ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ホイッスラー展」(横浜美術館開館25周年記念企画展)

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会期が残り少なくなって、やっと横浜へ。寒さ依然厳しいものの、今日は柔らかな春風の中、桜木町からいつものルートで会場へ。比較的空いていて、ゆったり鑑賞できた。

これまでテレビ番組を通じて、この画家の画業や、生涯については大筋理解していたので、会場で改めての新たな発見はなかった。

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会場を入って最初に目にする作品がこれ⬆︎。真っ黒な帽子、顔から下の粗いタッチで描かれたタブリエ、そして壁の色、階調の妙が生んだ傑作。壁に描かれたトンボのようなものは何だろう。彼は自分のイニシャルを蝶のデザインにして用いたり、日本の紋章に関心があったらしいので、これもそうしたものの一種か。

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イングランド南部デヴォン州にある小さな町、ライム・リジスに滞在していた時に描いた少女像。あどけなさの残る少女によほど惹かれたのだろう、小さなバラと名付けられているこの作品もまた沈んだ色調で描かれている。

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6年も一緒に住んだ愛人、ジョアンナ・ヒファーナンを、敬愛するクールベに奪われ失意のうちに、南米チリに移住し、ヴァルパライソ(”天国の谷”)で描かれた作品。フジタやパスキン同様、現地で明るい色調に心うばれたであろうことは容易に想像できる。この時代の作品にはそうした影響が色濃く出ている。

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再びロンドンに戻ったホイッスラーは後年、ジャポニズムに関心が深まり、浮世絵の構図と思われる作品を数多く残している。これもそんな一点。

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それにしても、個性の強い男だ。美術評論家ラスキンとも自分の作品をけなされたことで裁判沙汰を起こしているが、依頼主の意図を無視して、自分の思い通りに内部を改築までして完成させたのが、このピーコックルーム。怒った依頼主も、結局このまま住んでいたというから、案外のちに気にいることになったのかも知れない。愉快な逸話の一つ。現在はアメリカのワシントンD.C.にあるフリーア美術館に移築されている。

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アメリカ東部生まれで、父の仕事で少年期にザンクト・ペテルブルクに移り、その後、パリ、ロンドンと移り住み、その都度、その地で活躍する画家たちとの交流を通じて、画業の幅を広げていったJames McNeil Whisler(1834-1903)の、各時代の傑作を一気に見られ、また影響を受けたとされる浮世絵と並べて鑑賞できるなど、実に嬉しい回顧展である。会期は3月1日まで。

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画像は同展の公式HPからお借りした。