ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ビフォア・ミッドナイト」

140122 原題も:BEFORE MIDNIGHT こういう原題は、邦題を考える人には楽勝だろう。シリーズ3作目だが、生憎、前作(「ビフォア・サンセット」2004)も前々作(「恋人までの距離」1995 何故原作通り邦題を「ビフォア・サンライズ」にしなかったのか!そうすれば、ビフォア3連作となったのに!)も見ていない。それでも、概ね想像の範囲内で、本作の鑑賞に特段差し支えることもなし。

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しかし想像外だったのは、トークがやたらに多い作り方。まるで舞台劇のように、延々とおしゃべりが続いて行く。それでも観客を引きづり込んで放さない、その圧倒的な脚本力には驚嘆せざるを得ない。

 

もちろん主演二人の自然な演技も賞賛されてしかるべきだろう。長回しのセリフは、多分にアドリブが含まれていると想像できる。彼らは今回、脚本にも名前を連ねているし、何よりリチャード・リンクレイターとは3度目の顔合わせで、これほど息の合う監督と主演陣という組み合わせも稀だろう。

 

今回の舞台はギリシャ。それも南ペロポネソス、半島突端にある小さな村、カラマタ。先妻との間にできた息子を、シカゴの先妻の元に帰すべく、彼をちっぽけな空港へ送るところから始まる。息子に十分父親としての役割を果たせたかどうか、そればかりが気になって仕方ないから、パスポート・コントロール・エリアに入る寸前まで息子に話しかける主役のジェッシー(イーサン・ホーク)の姿が印象的だ。

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後は、空港からの市街区へ戻る車内、6週間も厄介になっている友人宅での食卓、散歩、ホテルの一室とテラス・バーしか出て来ない。その限られた空間で、二人だけ、或は気のおけない友人たちと、ひたすらトーク・トーク・トーク(大昔の映画「ピロー・トーク」の主題歌、ドリス・デイが歌う歌詞を思い出した)

 

一目惚れしたあの日から既に18年、愛し合った二人は、互いに十分満足していると思っている反面、心の襞にたたまれていた不満、これまで敢えて口にこそ出さなかった不信の念、実は山ほどもあったとは。

 

せっかく友人が双子の娘たちを一晩預かってくれて、二人だけの最後の夕べ、盛り上がる筈だった、その瞬間に、どちらかが放った一言から、無惨にも暖かい雰囲気が崩れさって行く。そして、「今、わかったわ。結局、愛してないんだわ、あなたのことは!」の捨て台詞で、出て行ってしまうセリーヌジュリー・デルピー

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ま、しかし予想通り、これで終わらないところがねぇ~、アメリカ的とでも言うんだろうか、余りにもエンディングが分かってしまったのが、チト・・・。

 

ジュリー・デルピーさん、まさに体当たり演技。凄い!しかも、特に下の方はでっぷりしちゃって、まだ44歳というのに、信じられない肉の付き方よ!。演技もうまいし、監督もするし、まことに才人であるには違いないが。

 

 

#3 画像はALLCINEMA on lineから