ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ほとりの朔子」

140228 監督・脚本:深田晃司

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⬆にあるように、ナント三大陸映画祭で二冠に輝いた他、別の外国映画祭賞も取った作品。いかにも欧米、とくに欧州での評価が高いことがうなずける作品である。情景が美しく、全体に詩的でもある。主人公が川辺で水遊びする⬆のショットなど、印象派絵画を思わせる。

 

大学受験に失敗した朔子(随分変わった名前である)が、叔母(鶴田真由)に誘われて、夏の終りの二週間を海辺で過ごす。その間、周囲の人間との交流を通じて、揺れ動く朔子(二階堂ふみ)の心情が少しずつ変化していく様が、淡々と、最後まで破綻することなく描かれている。

 

テーマといい、情景といい、既視感いっぱいの作品だが、どの作品だったろうか。多分、かなり昔見たフランス映画だったように。また、仏映画エリック・ロメールの「緑の光線」(1987)や、イザベル・ユペール主演の韓国映画「三人のアンヌ」(2012)などに共通するシーンも少なからず。

 

出演者は、いずれもかなりの演技派揃い。中でも、主人公を演じた二階堂ふみは傑出している。以前見た「ヒミズ」では、それほどインパクトを感じなかったのだが。それにしても宮崎あおいに瓜二つなのには驚く。

 

叔母の古いボーイフレンド、古館寛治の家で開かれた誕生会のシーン、あの場面の流れるような会話はほとんどが予め決められたセリフではなく、ほとんどアドリブではないかと想像されるほど自然で見事である。

 

敢えて、5:5のスタンダード・サイズで撮った意図は成功しているのか。また登場人物の衣装のカラースキームなども敢えて野暮ったく見せているように思えたが、その辺も監督の狙い通りなのか。海外の観客を意識しているとすれば、もう少し他の手法がなかったか。

 

製作国が日米合作になっており、当初から海外での公開を意識していたのか、下に英語のスーパーが入るが、結構これが気になって仕方なかった。タイトルには何故か仏語で Au Revoir L’été(さらば、夏)と入る。

 

 

#17 画像は本作の公式サイトから