ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「繕い裁つ人」

150224 久しぶりにカミさんと観に行った。女性向けの作品だから、場内、9割が女性客。ま、しかし男性が見ても十分楽しめる作品である。いろんな意味でバランスが程よく取れた佳作。三島有紀子という監督のことは、まったく知らなかったが、日本映画界も優れた女流監督が増えたものだ。

f:id:grappatei:20150225115004j:plain

舞台は現代の神戸。高台にある主人公南 市江(中谷美紀)は老舗洋裁店。祖母の代からしっかり伝統と技を受け継いでいて、「がんこおやじ」とあだ名されるほど、流儀を曲げることはない。今日も、汗を拭き拭き、大丸の担当社員、藤井(三浦貴大)が市江の仕事部屋まで足を運んできて、ブランド化のメリットを力説するが、聞く耳を持たない。

明らかに時代から取り残されようとしていても、頑固に自分のスタイルや生き方を変えようとしない市江の姿に、次第に感化されていく藤井の内面にも微妙な変化が現れ、ある日、突如市江の前から去っていくのだった。

古いものを大事に扱わず、簡単に廃棄して、新品に買い換える生活スタイルがすっかり定着してしまった現代人には、目からウロコである。これは、なにもアパレルの世界にとどまらず、あらゆる事象に顕著だ。そんな我々に警鐘を鳴らしているのか、しっかり前を見据えて頑固な中にも、自分の将来を展望し、いずまいを正す市江を中谷が好演している。この役は中谷にしかできないようにも思えた。脇を固める片桐はいり、伊武雅人、余 貴美子、黒木 華、いずれも素晴らしい。

#012 画像はALLCINEMA on lineから