ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

二期会創立60周年記念公演「リア」@日生劇場

131109 いやはや、すっごいオペラがあったものだ!今まで見たオペラの中でも屈指の公演で、恐らくいろんな意味で歴史的公演になることは間違いない。

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今更ながら、総合舞台芸術とは、それを構成する一つ一つの要素が磨き抜かれて初めて成功を収められることを痛感させられた舞台だった。

数あるオペラの中で珍しい現代音楽で、不協和音も多いし、何より演奏が困難を極めたのではないか。指導したマエストロも凄いが、それに耐えた奏者,歌手たちも大喝采を送りたい。

それに演出も傑出していたし、舞台装置、照明なども、精緻を窮めた出来映えだったように感じた。

日生劇場のオケピット、狭いから、今回のような大編成オケとなれば、一部を舞台に上げるしかない。このため、舞台作りには随分大きな制約があったと思う。

下手側に木管とパーカッション、上手側に金管がひな壇状に陣取る。そして、舞台中央に大きく盛り上げた本当の舞台が大きく傾斜して作られている。概ね20度ほど、上手側に落ちる傾斜がつけられていて、中央に大きな大ブリテン島の地図が広げられ、中央に剣が突き刺さっている。また、やや手前には、僅かに傾斜した鉛筆状の太い棒が吊り下げられているという趣向。(⬇この写真、facebookから借用しました。すみません!)

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オケの一部が舞台に乗っているため、幕は一切使用しないし、舞台転換も、回り舞台以外には一切なし。

マエストロが登場すると、前後して左右から登場人物がばらばらと舞台へ上がって来る。そしてタイトル・ロール、リア王が前奏もなく歌い始める。リア王はほぼ出ずっぱりだから、演じた小鉄和弘は相当なエネルギーを要したことだろう。ほんとにご苦労様だ。

間に25分の休憩があったが、2時開演で、5時15分終演だったから、正味2時間半を越える長丁場。王の他に出番の多かった3人の娘達もよく頑張った。ドイツ語の歌詞を覚えるだけでもどれほど大変だったか!

長丁場ゆえ、部分的にはかなり単調になる場面もあり、眠気を催したのも、正直なところ認めざるを得ないし、左右の観客もかなりコックリやっていたのだが、全体として、息を呑むようなシーンもまた少なくなかった。特に、一幕中盤で、傷心のリア王が荒涼とした荒野へ漂泊していく場面は、強く印象に残った。

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二期会のホームページからお借りしたGPの際に撮影された画像。このように黒・赤・白に、染め分けてじっくり表現した手法もまた見事。

それにしても、傾斜し、且つ回る舞台での演技がどれほど厳しく危険を伴うものだったか、演じた人でないと分からないだろうなぁ。

カーテンコールには作曲したアリベルト・ライマン自身も最後に登場し、やんやの喝采とブラーヴォを浴びて、嬉しそうだった。

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⬆(この写真もコーンウォール公のfbから借用しました。ごめん!)

引っ込む際に、板波利加さん、舞台袖で転んで、一瞬どよめきが。幸い、大したことではなかったようで、やれやれ。

こんな歴史的公演を目撃でき、大満足で帰路へ。

 

#60