ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「タンゴ・リブレ 君を想う」

140330  原題もTANGO LIBRE ベルギー・仏・ルクセンブルク合作 97分 [監]フレデリック・フォンテーヌベルギー人) 脚本には、アリス役で出演もしているアンヌ・パウリスヴィックが当たっている。この人、アチコチ調べても結局正体不明。何者なんだろう。それはさておき、題名から受ける印象と中身がえらく違っていて、それにまず驚かされる。

 

冒頭は、警官を射殺した直後の犯人たちの映像を、低い位置のカメラから撮るという、意表を突いたもの。また、エンディングは、実にコミカルで、犯人達の行く末を暗示しているようで、これも面白かった。

 

ほとんどが刑務所内での描写という、風変わりな作品。同じ房内の二人の共犯者、フェルナン(セルジ・ロペス)⬇とドミニクは、おなじ女性アリス(パウリスヴィック)を共有しており、アリスには一人息子アントニオ(誰の子?)がいるというハチャメチャな設定。

f:id:grappatei:20140401180535j:plain

一方、看守の通称C.J.(フランソワ・ダミアン)⬇は、何の趣味もない、どことなくぼやーっとした独身男。最近、急にダンス教室に通い始めている。そこへ、新たに一人の女性が入会、ちょっと気になる存在に。

f:id:grappatei:20140401180553j:plain

いつもの囚人面会日、何とC.J.の前に息子連れで現れたのが、このアリスで、それぞれ別の席に陣取ったフェルナンとドミニクと、濃厚なラブシーンを演じるから、看守たちもざわめき始めるし、C.J.はうろたえてしまい、注意するどころではない。

 

どうした訳か、最近アリスがダンス教室に通い始め、看守とどうもタンゴを踊っているらしいという噂を耳にするフェルナン、休憩時間にアルゼンチン出身の受刑者を探し、タンゴを習おうとする。ここら辺の思考回路が実に笑わせる。結局、アルゼンチン受刑者はいたものの、その場は相手にされない。

 

こうした複雑極まる男女関係、それも息子まで巻き込んだ話はいずれ破綻することは目に見えている。しかも、看守まで同じ女に惚れていると来ては、何か起きない方が不思議である。

 

ある日、どういう風の吹き回しか、例のアルゼンチン野郎が、同じアルゼンチン出身の仲間と、仲間たちの観ている前で、激しくタンゴを踊り始めたから、そりゃ一同アゼンボーゼン、口アングリである。すっかり魅了されてしまった受刑者一同がタンゴに明け暮れるというけったいなことに。

f:id:grappatei:20140401180611j:plain

さて、C.J.である。彼女に告白までしちゃったけど、彼女の心はフェルナンとドミニクのもの。がっくりしたC.J.、途方もない一計を案じ、さっそく実行に移す。彼ら4人と一人の子供を乗せたヴォルヴォが疾走する先は?

 

いや~面白かった!いかにもフランス風の味わいのある奇想天外な喜劇である。

ところで、タンゴを皆に教えることになる囚人役を演じたチチョ・フルンボリは、ブエノスアイレス出身のバリバリのタンゴの名手とか。それにしても凄みのある顔で、この役にはまさにはまり役。よく探して来たもんだ。

f:id:grappatei:20140401181213j:plain

 ⬆休憩時間は全員でタンゴの練習。一見凶悪のツラのおっさん達が一心不乱にタンゴを踊る図は奇怪でもあるが、微笑ましい。

#26 画像はALLCINEMA on lineから