ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ぼくを探しに」

140813 原題:ATTILA MARCEL(主人公の父親の名前)、仏 106分 [監][脚]シルヴァン・ショメ(「パリ、ジュテーム」(2006))、[出]ギョーム・グイ、アンヌ・ル・ニ、ベルナデット・ラフォン、エレーヌ・ヴァンサン

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こういう幻想的で、ちょっとミュージカル調極彩色の大人のファーブル(おとぎ話)はフランス映画独特の世界で、同じヨーロッパでも他の国では作れない。最近では、マチュー・アマルリック主演の「チキンとプラム、あるバイオリン弾き、最後の夢」やロマン・デュリス主演「ムード・インディゴ うたかたの日々」と相通じるところがある作品。

主人公のポール(グイ)、乳幼児期に、目の前で両親がある事故で亡くなったことが強いトラウマになり、以後言葉を失っている。現在、二人の叔母(ラフォンとヴァンサン)にピアニストとして育てられ、一流ピアニストを目指している。因に、この二人の叔母さんたちが始終口にしているメロディーはドリーブの「ラクメ」から「花の二重唱」

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同じマンションに住むマダム・プルースト(ル・ニ)、一室を畑にして様々な植物を育てているという変わり種。ある日、偶然ポールはマダム・プルーストの家を訪れることに。勧められるままに特製アンフジオン(ハーブ・ティー)を飲んだ途端、奇妙にも幼児期の記憶が戻り始める。取り憑かれるように、過去の記憶を取り戻すことにのめりこんで、ついに・・・。

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幻想的な音楽と映像の融合が見事。もの言わぬグイの演技が素晴らしい。マダム・プルーストになったアンヌ・ル・ニ室井滋のフランス版という風情で、典型的な性格派女優。日本公開作品は何故か全て、と言っても4本だが、見ている。ベルナデット・ラフォンは、この作品クランクアップの数カ月後、75で亡くなる。エンド・ロールの最後に、トゥルーヴィルでの浜辺を、さくらんぼを食べながら歩くシーンでのハプニング・シーンが映される。そして「ベルナデットに捧ぐ」という字幕が。これだから、エンドロールは全部最後まで見るべし。

#66 画像はALLCINEMA on lineから