ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「プリズナーズ」

140506 原題もPRISONERS 米国 監督はカナダ、ケベック出身のドゥニ・ヴィルヌーヴ(「灼熱の魂」、間もなく封切りになる「複製された男」)2時間半を超える長尺作品。

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普通の家族が普通に生活していて、突然娘を誘拐される。犯人探しを警察に任せておけないほど怒りに燃える父親が暴走する。一方の担当捜査官も独自に、そして確実に犯人に迫って行く。本当の犯人はいずこに?一瞬たりともスクリーンから目が離せない緊迫感で、アドレナリン出放題。また一つ,凄い作品が。

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ペンシルヴァニアの静かな田舎町で、贅沢ではないが満ち足りた生活を楽しんでいるドーヴァー家。今日は感謝祭。長男が近くの森で初めて鹿を仕留め、父ケラー(ヒュー・ジャックマン)も嬉しそうだ。鹿肉を持って、隣のバーチ家を一家で訪ねる。家の前に大型キャンピングカーが駐車している。

 

こんな風に静かに始まるが、この後、両家の下の娘が行方不明になり、感謝祭どころではない。大騒ぎの末、警察は犯人らしき人物を特定するが、果たしてこの知恵おくれの男(ポール・ダノ)が、そんな犯罪を犯せるのか!?テンポ良く、多層的に映画は進行していく。

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途中、一部分かりにくいシーンがないわけではないが、後々合点が行くし、見事な組み立てに脱帽。また余韻と僅かな謎を残すような終わり方も洒落ている。ただ、犯人と断定されたわけでなく、疑わしいだけで、民間人が勝手にその男を監禁、拷問(これが凄まじくて、正視に耐えない)するって、そりゃないよ。

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主役のヒュー・ジャックマン、刑事のジェイク・ギレンホールの演技は言うまでもないが、アレックス(知恵おくれ男)の叔母をやる「フローズン・リバー」のメリッサ・レオ(⬆中央)の名演も捨てがたい。「ザ・ファイター」でダテに助演女優賞を取った訳でないことを見事に証明した。

 

また、拷問され続けるポール・ダノも、大変な演技を求められて、気の毒でもあるが、「ミス・リトル・サンシャイン」や「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」、「それでも夜は明ける」など、どの役柄でも、どこか常軌を逸しているような風貌だからか、どれもはまり役なのだ。

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映画の中で、ギレンホール扮するロキ刑事の指には、秘密結社フリーメーソンの指輪⬆が。これの意味するところが何なのか、もっと大きなスケールで本作が言わんとしていることがあるようだ。

 

全米で毎年80万人もの幼児が誘拐されているという。その目的は言うも憚れるほどおぞましいものだが、こうしたことがかなり日常的に起きていることを暗示した作品である。

 

タイトルは秀逸だ。リズナーズとは誰のことを指しているのか。囚われ人を意味するから、第一義的にはさらわれた幼児たちであることは間違いないが、よく見れば、親たち、犯人グループ、或は警察までもが、それぞれに囚われ人かも知れない。

 

#39 画像はIMdb及びALLCINEMA on lineから