ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「くず鉄拾いの物語」

130207 原題はボスニア語につき、省略。ボスニア・ヘルツェゴビナ/フランス/スロヴェニア合作 74分(短い!!)[監]ダニス・タノヴィッチ

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ボスニア・ヘルツェゴビナのとある寒村。定職のないロマ族のナジフは、鉄くず拾いのその日暮らし。それでも気のいい世話女房のセナダ、幼い二人の娘と、幸せな家庭を築いている。

 

ある日、セナダが腹痛を訴える。病院へ連れて行くと、流産の診断。緊急手術が必要と言われるが7万円もする手術代は捻出不能。諦めきれず何度も病院と掛け合うが、相手にされない。ロマ人支援協会に頼んでみるが、事態は変わらない。

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最後は、親戚から保険証を密かに借り、本人なりすましで何とか手術にこぎつけ、事なきを得る。(他人の保険証で、本人確認もしないところが、いい加減というか、おおらかだが、払えなきゃ門前払いという世界も過酷そのもの。)

 

ロマ人の家族が主人公という作品は比較的珍しいと思うが、物語の当事者たち本人が再演ドラマを演じているところが凄い。全員まったくの素人でいながら、まったくそれを感じさせないタノヴィッチ監督には脱帽である。

 

ロマ人は、元来定住しないから、保険証など無縁だろう。それにしても、ひとたび健康を損なえば、命取りになりかねない人生というのもねぇ~~。それにつけても、日本の制度はありがたいものよ。

 

自宅と病院の往復する際、途中大きな原子力発電所が何度も登場するが、ボスニア・ヘルツェゴビナに現在原発はないし、あの付近だとスロヴェニアにやっと1基あるだけ。スロヴェニアが合作相手国になっているから、撮影はそこだったのかも知れない。テレビがやっと見られる、ロマ人の住む地方都市との対比が狙いかな。

 

 

#10 画像はALLCINEMA on lineから