ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ラ・ボエーム」@座・高円寺2

140724 高円寺駅到着時、既にポツリポツリと落ち始め、空を見上げると、先日の雷雨襲来時にそっくり。あわてて会場へ急ぐ。後から来た人の話では、その後、やはり雷鳴轟き、ゲリラ豪雨だったらしい。朝の予報では、一言もそんなことを言ってなかったのに・・・

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応援している高橋絵理さん、それに今回は端役ながら青栁素晴さんも出演するので、だいぶ以前から切符を手配していた。

小劇場演劇的オペラとあるように、手作り感たっぷりのオペラ上演。開演前に演出の岩田達宗氏から解説があった。見た目も雰囲気のある演出家だ。名言集は以下。

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読めば分かるように、かなり斬新なスタイルを追及している感じがする。ガキども・・・と書いてあるように、開演時間前に、そのガキどもとおぼしきキャストがガヤガヤと舞台に出て来て、何やら騒ぎ立てる。そして、マエストロ柴田真郁(つい先日の「アイーダ」を振った人物)がおもむろに登場する。この人が演出家に負けずかっこいいのだ。顔もスタイルも、そして声も。どう進行していくか、ひとしきり話すとやおら腕を振り下ろして、ジャジャンと開幕。舞台上をマエストロが自由に動き回る。主役の肩に手を置いたり、登場人物の一人になったり、まことに奔放な動きだ。

装置類は、ジャンキーそのもので、ガラクタを寄せ集めて壁を構成したり、間に合わせのものをテーブルなどの小道具に使っている。一番のケッサクは、第4幕、ミミが横たわるベッドをどうするのかと思っていたら、それまで裏返しになっていて気付かなかった座椅子を使ったのには感心しきりだった。

第1幕、Che gelida maninaとそれに続く、Si, mi chiamano Mimiでは、テーブルを挟んで、ロドルフォとミミがほぼ突っ立ったままの状態で歌うが、ま、いろんな演出があるが、もう少し動きがあってもよかったと思うし、愚亭にはやや馴染みにくく感じた。

第2幕、Cafe' Momusの場面、いつもは子どもたちが多数出て、大賑わいの舞台になるところだが、予算の関係で無理。それでも、まったく違和感を与えず見せたのは素晴らしい。だが、お陰で青栁氏演じるパルピニョルは舞台でなく客席側での演唱となった。

第3幕、有名な雪の場面、もちろん雪らしいものは一切なし。雰囲気のみ。これも無難に。

第4幕は1幕の舞台に戻すわけで、マエストロが前で解説している間に、キャストたちが、被いをめくったり、テーブルを移動させたりして準備完了。涙なしにはみれないラストシーンも、ベッドならぬ座椅子の上でミミが息を引き取るところまで、皆さん、実に見事に演じ切った。

ミミ役、高橋絵理さん、6月末サントリー・ブルーローズでの二期会週間の掉尾を飾る二期会マイスタージンガーの一員として出演した後、僅か10日後に、今度は日暮里のサニーホール・コンサートサロンでリサイタル。それから2週間後、この公演だから、どんだけ忙しいこのひと月だったんだろうか。

若さゆえに出来る技だろうが、今、最も旬なソプラノとして、人気も急上昇。いつもなら、終演後、ロビーで多少お話も出来るのだが、この日は、歌仲間も大勢来ていて、彼らに取り囲まれ、一声かけるのがやっとという有様。イタリア留学も決まっているとか、将来が大いに期待される逸材であることは間違いない。

ロドルフォの寺田宗永氏、初めて聴いたが、lirico leggeroで、軽〜い声質はこの役にぴったり合っているようだ。ただ、高橋絵理さんとの組み合わせが、やや微妙な印象も拭えなかった。

見角悠代さんのムゼッタも素敵だった。この方、大変見栄えもするし、声も綺麗、歌も上手いのだから、当然か。

それにしても、脇を固める須藤慎吾(マルチェッロ)、大沼徹(ショナール)、大澤恒夫(コッリーネ)、志村文彦(ベオア)、青栁素晴(パルピニョール){敬称略}と、まことに豪華で贅沢な布陣、よくぞこれだけ揃えたものだ。

弾きっ放しの古藤田みゆきさん、ご苦労様でした。

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