140922 隅から隅まで計算され尽くしたような画面構成がまず見事だ。まるで舞台劇を見ているような端正な映像の作り込み。主演の中井貴一が渋い演技を見せる。脇役陣の素晴らしいが、とりわけ井伊直弼を演じる人間国宝、中村吉右衛門の圧倒的な存在感はさすがである。久しぶりによい時代劇を見た。
時代劇と言っても、桜田門外の変から18年、既に明治の御代だから、ちょんまげ姿も珍しい世の中に変貌している。
あの朝、命を賭しても守り抜くと誓った筈の主君井伊直弼を、僅か18名の水戸浪士にむざむざと殺されてしまった元近習の志村金吾は、切腹すら許されず、ひたすら下手人を追い求め、追いつめ、そして・・・あの時と同じ寒椿がいちりん雪中に。
⬆直弼の籠から離れて、槍を奪った男、佐橋十兵衛を路地裏に追いつめ槍を奪い返したが、現場に戻った時には既に事は終わった後。
⬆あれから18年、人力車を引く十兵衛に低く語りかける金吾。あたりは、ただしんしんと雪が降り続ける。そして柘榴坂へとさしかかる。
⬆苦労をかけっ放しだった妻セイの手を取り、歩き出す金吾。いつも間にか雪がやんでいる。泣かせるラストシーン。
#77 画像はALLCINEMA on lineから