婦が自身の不幸の腹いせに、他人を不幸にしようとして犯した犯罪であることが判明。

 

真相は分かったけど、それでどうなるものでもない。双方で話し合い、相互に週末のお泊まりなどの試行錯誤を繰り返した挙げ句、血のつながりを優先、取り替えるなら早ければ早い方がいいという結論に達し(必ずしも双方ともというわけではないが)、実行。しかし、果たせるかな、それは家族ごっこ、親子ごっこというぎこちのないものに。

 

そうこうするうちに片方の子供が、寂しさに耐えられず、自分が育った環境へ「脱出」する事件が起きて、改めて自分たちが取った選択ミスを知らされるのだった。

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⬆是枝監督の両側に二組の親子。母親二人の姿が対照的だ。リリーさんも白い靴下かいな!

 

不思議に涙は出なかった。寧ろ最後まで違和感が拭えなかった。親のエゴだけで、強引に物事を先へ進める余り、子供が犠牲になっていることに、何故気づかないかという、ある種腹立たしさを感じていたからか。取り替えるなら早ければ早い方がと言ったって、アンタ、6年も経っているんだぜ。六ヶ月とはわけが違う!

 

しかも、だ。似たような環境ならともかく、方や一人っ子、こなた3人兄弟、方やエリート・サラリーマン、超豪華な都心高層マンション暮らし、こなた田舎のこ汚い電気屋で、極めて庶民的な両親。どう考えたって、取り替えて上手く行く筈がないよ。

 

しかし、さすが是枝裕和監督、自身で原作、脚本、監督、編集を担当して作り上げたまさにこれぞ是枝映画の典型か。主演者たちも粒ぞろいの上手さ。それに、何と言っても子役達の演技が素晴らしい。これを引き出した監督の手腕に快哉を叫びたい。

 

#81 画像はALLCINEMA on lineから