ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ヴィオレッタ」

140528 原題はMY LITTLE PRINCESS  仏 106分 [監][脚]エヴァ・イオネスコ [出]イザベル・ユペール、アナマリア・ヴァルトロメイ

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幼い頃からカメラマンだった母親のモデルを務め、余りに過激な写真集が出版されたことで、ちょっとした騒動を引き起こした自分の体験を元に、エヴァ・イオネスコが半ば自伝的に作った作品。

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娘の養育は自分の母親、つまりおばあちゃん任せにして、自由奔放に生きるアンナ(イザベル・ユペール)、ある日、自分の娘ヴィオレッタ(アナマリア・ヴァルトロメイ)の美貌ぶりに気付くと、試しにモデルとして使い始める。大人のメイクを施し、衣装を着せ、大胆なポーズを取らせて撮影してみると、これが思わぬ大当たり。

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当初、これを楽しんでいたヴィオレッタも、ますます過激なポーズを取らせる母親に嫌悪感を覚え、一種の職場放棄で、普通の女の子に戻ってクラスメートと普通に遊びたいと言い始める。いっぱしのアーティスト気取りのアンナが必死に説得するが・・・

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名優と言っていいユペール⬆だが、既に60歳!年齢的にこの役をやるには無理があるが、それを感じさせない演技はさすがである。

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一方、撮影時11歳というルーマニア人のヴァルトロメイは、確かにとんでもない美貌であり、既に堂々たる肢体はまぶしいほど。小学校高学年という設定だが、モデルのメークと格好で登校する⬆というのも、いささか不自然。いくらフランスでも学校側が許すはずもないと思うが、ま、それは措いておこう。

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先日見た仏映画「ある過去の行方」同様、ここでも子供そっちのけの親のエゴで、子供が犠牲になっていく姿は、見ていて余り気持ちのよいものではない。本作も、先に破綻が見えていて、なお突き進んでしまう破滅的な哀しい親が描かれている。

この邦題は如何なものか。原題の意図、”私のかわいいお姫様”という母親の気持ちが生かされていない点では失敗だろう。娘も、一流写真家に見える母親に対する憧れと同時に自分を道具にしか考えないことに対する反発と嫌悪というアンビバレントな気持ちを抱くが、母親も同様に娘に対して誰よりも愛しいと(my little princess)思いながらも、自分の思い通りにならないことへのいらだちを持ち続ける(ま、この辺は誰にもありがちだが)やはり二律背反気分が消えないのは事実。

上映館である渋谷のイメージフォーラムはガラガラ。観客は若い女性ばかりであった。

#44 画像はALLCINEMA on lineから