ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「パリよ、永遠に」

150310 DIPLOMACIE 仏独合作 83分 監督:フォルカー・シュレンドルフ(「ブリキの太鼓」('76)、「シャトーブリアンからの手紙」(2011)、ドイツ人、現在76歳)原作戯曲:シリル・ジェリー、脚本:フォルカー・シュレンドルフ、シリル・ジェリー

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有名な第二次大戦終戦秘話の一つ。これを描いた作品では、ルネ・クレマン監督の下、ベルモンド、グレン・フォードアラン・ドロンなどオールスターキャストの「パリは燃えているか」('66)があまりにも有名。

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本作はもともと戯曲だったものを映画化しているから、ほぼ全編を通して、あたかも舞台を見ているような錯覚にとらわれる。室内でのやりとりに終始するから、時に眠くなりもするが、永遠に「世界一美しい街」が灰燼に帰するかどうかの必死のせめぎ合いという、極限までの緊張感を生み出す二人の名優(アンドレ・デュソリエニエル・アレストリュプ)の息詰まるような演技は、やはり見ものだ。

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このノルドリングという駐仏スェーデン総領事がいなかったら、今のパリは存在していなかったかと思うと、特にフランス人は彼に感謝してもし過ぎることはないだろう。

とは言え、ヒトラーの絶対的な命令を土壇場で回避しちゃったディートリッヒ・フォン・コルティッツ将軍もえらかった!彼も軍人としては、えらい知識人でもあり、自分がこれからどんな蛮行を働こうとしているかは十分自覚していた。

しかし、直前にヒトラーが、もし自分の命令に背いた場合、家族を処刑するという無茶苦茶な軍規に変更したため、コルティッツにしてみれば、パリを取るか、家族を取るかという絶体絶命の窮地にいた訳で、そこはノルドリングが一枚上手だったと言わねばなるまい。巧みに、家族をスイスに逃せるととっさに言い繕ったんだから。かくして、パリは生き延び、おかげでわれわれも世界に二つとない美しい都を訪れることができるのだ。

エンドロールで流れるJ'AI DEUX AMOURS (”私には二つの愛する故郷がある。それは、自分の生まれた町とパリよ”と歌うMadelaine Peyrouxの声が心地よい)

#017 画像はIMdb、及びALLCINEMA on lineから