ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「紙の月」

150301 126分 監督:吉田大八 原作:角田光代

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昨秋封切りの時の宣伝は凄かったが、その割にあまり評判にはならず、不発だったのではないか。たまたま自宅から歩ける映画館にかかっていたので、氷雨の中、出かけた。

原作も読まず、NHKで放映されたドラマも見ず、ほぼ事前情報なしで見ることに。ほぼ予想通りの展開で、意外感ゼロ。それに宮沢りえ、それほどうまい女優とも見えず、やや白けた状態で見終えた。今日は30人ほど入っていた。

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ごくありふれた夫婦、今日も電車で通勤。夫の梅沢(田辺誠一)は一流企業勤務。間もなく上海赴任予定。梨花宮沢りえ)は特に夫に不満が高じている風には見えない。当たり前の共働き夫婦の日常生活が描かれる。

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お得意さんの一人の老人平林(石橋連司)宅を訪ね、たまたま遊びに来た孫、光太とすれ違う。その後、駅で再会するが、梨花は気付かないほどで、特に印象に残らなかった筈。なのに、更に別の日、同じ駅の反対側に立つ光太を見つけた梨花が電車に乗らず、猛烈な勢いで反対側のホームに移動、気づいてみれば、↑こうして同じ車内で見つめ合うって、いったいどういうこと?このまま、ホテルへ直行。夫に内緒の不倫関係は濃厚になる一方。梅沢にない何かを光太に見たのだろうが、余りに唐突。

更に、大学に通いながらも、高額な借金を抱えていることを得意先である光太の祖父から知った梨花は、借金を肩代わりするから、サラ金から足を洗い、ちゃんと大学へ行くよう強く勧めるのだった。

当然そんな金の持ち合わせもないで、口から出まかせを言ってしまったわけだが、日頃から小金持ち老人宅を巡り、高額の金融商品を売りつける営業をしているうちに、出来心が梨花の心に芽生えるのにさして時間はかからなかった。

一旦犯してしまうと、大胆になるばかり。自室にさまざまな機械を持ち込んで、偽証券をせっせと作り続ける梨花の横顔には、もはや良心をどこかに置き忘れた観すら。光太との派手な遊びもエスカレート、気づけば高級ホテルのスウィートを借りての放埓な日々。

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いずれ破綻することは目に見えていながら、そこから逃れられなくしているのは何か。朝帰りの梨花がふと見上げた夜明け前の空にうっすらと三日月が。↑それを指で消していく梨花。そう、この世のことなんか、みんな偽物よ、この月と同じとうそぶく。

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さすがに巨額に膨らんでしまった梨花の横領、支店で感づかれるのは時間の問題。少額ならなんとか支店内でもみ消そうとするヘンな力学が働くところも、もはや小手先ではどうにもならないところまで。特に勤続25年のより子↑(小林聡美)の目はごまかせない。そうして、逃げきれないと観念した梨花がとった驚きの行動には・・・目を瞠るしかない。

ラストはバンコクの下町。派手なシャツを着込んでうつろな目をした梨花の前にりんごが転がってきて、そしてその先には。

原作を2時間以内の映像に直す作業は、大変だったことは分かるが、どの場面も若干リアリティーに欠けるような気がしてしようがない。話題の宮沢りえだが、自分にはどうも上滑り気味だったようにしか思えなかった。

#014 画像はALLCINEMA on lineから。