ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ザ・テノール 真実の物語」

141014 日韓合作 121分 参考までに、英語タイトルはTHE TENOR LIRICO SPINTO

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実話に基づいた映画。そう言えば、この韓国の至宝、ベー・チェチョルの話、以前聞いた記憶がある。裏で日本人が協力していたのは知らなかった。それにしても、脚本が甘い。唐突な展開がどうしても気になる。とりわけ、北乃キイの設定がよく分からない。突然とっぴょうしもない格好で社長面接に現れ、たまたまちょっと譜が読めたぐらいで、クラシック専門音楽事務所が採用するかねぇ〜。しかも、たちまち社長秘書って、アンタ、あり得ないっしょ。

将来を嘱望された国際級テノールにのし上っていくベー・チェチョル、それに目をつけた日本人プロデューサー沢田(伊勢谷友介)が日本に呼び寄せ、大ブレーク。沢田の企画会社も、これで一息つけ、将来展望が開ける。ところが、次の演目が「オテロ」に決まり、リハ中に突如チェチョルが倒れる。甲状腺癌で即手術。声帯の一部が麻痺したため、再起不能に。

そこから、沢田が東奔西走して、ついにその道の名医が日本にいることを突き止め、チェチョルを説き伏せ、手術を受けさせる。これが見事に成功して、再起のための準備を始めるのだった。それにしても声帯の手術って、前にもどっかのテレビ番組で見たことあるけど、局部麻酔で、当人に発声させながら声帯調整する場面は、チト正視に耐え難い。

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⬆️感動のラストシーン。

チェチョルと沢田が固い友情で結ばれる導線も弱いから、不自然に感じてしまう。最後にアメージング・グレイスをもってきたのは悪くない。あそこで高音のアリアでも歌われた日には、大いにしらけただろうから。その後、一部神経が切れていた横隔膜も奇跡的に回復し、ほぼ元どおり歌えるようになったらしいから、これはすごい話だ。

日韓合作となっているが、スタッフはほぼ100%あちらさん。キャストもごく限られていたし、撮影された舞台も、また出演したオペラ歌手たちもことごとくあちらの方々。せめて実際に歌った歌手たちぐらいクレジットしてくれてもよかったのだが、まったく見当たらず。

劇中の歌唱を実際チェチョルがやっていたとしたら、確かに素晴らしいテノールである。80歳近いコッソットおばさんが登場(実物は歌唱のみ)したのには、正直驚いた。

チェチョルを演じたユ・ジテ、なかなかイケメンだが、韓国特有の優男で個性がない。伊勢谷は上背のある方だが、それをはるかに凌いでいたから、180cm以上はありそうだ。口パクの練習も相当やったろう。結構うまく合っていたから。

感動する場面、確かに何ヶ所かあったにはあったが、少しばかり期待はずれ。日本語、朝鮮語、英語、イタリア語が等分に飛び交う作品。

#86 画像はALLCINEMA on lineから。