ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ポルトガル、ここに誕生す ギマランイス歴史地区」

131003 原題はCentro Historico(歴史的中心地区)とシンプルなのに、この邦題の長さはどうだ!内容をある程度、タイトルで知らせようとする余り、こうなったんだろうけど、こいつは考えものだ。いわゆるオムニバス形式で、4人の、国籍も異なる監督が作る4話で構成されている。

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第1話「バーテンダー」フィンランドアキ・カウリスマキ監督―セリフなしで、あるバーテンダーが店を開いて、閉じるまでのの一日を淡々と描く。バックに流れるファドもよい。いかにも古くさいフィリップス社製のラジオ⬇から聞こえるニュースの響きが物悲しい。色調も素晴らしい。

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第2話「スウィート・エクソシスト」ポルトガルのペドロ・コスタ監督――カポヴェルデ出身、ヴェントゥーラが1974年の“カーネーション革命”に参加した兵士の亡霊と語り合う。こうした事情が飲め込めていないと何のことやら 

第3話「割れたガラス」スペインのビクトル・エリセ監督―欧州第二の紡績工場(超バカでかかったらしい)だったが今は“割れた窓ガラス工場”と呼ばれる跡地(ギマランイス近郊)で、かつての労働者が次々に登場、当時の模様を語る。⬇彼らは実際に当時働いていた工員で、全員素人なのだろうが、自然で見事な語り口だ。

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第4話「征服者、征服さる」現在104歳のマノエル・ド・オリベイラの作品。一番短い。ギマランイスを訪れる海外旅行客を率いる地元ガイドが英語で歴史的中心地区(これがタイトルになっている)をラウドスピーカーで案内する。⬇これがラスト・シーン。サングラスを外した英語ガイドは見上げて「征服者が征服された!」と。

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ギマランイス(現地発音はギマランイシュが近いようだ)は、スペインまで僅かに50kmとうポルトガル最北部に位置する。1143年、国父とも言えるアフォンソ一世のもと、カスティリヤ=レオン王国から分離独立を果たす。映画では観光客が街を埋めるが、日本から行く客は滅多にいないようだ。

#83 画像はALLCINEMA on lineから