ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「自由に乾杯」(イタリア映画祭参加作品)

140504 原題:VIVA LA LIBERTA’(自由万歳)94分 監督:ロベルト・アンド

イタリア最大野党の幹事長、エンリーコ・オリヴェーリ(トニ・セリヴィッロ)は党大会で、こっぴどく野次られてしまう。そうでなくても、ここのところ、支持率の低下が著しく、次の選挙で勝てる見込みはゼロ!窮地に経たされたエンリーコ、一人ローマを抜け出して、行方をくらましてしまう。

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こんな大事な時に!困り果てた腹心の部下アンドレア(ヴァレーリオ・マストランドレア)は、エンリーコの妻と相談し、究極の解決策を思いつく。エンリーコとは双子の兄弟、ジョヴァンニ(トニ・セルヴィッロ)を担ぎ出すのだ。ジョヴァンニは哲学者、いくら見た目が瓜二つでも、果たしてそんな大それたことが!一抹の不安を抱きながらも、この作戦を打ち明けると、本人はすっかり乗り気だ。

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政治は素人でも、元々学識経験豊富で、理念は明晰、話は巧い。更に深い教養から、詩や俳句を巧に話に織り込み、聞く者を煙に巻くことしばしば。それに手垢の付いた政治家にはない独特の説得力があるから、記者会見も、立会演説会も見事にこなしてしまう。当然、支持率は急上昇、勝利はもう間違いないと、誰もが確信する。

 

一方、モトカノのダニエル(ヴァレーリア・ブルーニ・テデスキ)が住むパリへ飛んだエンリーコ、今は著名な中国人映画監督と結婚し、子供もいる彼女の家で居候を決め込む。映画の撮影現場を見学をしたり、小道具助手の代役をしたり、子供の相手をしたり、すっかり寛いでいるうちに少しずつ自信を取り戻して行く。そして、ローマへ戻ることに。

 

さぁ、どんな結末を迎えるかは、映画は語っていない。見る人に委ねたようなラストシーンが冴える。

 

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本作の魅力は、何と言ってもトニ・セルヴィッロの演技だろう。目下、イタリアで最も乗りに乗っている俳優の一人であることは間違いない。また、助演のヴァレーリオ・マスアンドレア(⬆右)も、「フォンターナ広場 イタリアの陰謀」(2012)で見事な演技を見せたが、イタリア国内では超人気俳優らしい。

 

ヴァレーリア・ブルーニ・テデスキは、言わずと知れたカルラ・ブルーの4歳上の異父姉。余り似ていない。少し暗さというか影のある、控えめな女優という印象。

 

このイタリアの政界を風刺したような喜劇は、イタリア事情に詳しいと楽しみ方が倍増するが、そうでなくても十分に受けると思うし、是非日本公開すべきと思う。

 

 

#38 画像は映画祭公式サイトより