ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「レイルウェイ 運命の旅路」

140422 原題:THE RAILWAY MAN 英豪合作 116分 監督のジョナサン・テプリツキーは東欧風の姓だが、豪人。これが彼の最初の日本公開作品のようだ。この邦題もよく出来ている。原作者でもある主人公が、子供の頃からの鉄道オタクであり、また第二次大戦で、日本軍の捕虜として泰緬鉄道建設作業に駆り出された経験を持つことからの原題だろうが、”運命の旅路”としたところが効いている。

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と言う訳で、これまた実話に基づいた映画だ。因に原作(本)の邦題は「泰緬鉄道 癒される時を求めて」(角川書店刊)となっていて、更に具体的な内容を暗示している。

 

「現在」の設定は1980年、主人公エリック・ローマクス(コリン・ファース)が過酷極まる体験をしてから40年近い歳月が流れている。その当時と現在が交互にフラッシュバックしながら進行していく手法が取られているが、突如、現実の世界に、当時の憎きナガセ(石田淡朗➡真田広之)がずかずかと室内に入って来て、「現在」のエリックを「過去」に連れ出すシーンが面白い。

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「過去」の世界は「戦場にかける橋」でも描かれた泰緬鉄道の工事現場だが、描き方がリアル過ぎて、日本人には辛すぎる。やたらにわめき散らすばかりで、捕虜の扱い方が極悪非道の憲兵の姿は、見るに絶えない。水攻めの拷問場面は、とりわけ目をそむける。スパイ映画ならまだしも、現実にあったわけでねぇ。

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エリックは、結局、帝国陸軍通訳のナガセが生存していることを知り、散々悩んだ挙げ句、彼に会いに行く決断をする。クワイ川の現場、現在のタイ奥地カンチャナブリでKenpeitai Museum(こんな博物館が実際にあるのかしらん*1)で、英語で案内をしながら、生計を立て、贖罪の日々を過ごしているナガセと対峙するエリック。さて、どんな目に遭わせようというのか・・・。

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今や初老の二人、時の経過を越えて、厳しい尋問や拷問が行われたまさにこの場所での対決だから、ま、ここが言うなれば一番の見せ場だ。コリン・ファースにとっても、ナガセ役の真田広之にとっても、極めて難しい演技が要求される場面。二人とも見事に期待に応えていた。

 

エリックの心に、いつの間にか怨念を乗り越える感情が涌き、ふっきれて英国に帰るが、今度は妻を伴って再度、この地を踏む。迎える永瀬隆、重ねて心から詫びる永瀬に、もはや責め立てる感情は残っていない。二人はいつまでも抱き合ったままだ。

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長年彼につきまとった拷問のPTSDからやっと解放され、妻と穏やかな生活へ。

ニコール・キッドマンはエリックの妻パティを演じているが、はっきり言って余り大した役ではないし、こんな大女優が演じることもないのだが、コリン・ファースからオファーされ、更に本作のテーマである寛容に大いに関心を抱いて出演を決めたとか。

註*1 あるブログに掲載されていた記事によれば、

「日英豪泰蘭戦争博物館」入館料30バーツ。戦時中、軍属としてカンチャナブリ捕虜収容所で憲兵隊通訳として働いていた日本人の方が、戦後、日本軍による捕虜虐待の贖罪の意味を込め、自費で有志の方とともに近くの寺院ともども設立したものらしい。

ということのようだ。

 

 

 

#33 画像はIMdbとALLCINEMA on lineから