ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「NO」

140916 多分これほど短いタイトルはまずお目にかからない。ひょっとすると史上最も短いタイトルかも。さすがに邦題もこれにはお手上げで、そのままとなったようだ。

チリの歴代大統領の中でも、特別の存在だったピノチェットの時代の話だ。

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政敵を一体何人葬り去り、拷問にかけたか分からないほど極悪非道の人物だが、一方でチリの財政を一気に立て直すなどの功績もあり、未だに功罪が取りざたされている。大統領在任16年はいくらなんでも長過ぎ。権力は腐敗するを地で行ったような話だ。

1988年、ピノチェット反対派に一気に引導を渡すことを目論んで、自信満々の大統領は国民投票を実施することに。しかもメディアで、SÌ(賛成)派とNO(反対)派に15分ずつのCMを流す提案までしてしまう。

ガエル・ガルシア・ベルナル演じる若き広告マン、どうせ答えは決まってんじゃん、と思いつつ、NO派のTV CM作成を軽い気持ちで引き受けてしまう。勝ち目はないから、あんまりガチガチの、ありきたりのを作っても仕方ない、ここは軽いノリがいいだろうと提案したら、あろうことかそのまま採用決定!なんとこれが大反響。んで、NO派が僅差で勝利、結局ピノチェットは退陣という、歴史的事件に関与した男に。

当時の実写フィルムを多用するということで、敢えて当時使用された仕様のカメラを使い、実写フィルムとまったく同じ画質、色調で全編が捉えられていて、スタンダードサイズの画面だから、あたかもドキュメント映画を見ているような錯覚に陥る。

なんとエンドロールだけが鮮明な画質と広い画面という、奇妙な対比を見せて終映。いやぁ、面白い作品だった。チリ映画(実際はチリ・米・仏の合作)を見るのは実に久しぶり、というか初めてかも。

それにしても、時あたかもスコットランドが独立かどうか、世界が固唾を飲んでいる、その時に見るのが、なんとも皮肉である。(尤も2012年の作品だが)映画ではNOが勝っちゃうけど、スコットランドはまさか・・・。

#75 画像はIMdbから