ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「緑の光線」

131112 原題もRAYON VERT緑の光線)フランス映画 1986年作品 監督のエリック・ロメールは1920年生まれ。2010年、90歳目前で没した。ヌーベル・ヴァーグの支柱になったとされる人物。名前がEric Rohmerとドイツ風だが、ナンシー生まれの仏人。

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⬆この作品の画像、ほとんどなく、僅かにこれだけ。しかも、何故かドイツ語。この日没風景がラストシーン。上部に緑色の帯が見える。

この作品は彼が66歳の時に撮ったもの。16mmでの手持ち撮影が多用されているスタンダード・サイズで、画面のブレが大きいし、フィルムが既に古いものなのか、やたら”雨”が降り、同年代の作品に比べると随分古い映画の印象を受ける。

 

主人公のデルフィーヌ、一緒にヴァカンスに行くことにしていた女友達から断られてしまい、途方に暮れる。ボーイフレンドと言っても、最近はすっかり疎遠になったジャン=ピエールは忙しがってばかりで、どうせ相手にしてくれないだろうし、かと言って、一人ぼっちでどっかに行くのは嫌。パリに残るなんてサイテー。

 

女友達も、みんなそれぞれ計画があって楽しそうだ。そんな中で、自分だけが疎外感を味わって、惨めで惨めで泣いてしまうしかない。見かねた一人が、一緒にノルマンディーに誘ってくれ、地元の友達ともふれあって一見楽しそうにしているが、心はどんどん落ち込むばかり。会話も、彼らとは距離があり過ぎると感じて、まったく噛み合ない。途中でパリに帰ってしまう。でも、ヴァカンスはまだ20日も残っているのに。

 

パリの街角で偶然出会った旧友が、ビアリッツにある親戚の海の家を貸して上げると。さっそく出かけ、ビアリッツの海辺で数日過ごすが、ここでも空しさだけが。偶然知り合ったスェーデンの女も、自分とは別世界の人間。あーあ、やっぱパリに帰るしかないよなぁ。んで、ビアリッツの駅の待合室。

 

ここで、ついに男運に恵まれるのか・・・日没の最後の瞬間に緑色の光線が見えたら幸運のシンボルと言うが・・・

 

この映画、会話がまったく自然で、まるで記録映画じゃないかと疑うほど。台本て実際に作られたのかどうか。それぐらいデルフィーヌを演じた、若き日のマリー・リヴェイールの演技が見事の一言につきる。佳作。

 

 

#93 画像はALLCINEMA on lineから