ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「フルートベール駅で」

140401 原題もFRUITVALE STATION(オークランドのベイエリアにある新交通システムBARTの駅)米85分 [][]ライアン・クーグラー(地元出身で、弱冠29歳の黒人。凄い才能!)製作にはフォレスト・ウィテカーの名も。これまた実話に基づいてクーグラーが原案を書いたようだ。

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犠牲者はわずか22歳の黒人男性オスカー(マイケル・ジョーダン、どこかで聞いた名前だ)、そりゃこれまで散々悪さをして刑務所暮らしの経験もしているし、些細なことで切れ易い性格が災いして、現在失職中。でも、それは大反省しているし、ほんとはすっごく気が優しい男だ。

 

それに、人並みにちゃんと愛する家族がいる。ガキの頃からずーっと口うるさい母親も、結婚はしていないけど、カミさんだっていれば、なんたってチョー可愛い一人娘だって。たまたま、今は失業中だけど、どうせそのうち、仕事もみつかるだろうって。

 

といった前半は、やや退屈に過ぎて行く。ところが・・・

 

大晦日、母親の誕生日ために高価な蟹を仕入れ、皆でささやかにお祝いをして、仲間と一緒に新年を祝うため、ベイエリアに繰り出して花火でも見て大いに盛り上がろうぜ、っとまぁそんな感じで終盤へと。

 

そこからが本作の見せ場で、その為にこそやや退屈な前半を我慢させたということだろう。ほとんどハンド・カメラで見せる映像は、圧倒的な臨場感で、見る者を恐怖に陥れる。

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オスカーにやがて理不尽な死をもたらすことになる、フルートベール駅のプラットフォーム上での、白人警官による”蛮行”は、停車中の満員電車内から多くの目が注がれていて、しかも何人もが動画に収めているから、動かしようのない事実なのだ。

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⬆2mもあろうかと思う白人コップ、こいつが凶暴そのもので、どえらい威圧感。オスカーは、帰りの車内でたまたま昔の非行少年仲間にからまれて、たちまち車内で大立ち回り。次の駅で、駆けつけた警官に仲間たちと一緒に取り押さえられる。それだけで済めばよかったのだが・・・

 

これは、どこにでもいるごく普通の黒人青年が、これからは真面目に生きて行こうと決意する一日を描いているが、新年を迎えた、その瞬間に、まったく理不尽極まる殺され方をして無惨にもその短い生を閉じるという、無茶苦茶にやり切れなさを感じる作品。

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⬆必死で息子の無事を病院の待合室で祈る母ワンダ(オクタヴィア・スペンサー)と内縁の妻ソフィーナ(メロニー・ディアス)

 

エンディングで、犯人の警官は起訴されるものの、わずか2年という短い判決、更に使用したピストルを、殺傷力のない銃器と勘違いしたとか言う、とんでもない理由を主張して、実際には11ヶ月で釈放されたとのテロップ。腹立たしくも、後味の悪い作品。

 

それにしても、アメリカの公民権成立から既に半世紀が経過しているというのに、未だに現実がこれだ。州によっても異なることは分かるが、カリフォルニアなどは、白人が圧倒的に優位に立ち、それこそ上から目線で非白人、とりわけ黒人に対しての忌避感はハンパではないようだ。 

 

#27 画像はALLCINEMA on lineから。