ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「イコライザー」

141031 原題もEQUALIZER  デンゼル・ワシントン出演作は随分見ているが、これもよくできている。こうした訳ありの男を演じさせると実に上手い。ますます好きになる俳優だ。アントワーヌ・フークア監督とは、「トレーニング・デイ」(2001)以来。

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元CIA敏腕えージェントのマッコール、引退した現在は、昼はホームセンターで働きながら、夜は読書を楽しむという静かな生活ぶり。そんな生活が一変することに。行きつけのダイナー(これがエドワード・ホッパー描くところの「ナイトホークス」の雰囲気そのままのたたずまい)で顔見知りになった年端もいかない娼婦テリーが、ロシアン・マフィアに徹底的にいたぶられる場面を目撃。彼の中で何かが呼び覚まされる。

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⬆️ダイナーの片隅が彼の定席。ここで「老人と海」などを読む。向こうに少女娼婦テリー(クロエ・グレース・モレッツ

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⬆️Edward HopperのNighthawks

亡き妻が愛した、彼の他人への一途な優しさが目覚めた瞬間だ。そこから彼の孤独な戦いが始まる。相手は素性を、元上司夫妻(ビル・プルマンメリッサ・レオ)経由調査するとモスクワを根城にする大掛かりで手強い組織であること突き止める。そして、この巨悪の息の根を止めるべく、アドレナリン全開で行動開始。

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彼の得意技は、その場の状況を徹底的に見極めた上で、正確無比なイメージを瞬時に自分の脳に叩き込み、敵を秒殺すること。驚くべきことに武器は持たない。その場にあるもの、相手が持っているものすべてが彼の武器になり得ることだ。

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こうしたこれまでにない殺陣のシーンが、本作の最大の魅力だろう。見せ場の一つは昼間勤務している広大なホームセンターでの対決シーン。なにせホームセンター、あらゆるものが揃っている。それらを総動員し、相手の意表を付く戦術で一人一人と倒して、ついに最強の殺し屋と言われる百戦錬磨のテディに建築用鋲打ちガンで仕留める。そして、いよいよ総仕上げのモスクワへと舞台が移る。

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ラストシーンがよい。再び、市井の一市民に戻ったマッコール、普通の格好で日常品を入れた紙バッグを下げて歩いていると、ばったりとテリーに出くわす。心身ともに傷の癒えたテリー、命の恩人に出会えて万感の思いの筈だが、照れくさいのか敢えて感情を抑えて、歌手としての出直し宣言をし、さりげなく去っていく。

 

イコライザーは、敵を一撃のもとに秒殺してしまう人物を指して、地元警察が密かに呼び習わしたあだ名らしい。

 

クロエ・グレース・モレッツは、「ヒューゴの不思議な時計」の子役で、依然あどけなさが残る。この役はもう少し年上の設定だったらしいが、彼女にせがまれてフークワ監督が設定を変更したとか。それだけの価値、あったのかな。

 

#87 画像はALLCINEMA on lineから。