ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「馬々と人間たち」

150519 多分人生で初めて見たアイスランド映画。まことに奇想天外にして雄大、かつ緻密。事前情報なしに見たから、仰天しまくり。

タイトルにあるように、馬たちが主役で、女性たちが準主役、男どもはその他モロモロ。馬の賢さと女性たちの逞しさが全面に。

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春を迎えたアイスランドの田舎町。人家もまばらで、近隣に住む人々とは鏡と双眼鏡が交信手段の一つ。

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子持ち未亡人ソルヴェイグ(名前がいい)と交際中のコルベイン、自慢の白い牝馬に乗って、彼女の家へ急ぐ。お茶をご馳走になっての帰り道、彼女の飼育馬の一頭が、このかわいい白馬に一目惚れ。柵を突き破って突進。コルベインの制止もなんのそので、思いを遂げてしまう。この場面、後々ソルヴェイグとコルベインの恋路に重要な伏線になる。

とりあえず傷心の思いと忌々しさの入り混じった複雑な気持ちで帰宅したコルベイン、とっさに銃を持ち出し、キズモノにされてしまった牝馬のかわいこちゃんを撃ち殺してしまう。まったく思わぬ展開である。慈しみながら懇ろに埋葬するコルベインの姿が哀れだ。

それにしても、演技をする馬じゃないから、撮影がどれほど大変だったか、想像にあまりある。CGはほとんど使用していないが、劇中、この村を訪れたスペイン人が一人山中ではぐれ、夜間、雪まで降り出し体温低下を防ぐために、ついに一緒にいた馬を殺し、腹を裂き、内臓を取り出し、泣きながら死んだ馬の体内に潜り込んで命をつなぐ、凄絶なシーンだけはCGを使ったらしい。

この後、いくつかの挿話が紡がれていく群像劇のスタイルを取っていて、そのどれもが意表を衝く。映画ファン、必見の作品!

#32 画像はALLCINEMA on lineから