ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「飛べ!ダコタ」

131008

f:id:grappatei:20131008103155p:plain

これも終戦秘話の一つ。感動を呼ぶヒューマン・ドラマ。実話がベースに。紀州沖で難破したトルコの「エルトゥールル号」救出劇を想起させる。

f:id:grappatei:20131008103052j:plain

終戦直後の真冬、佐渡に不時着したイギリス軍用機が、村民の必死の努力もあって、何とか自力で島を離陸するまでを描く。ほとんどが現地ロケ。しかも俳優たちの息が真っ白く見えるほどの寒気の中での撮影は、さぞ大変だったろう。

 

結末が分かっているが、それでもエンディングは結構泣ける。低予算で、よく出来た作品だ。外国人俳優もほとんど日本在住だろう。そう言えば、あのキャプテンもよく「アンビリーバボー」などのテレビ番組に登場する人物。演技は素人っぽいが、それは大したことではない。

 

白人など見たこともない時代、それも佐渡という片田舎に突如空から舞い降りたバカでかい機体から西洋人が降りて来るから、佐渡開闢以来の大騒ぎになるのは必定。村長、警察署長、自警団団長、小学校校長などなど、村の顔役が集まって善後策を協議。

 

なにせ相手は、ついこの間まで鬼畜米英と教え、教えられていた憎っくきイギリス人。侃々諤々の末、古くは上は天皇から下は罪人までを暖かく受け入れて来た佐渡という土地柄、外国人だからと言って歓迎しないわけにはいかぬ、という村長の一言で率先協力することに。

f:id:grappatei:20131008103346j:plain

そして、ついに海岸線に沿って500mのにわか滑走路が完成、あとは飛び立つばかりになる。当初はお互いに警戒心もあった村民とイギリス軍、今では人間同士としての交流の輪が広がり、もはや別れがたい感情が支配。

 

離陸前夜、村では送別会が催される。ここで子供達が歌う「蛍の光」の場面が素晴らしい。元々古いスコットランド民謡、AULD LANG SYNEという、やはり別れの歌が本歌だから、それぞれの歌詞で全員で和したことは言うまでもない。

 

ま、これだけの話だから、敢えて緯糸縦糸も工夫して、挿入している。余り余計な話を加えると、全体が薄らぼけてしまいがちだが、テレビしかやったことのない監督としてはうまく作ってある。

f:id:grappatei:20131008103117j:plain

ところで、この機体、CGかと思ったら、タイに残っていた同型機、つまりダグラスDC3、C47[SKYTRAIN]を運び、地元で復元したというから、結構こういうところには金がかかってしまったのだろう。イギリス軍でも連合軍ゆえ米機使用は当たり前だったようだ。

f:id:grappatei:20131008103225j:plain

NHK連ドラ「どんど晴れ」で盛岡の老舗旅館の若女将を演じた比嘉愛美、スッピンだが元がいいから、結構可愛い。それより老け役の洞口依子が素晴らしかった。また村長役、柄本明、相変わらず上手いねぇ、こういう役らせると。

 

ところで、このタイトルだが、「飛べ!バージル」(チンパンジーが人間並みの知能を持って、飛行機の操縦桿を握る話)や「飛べ!フェニックス」(サハラ砂漠に不時着して大破した飛行機を、生き残ったエンジン一基、機体の残骸再利用で単発機に作り直して、ついに飛び上がる、まるで奇跡の地球生還を果たした探査機はやぶさのような話だ)を思い出させる。

 

 

#84 画像はALLCINEMA on lineから