ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「8月の家族たち」

140421 原題:AUGUST:OSAGE COUNTY 2013 米 121分 原作・脚本:トレイシー・レッツ、監督:ジョン・ウェルズ、出演者のうち、メリル・ストリープジュリア・ロバーツアカデミー賞主演/助演女優賞にノミネートされたが、他の出演者もいずれも卓抜した演技を見せた。舞台ではピュリッツァー賞トニー賞のダブル受賞という快挙達成の戯曲。室内での演技がほとんどで、いかにも舞台劇という内容の家族の愛憎劇である。

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親の葬儀などで、それまで長期間音信の絶えていた家族が一同に会して、それをきっかけに絆を取り戻したり、逆にいっそうわだかまりが深くなって離ればなれになるというパターンはこれまでも米国作品に特に多く見られたと思う。

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この作品もご多分に漏れず、その典型劇だろう。それにしても、愛憎の表現が余りにも激しくて、この種の家族間の感情表現が大いに控えめで、いわば対極にある日本人からすれば、ほとんど信じがたいほどである。思っていることを細大漏らさず相手にぶつけてしまうというのは、それだけ自分の心に正直であるとも言えるのだが、我々には堪え難い。

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舞台がまたクソ暑い中西部オクラホマ州のオセージ郡という片田舎と来ているから、なおさら息詰まるような話の展開にピッタリで、申し分なし。

 

さて、それぞれノミネートされた二人だが、いつもオーバー・アクションで嫌みなストリープも、この作品では、それがほどよい効果を生んでいるように思えた。一方の長女役、ジュリア・ロバーツもほぼスッピンでの体当たり演技はさすがである。

 

ユアン・マクレガーベネディクト・カンバーバッチという二人の英国人がキャスティングされているが、当初、監督は全員アメリカの俳優で固める意向で、この二人の起用には反対だったようだ。確かに、中西部訛りの特訓をしたのだろうが、特にマクレガーの英国発音は顕著で、米人からすれば、違和感を持たれても仕方ないのかも知れない。

 

長女の娘役で登場したアビゲイル・ブレスリン、今は18歳だが、12歳で演じた「ミス・リトル・サンシャイン」でのイメージが強過ぎて、どうにも浮いているように見えて仕方なかった。

 

映画の終り近くに、ある重大な秘密が明らかになるのだが、このことがほぼ決定的な家族の心理的離散をもたらす。一人大型のピックアップ・トラックに飛び乗った長女(ロバーツ)が、オクラホマの大平原の真ん中で停車し、ほとんど車の通らない田舎道の前後を眺めるシーンがとても印象的である。

 

蛇足ながら、ストリープの居る部屋に何気なくOUT OF AFRICAアイザック・ディネーセン)のペーパーバックが置いてあったが、これは1985年に彼女がロバート・レッドフォードと共演した話題作「愛と哀しみの果て」の原作である。

 

⬇冒頭とエンディング近くで使われたエリック・クラプトンのLAY DOWN SALLYがまたよかった!

#32 画像はIMdb、ALLCINEMA on line、動画はYouTubeから