ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「誰よりも狙われた男」

141110 原題:A MOST WANTED MAN (THEでないところに注意)原作はジョン・ル・カレ、21作目の小説。そしてこの作品がクランクアップして1週間後に急逝したフィリップ・シーモア・ホフマンの遺作。46歳は余りに惜しい!薬物過剰摂取による中毒死なら、あまり同情はできぬが。監督はオランダ人のアントン・コービン(「ラスト・ターゲット」(2010))

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⬆️左は「東ベルリンから来た女」のギュンターの部下役のニーナ・ホス。右はCIA捜査官のロビン・ライト

舞台はハンブルグ。9.11の犯人、モハメド・アタが犯行直前まで潜伏していた地ゆえ、特に中東出身者への監視の目は厳しい。そんな中、薄汚れたアルスター川から這い上がる人影。チェチェン人、イッサ・カルポフ。イスラム過激派として国際指名手配されている男である。さっそくテロ対策チームを率いるギュンター(ホフマン)が動く。即、身柄確保より、泳がせて、背後に潜む大物を一網打尽を目論む。

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川から上がり、ハンブルグの街中に潜むイッサ(グレゴリー・ドブリギン)

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⬆️イッサを救おうとする人権擁護団体のアナベル(レイチェル・マックアダムス)は、取り敢えず、彼を隠れ家へ連れて行こうとする。 

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⬆️小型カメラや隠しマイクを駆使して、イッサの動きを詳細に監視するチーム。手前はダニエル・ブリュール

 一方、ドイツ内務省幹部及びCIAは一刻も早くイッサの身柄確保を狙うが、三者会議で、取り敢えずギュンターに任せる形をとるのだったが、

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⬆️これでギュンターにとっては、メデタシめでたしの筈だったのが・・・手前、ブルー銀行頭取役、ウィレム・デフォー。その後ろ、人権擁護団体弁護士レイチェル・マックアダムス、最後尾にイッサ

9分9厘ギュンターの狙い通りに展開したのに、最後の最後に・・・あー、なんてこった!この時のホフマンの演技が脳裏に焼き付いて離れない。エンディングは彼の運転するメルセデスの正面に見えるごくありふれた日常のハンブルグの街並み。

レイチェル・マックアダムスや、ウィレム・デフォーが、懸命の特訓で、結構うまいことドイツ訛りの英語をしゃべっていた。レイチェルは、他の女優に比べると余りに子供っぽすぎて、一人浮いた感じ。

それにしても、ギュンターは三者会談で、しっかり自分の考えを主張し、内務省、CIAの了解を得た作戦だったのに、なんなの、この結末は。ギュンターが、ハラワタの煮え繰り返るほど怒ったのは、以前にもCIAに裏切られた経験を持ちながら、またしてもやられてしまった自身の甘さに対してだったのかも知れない。

同じル・カレ原作のスパイ映画「裏切りのサーカス」ほど複雑な内容でなく、解りやすくて助かった。

#89 画像はALLCINEMA on lineから。