ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「それでも夜は明ける」

140318 原題:12 Years a Slave []スティーヴ・マックィーン 米アカデミー賞、作品、脚色、助演女優(パッツィー役のルピタ・ニョンゴ)の3部門受賞作品。監督賞なしの作品賞受賞は珍しいらしい。

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これまた実話である。せっかく自由黒人として、安定した生活を築いていたのに、白人の罠にはまり、奴隷として売り飛ばされてしまった主人公、ソロモン(キウェテル・イジョフォー)の、12年間に及ぶ想像を絶する苦難と絶望の道のりを描く感動作。

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最初のご主人様、大農園主のフォード(ベネディクト・カンバーバッチ)は、いかにも黒人に理解があるように見えるが、それは見せかけに過ぎず、最後は自分のことしか考えていないことが分かり、ソロモンの落胆は大きい。

やっと自由黒人であることが立証でき、家族の元に戻ったソロモン、家族を前に、最初に口から出た言葉は「悪かった、許してくれ!」という悲痛な一言。

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⬆白人の中にも、バス(ブラッド・ピット)のように奴隷制に懐疑的で、寧ろ黒人に深い同情を寄せる人物もいたのが救い。結局、彼が通報してくれたお陰で、ついにソロモンは再び自由の身になることが出来た。ブラピは本作の製作にも注力したようだが、そのせいか、端役ながらおいしい役を演じている。

 

結局のところ、一件理解ありげに見える白人たちも、心の底では、黒人の地位向上などどうでもいいことをこの作品は伝えている。やはり、黒人の監督ならではの作品に仕上がっているのは、その辺があるからなのか。

 

アメリカと言う国は、つい最近までこうした人種問題という深い闇を抱えたまま近代国家面(ずら)をしていた訳で、やっとまともな国の仲間入りには、ケネディー大統領が登場して公民権法成立まで待てねばならなかったとは。いやはや。

 

ところで、ルピタ・ニョンゴの助演女優賞受賞だが、確かに身体を張った大熱演は認めるが、受賞するほどの演技には見えない。これなら、2番目の悪辣な農園主を演じたマイケル・ファスベンダーだって、助演男優賞を取っても不思議ではない。

 

#21 画像はALLCINEMA on lineから